見出し画像

|dialogue #04-1|FIWC九州(前編)

デジタル版となった「asumin note」の第4弾。福岡の学生が主体となって、国内外で活動している国際協力学生団体、「FIWC九州」の伊藤御岳(いとううたき)さんにお話を伺いました。


01 活動のきっかけ

FIWCの歴史を教えてください。

FIWCは「Friends International Work Camp」の頭文字からとっていて、九州以外にも東海、関西、関東に委員会があります。「Friends」って何なのってよく聞かれるのですが、実はこの部分、キリスト教のフレンズ派から来ているんです。というのも、ワークキャンプは第一次世界大戦の頃フランスのヴェルダン地方でキリスト教フレンズ派の人々によって開始され、関東大震災時に日本に持ち込まれました。戦後、AFSC(American Friends Service Committee)が日本で活動するなか1956年にAFSCの傘下で結成し、1961年に独立をしてFIWCとして活動するようになりました。現在の九州委員会は2004年に誕生し、今年で20年になります。
現在九州委員会のメンバーは学生が100人くらいで、継続的に活動に参加しているメンバーは半分の50人くらいです。

メンバーはどうやって募集している?

全ての大学でできるわけではないですが、新入生歓迎会のタイミングでビラ配りをしたり、団体の説明会を開かせてもらって募集しています。他にはInstagramから問い合わせが来ることも結構あります。メンバーの多くは福岡市近郊の大学生で、一番多いのが九州大学、次に西南学院大学、福岡大学、中村学園大学など、さまざまな大学から集まっています。

どうしてFIWC九州に入ろうと思ったんですか?

大学に入った当初から海外に行きたいとずっと思っていたんです。でも入学した年がちょうどコロナが流行った時期で、とてもではないですが海外に行ける状態ではありませんでした。大学の授業も自宅でという状態だったので。それでもやっぱり海外に行きたいっていう思いは捨てきれなくて、何か日本にいながら海外と繋がれる活動ができる所を探していた時に、たまたまInstagramでFIWC九州の情報を見つけ、すぐに団体に入りました。

02 インドネシアキャンプ

FIWC九州は何ヶ国くらいキャンプに行ってますか?

コロナ前は、中国、フィリピン、ネパール、インドネシアに行っていました。中国キャンプには2005年から16回、フィリピンキャンプは2008年から14回、ネパールキャンプは2017年から3回、東海委員会と合同で始まったインドネシアキャンプは2019年から3回、活動を行ってきました。しかし、現在行っているのはフィリピンとインドネシアだけです。その中で僕はインドネシアに行っているのですが、現地で暮らすFIWCのOBの方が団体を立ち上げているので、その方にコーディネーターになっていただいてキャンプを行っています。

インドネシアキャンプの村でのひととき

国外へのキャンプはどのくらいの頻度ですか?

キャンプ地によって違うのですが、僕が行ってるインドネシアキャンプは、夏休みだけです。インドネシアでの活動は、およそ1000人近くの人が暮らしているハンセン病快復村で行っています。
実はインドネシアは世界で三番目にハンセン病の新規患者数が多い国で、僕たちが行っているNganget村は、自身がハンセン病の経験者だったり、親がハンセン病で、その子供たちの世代が集まって住んでいる村です。そこでは大きく2つのプロジェクトを行っていて、1つ目がワークプロジェクト、2つ目がホームビジットという活動です。
ワークプロジェクトはその名の通り、様々なワークを村人と一緒に行うのですが、インドネシアキャンプの場合、ワークプロジェクトはあくまでも村人とのコミュニケーションの手段の一つとして行っています。やはりどうしても、現地では英語が通じづらいので、どうやってコミュニケーションを取っていこうか悩んでしまいます。なので、まずは村人と打ち解けるためにもこのワークプロジェクトが大事な活動です。
2つ目のホームビジットでは、ワークプロジェクトで仲良くなった村人の家に上げさせてもらって、自由に過ごしたり一緒にご飯を食べたりして過去や現在のハンセン病の話を聞かせて頂いています。また、向こうの方も日本のことを知りたがっているので、お互いに情報を交換しあっています。
FIWCは、団体の立ち上げ当初からこのワークキャンプの形を大切にしており、貧困や差別などの困難が生じている地域に滞在して、一緒に、道路補正や、インフラの整備などの共同のワークを通じて奉仕活動を行って、問題解決に向けて活動を行っています。

村にある幼稚園で教育活動を行っている様子
長い活動の中、村の人との友好関係も築いてきました

いまだに、ハンセン病への差別はありますか?

ありますね。今僕たちの中で特に課題に感じていることは、快復者の子ども世代についてです。子ども世代とはいえ、すでに30代の方もいるのですが、親がハンセン病というだけで、十分な教育を受けられなかったり、未だに仕事がもらえない状況があります。FIWCのインドネシアキャンプの一番の目的は、大学生の僕たちが実際にインドネシアに行き、ハンセン病の現実に触れることで、差別や偏見をまずは自分たちから無くしていけたらと考えています。きっとキャンプに参加したメンバーは差別なんてしないはずですから。

03 国外キャンプの魅力

キャンプで行く村はいつも同じ所?

そうですね、過去にはいろんな村に行っていましたが、今僕たちが行っている村は、2010年から繋がりがある村なので、村人も日本人に慣れている方が多いですね。どのキャンプもその時のキャンパーによって行く村を決めています。インドネシアキャンプと中国キャンプはハンセン病に関する取り組みをずっとしていますが、他のネパールやフィリピンでは、インフラの整備を主に行っています。フィリピンだと、今年は街灯を設置したり、去年は水道タンクを作るといった活動もしていました。ネパールキャンプでは、活動のきっかけ自体がネパール大地震ということもあり、その時に一番被害を受けていた村に入り、コミュニティーハウスを作ると言った活動をコロナ前まではしていました。

村人と一緒にインフラ整備のワークを行っています

キャンプに何度も行きたくなる理由ってなんですか?

一番の理由は、やはり村人に会いたいからだと思います。僕が初めてインドネシアに訪れたときはまだ村人のことや彼らを苦しめているハンセン病について何も知らなかった。村人と仲良くしていても私と村人たちの間に壁を感じていました。それは彼らの日常を知らないからだと思います。村に何度も訪れ、同じ時間を過ごしていくなかでお互いが徐々に打ち解け合い、本当の意味で繋がることができました。これは1回きりのキャンプでは難しくて、だから、何度もキャンプに行きたくなるんだと思います。

海外に対して「怖い」という感じはありますか?

インドネシアに関してはあんまり感じないですね。親日国というイメージもあって、今まで怖い経験だったり、村以外でも問題はなかったです。怖いというよりむしろ楽しいです!日本と違う文化に触れたり、そこでしかできない出逢いがたくさんあってあまり怖いと感じたことはありません。
ただ学生のみで海外でワークキャンプをしているので、安全面には凄く力を入れています。
安全に渡航が出来るように、独自で渡航判断を行ったりキャンプ中は日本といつでも連絡が取れる体制にしています。まずはみんなが大きな怪我、病気なく帰国できることが一番ですから。

現地の人に何度も会いに行きたくなるのも、ワークキャンプの魅力です

後編へつづく(6月30日公開予定)