ふくおかの国際協力 | 原田君子(NGO福岡ネットワーク )
第3回:心に残るエピソード
スタディツアーを企画し現地訪問をした頃はタイ文化のこともあまり知らず、自分の中に意識がなく偏見を持っていたのではと思います。国際協力の学びの中で思い込みや偏見が知らず知らずに誰もが持っていること、そして私の常識はタイや他の国々ではけして常識ではなく非常識がある事も学びました。日本にもタブーがあるようにタイにもタブーがあります。
スラム地域を訪れるたびに自分自身大切な事を住民のみなさんに教えてもらってきた気がします。他人に対する温かさや思いやりは言葉がわからなくても表情や身振り手振りで心に伝わります。住民の皆さんの優しさと思いやりに触れ、私の日常生活は国際協力を学ぶ中で成長させて貰って来たと思います。
スラム街や郊外の村を訪問して、必ず驚かされることがあります。私が訪れていた場所は人々の日常生活は苦しく厳しい状況におかれている貧困地域です。その地域では、子どもたちの笑顔と強く明るく生活する人々の姿に圧倒されました。私たちは住民のみなさんから訪れるたびに逆に「元気を貰う」ことが多く、キラキラした笑顔で、元気と好奇心いっぱいの子どもたちの姿、住民のみなさんの「優しさ、おもてなし」には、心が和み帰国するたびに元気になって帰国していた自分を感じました。
良いことばかりはなく、あるとき講座の受講中にハッとしたことがありました。それは、貧困地域に住む子どもたちの間のいじめの原因を私たちが作っている可能性があるという話しでした。それは奨学生への「お土産」でした。学校に行きたくても行けない子どもたちがスラムには大勢います(今でも)。当時、日本製の品物は例えわたしたちには安価な品であってもスラムの中の子どもにとっては、日本製と言うだけで羨ましく高価なもの。そのため、貰えた子どもたちがいじめの対象になるのだと知りました。
喜ぶと思って持って行っていたお土産が、いじめや盗みの原因になると知り、気づくことができました。一方的な思い込みのお土産だったと、本当に悔やみ心が痛んだ瞬間でした。それからは考えを改め、日本からは物は持っていくことを辞めました。必要なものは現地で買い求め、お土産も現地で買い揃え奨学生には一緒にお菓子を食べなら交流ができる食べ物に換えました。
タイ北部のチェンライにある少数民族の寄宿舎に訪れたときです。日本から学生を含む会員と一般参加者で、寄宿舎の学生と交流をしていた時のことです。寄宿舎の学生から質問を受けました。「みなさんはどうしてここに来たのですか」と質問されました。寄宿舎の学生はなぜ来たのか素直に疑問に思ったのだと思います(私は)。
その時、瞬間に何かが頭の中を巡ったのかもしれません。誰も答えられなかったんです。ツアーも数日が過ぎ、訪問先の村の家族の現状を見聞きして来たことが、参加者の心の中や頭の中に蘇っていたのではと思いました。自分が答えることが、もしかすると相手を傷つけてしまうのではと思い答えられなかったのだろうと思い出されます。
このツアーの参加者が、確実に何かをつかみ取り心の中に何かが芽生えはじめていると確信し、今回もスタディツアーに来て良かったと思う瞬間でした。
チェンライでの質問は参加者の心に深く残り、帰国報告会でも答えを探し続けていましたが、皆さんならどう答えたでしょうか?
スタディツアーのひとつひとつにそれぞれの物語ができます。思わず目や耳を背ける内容が中にはあります。施設の先生から子どもの状況を聴きながら、急に泣き出し涙が止まらなくなった学生のことも印象深い物語です。
映像や言葉で十分私たちの活動を伝えることはできますが、一度現地に行って五感(視て・聴いて・におって・味わって・触って)を研ぎ澄ましながら、思いを巡らせれば見えてくる世界が広がると思います。ぜひ五感をすましに行ってみませんか。