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映画感想文「ベニスに死す」

名作といわれる「ベニスに死す」を初めて見た。
AmazonプライムかU-NEXTどちらかだったと思う。タイトルに聴き覚えがあったからなんとなく・・である。

心身共に疲れきった作曲家が休暇でイタリアベニスを訪れる。そこで見た貴族の美しい少年に彼は恋をする。ベニスではコレラが蔓延していたが、彼は少年から離れられない。少年の姿を追い続け、見つめながら死んでゆく。

で、感想。驚いた!
貴族の少年タッジオの姿かたちが、昔読んだ池田理代子のベルばらのひとコマにそっくりだったから。また、山下和美の天才柳沢教授の生活の、とある場面で引用されていたセリフの意味がタッジオを見てわかったからである。
(注:上記のニ作品は秀逸な漫画である)
おそらく、あの時代の少女漫画家は少なからず、タッジオ役のビョルン・アンドレセンの美貌に影響を受けていたのだろう。
世の中漫画にできる顔、いや違う、漫画そのものの顔立ちのひとっているんだな。

第二の驚きは、タッジオに片想いするグスタフ(ダーク・ボガード)が最後までタッジオに話しかけもしないこと。たったひと言もだ! 
後半はストーカーするくらい見え見えだったのに。
なんでなの??一言でも、天気の話やら世間話くらいできたろうに。
そしたら少なくとも友達にはなれたかもしれないのに。

興味を惹かれたのは当時の「貴族」というものだ。タッジオはポーランド貴族で家族と旅行に来ていたらしいが、夏休みだったのか長期滞在に見えた。ほとんどが家族と行動を共にしており、母親が司令塔のようだ。(この母親がまた美しい)
コレラ蔓延によりどんどん死の街と化していくベニス。その中を、家族総出でいつもどこに向かっていたのだろうか。
一歩街に出れば病気が蔓延しているのが見てわかるはずなのに、なぜいつまでもベニスに滞在しているのだろう。危険だと思わないのだろうか。
新型コロナやインフルエンザの脅威を目の当たりにしている我々と違い、情報としてきちんと伝えられない限り自分たちは大丈夫と、たかを括っているのだろうか。現実から目を背けているわけでもなくただそこに留まっている。

映像を通して、当時のリゾート地の風情やホテル、観光客のビーチの様子、物売りが提供する果物、貴族たちの衣装。それらをたっぷり堪能できた。
ホテルの中は、情報規制に固められた虚構の平和。
そこに道化さながらの小楽隊が乱入し、狂ったように演奏を振りまいて去ってゆくのは、なんだか世の中の嘘と虚しさを強調しているみたいだった。

貴族。バカンス。恋。暑気。病。死臭。
焦がれ死ぬ作曲家。
グスタフは最後にタッジオに出会い、曲が書けたのだろうか。

ベルサイユのばら一巻目より。左がオスカル、右がマリーアントワネット。
柳沢教授。一話一話の、とにかく内容が深い。
引用されていた話は、どの巻だったか残念ながら覚えていない(^^;;

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