大学に入学して1ヶ月経ったころ

まだ慣れない原付の運転。

雨の日だった。

坂道で思いのほかスピードが出てたのか

前の原付にぶつかりそうになって

思わずハンドルをきった。

吹っ飛ぶように転んだ。雨で滑った。

自分の身体は坂道の上を向いてて

原付は反対車線にいったらしい

原付は近くにいた友達が移動してくれた。

周りにもチラホラ人もいて

恥ずかしさや

頭真っ白状態で

とりあえず原付にまたがった。



反対車線にいた車の窓が開いて

逃げんなよ!

めっちゃ怒ってる女の人…

???

原付が車にぶつかったと言われ

近くにいた警備員さんが

車のバンパーや周りの傷を確認してくれた。

傷とかはないねー


そんなことねぇよ、バンって言ったから

当たってるよ。

とりあえず、名前と住所と電話番号紙に書いて。

言われるがまま書く…

恐怖で身体が震える。

雨もシトシト降ってる。


また連絡するから。

そう言って車は去って行った。


後日電話がきて、女の人の友達も含めて三人で

話しをした。


車は修理に出すので後で請求があること。

事故の調書を書かされて拇印を押した。


女の人によると

父が前に逃げられたことあるから、

逃げられると思ったからと言われた。

話の間ずっと恐怖で身体が震えてた。


もう関わりたくない。

逃げ出したくて仕方がなかった。


請求書が届きバンパー交換5万円。


それとは別に女の人の母から電話がきた。

あの子バイト休んで車の修理出しに行ったから

バイト代も請求するね。

親に相談して5000円渡そうってなった。


ちなみにそれまでに

女の人からも、その親からも

一切身体の心配の声掛けはない。。。

お金の話だけ。


女の人は同じ部活の先輩だった。

4年生ということもあり、

部活は辞めてたから知らなかった。


バイト代のお釣りを渡された。

イラナイカラ、モウヤメテ、キエテ…



部活の監督に呼ばれて怒られた。

先輩を大事にしろ、問題を起こすなと。



入学して1ヶ月で大学をやめようとした。

特待生の推薦で入った大学。

部活のためにきたのに。

周りとも馴染めず誰にも相談できなかった。

実家にも東京から大阪くらい離れてて、

反抗期から家出同然のように出てきた手前、

1ヶ月で帰るわけにもいかなかった。


そんな孤独な日を重ねながら

部活にひたすら打ち込んだ…



たまに女の人が練習や試合を見にきた。

姿が見えるたびに震えた。

身体が動かない。

うまく笑えない。

フラッシュバックのように思い出す。


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何年か経ったとき、

高校の部活仲間にこの話をした。


良かったね。

あなたが辛かったこと、

同じように辛くなる人がいても

痛みをわかってあげれるね。



全部経験になる。

辛いことや苦しいこと

忘れられたら楽だけど

忘れないから頑張れて

覚えているから強くなる


未だに覚えてる

あの日のこと


身体が震えるほど

恐怖に思う人がいることも

今なら全部経験って思える。

誰かに手を差し伸べてあげられる。


痛みを知ってるから。


治してはあげれないけど、

寄り添える。

温め合える。











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