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60歳の母、カナダにオーロラを観に行く

だいぶ時間が経ってしまったけれど、少しだけ。

・・・

時は遡ること、今年の1月。

実家の母からLINEが来た。

「2月にツアーでカナダのオーロラを観ることになったよ〜」

メッセージを三度見した。

「まじかよ」

と一人暮らしの部屋で呟く。

昨年、母が人生初の1人旅で小笠原諸島に1週間滞在した話は下記の通り。

小笠原諸島から帰ってきた後、

「次はオーロラは死ぬまでに絶対観たいよねぇ」と言っていたけれど、

行動に移すのが早すぎて、率直にビビった。

「(筆者)はカナダに半年留学していたし、心強いわ〜」と例によって呑気なうちの母。

こうして世界でも有数のオーロラ出現率を誇る
「カナダ・イエローナイフ」への母のおひとり様が決まった。

・・・

私も留学していた時、カナダの他の都市へ1人旅をしたけれど、イエローナイフには行ったことがない。

ホストファミリーにも「イエローナイフ行ったことある?」と聞いたことがあったけれど、答えは「NO」。

カナダ人ですら行く機会が無いのは、フライトが便も少なく、金額も高いので、「行きたくても行けない」ということが1番の理由らしい。

イエローナイフは「オーロラを観る」という点では有名だけど、北極圏にも近く、そこで住んでいる人は少ない。

そのため、飛行機の便も限られており、カナダ国内での移動とは言えど、アメリカの国境にある主要都市からは距離も遠いので、長距離フライトで値段が高くなるという状況。

母は平日出発の団体ツアーに1人参加する形でだったので、比較的安く費用を抑えることができたけれど、

そうは言っても、高いものは高い。

正社員がボーナスを使って行くならともかく、

パートで何ヶ月も懸命に貯めたお金を使って、1週間の旅に出る。

我が母親ながら、すごい決心だなぁと思った。

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ということで、小笠原諸島の時のごとく、今回も母の買い物について行くことになった。

小笠原諸島は温暖でマリンスポーツをする想定でサンダルや日焼け対策の品々を買った反面、

打って変わって、今度は2月の極寒のカナダ。

私も2〜8月にカナダ留学をしたけれど、到着した時の気温は-20℃。

学校帰りに普段着で外を歩いていたら、凍傷で足が痺れ、危うくその場で動けなくなりかけるという怖い思いをしたことがある。
(住宅街の真ん中だったけれど、運良くケーキ屋さんを発見して駆け込んだので、重篤には至らずに済みました…)

今回、母が参加したツアーは「3夜連続で夜通しオーロラ鑑賞をする」というプログラム。

夜中はオーロラ鑑賞。

明け方に就寝して、昼頃に起床。

午後は日没まで街中散策やアクティビティ。

よくぞ、このハードスケジュールで参加しようと思ったな、、と旅程表を見て呆れる。

何より、私が滞在していた都市よりイエローナイフは緯度も高いことを加味すると、凍えるを通り越して、もはや凍る。
(一応オーロラを待つ間は薪ストーブを焚いたテントみたいなところで待機するらしいけど)

これは本気で防寒対策しないと、とんでもないことになると思った。

そこで、超極暖ヒートテックやスノーブーツなど、ユニクロやスポーツ用品のお店を見て回り、とにかく防寒を最優先にウェアを揃えた。

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そして、2月の終わり。

バンクーバーを経由して、カナダ・イエローナイフへ母は旅に出た。

そして、現地の3日目にまとめて写真が送られてきた。

画質が悪いのは写真技術のご愛嬌。

弱いオーロラだと肉眼では白っぽい雲のように見えるらしく、レンズを通すことではっきりとした緑に見えるらしい。

1、2日目は天気が微妙でほとんど出現しなかったらしいけれど、最終日にようやく見られたらしく、私も連絡を受けて嬉しかった。

団体ツアーの人数は20名程で、ご夫婦やお友達どうしで参加している人が圧倒的に多かったけれど、

その中で、母と同世代の女性で1人参加をしていた方が数名いて、

ご飯のテーブルがたまたま同じになったり、一緒にアクティビティを楽しんでいるうちに、自然と仲良くなったらしい。

バイソンを食べるんだ、って衝撃だった。

アクティビティでは、雪のお城を見たり、犬ぞりに乗ったり、氷の滑り台をソリで滑ったり、子どもの頃に戻ったようにワイワイと観光を楽しめた模様。

そんな母から送られてきたLINEを見て、
思わず「カナダに帰りたい」と私も思った。

氷のお城。
母がカナダから送ってきたポストカード

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数日前に「バケットリスト」についてnoteで記事を書いた。

娘としては、母がバケットリストを消化していて、「楽しそうだなぁ」と思う一方、

いわゆる「終活」に向けて、あれこれやり残したことをやっているという意味では、なんとなく複雑な心境ではある。

しかし、そんな母を見ていると、私もまだ26とは言えど、自分がいつ死ぬかなんて誰にもわからないし、

会いたい人に会って、行きたい場所に行って、「何事も悔いのないように」と日頃から意識しようと考える。

あまりに死を意識しすぎるのは疲れるけれど、死を意識するからこそ、生のありがたみに気づくということもあるのかもしれない。

・・・

先月、お盆休みに数日間帰省をした。

すると、リビングの本棚にあるものを見つけた。

「NHK アラビア語講座」

へぇと思わず声が出る。

今度はエジプトのピラミッドに行くため、アラビア語の勉強しているらしい。

いざ歳をとってから、あれをしたい、これをやりたいと言っても、

その頃には、身体の自由が効かなくなっていたり、年齢的に難しいと言われたり、諦めざるを得ないことも多くなるのかもしれない。

今が1番若い

今しかできないことを

今の最善を。

さて、私もバンコクに行く準備を進めよっと。

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