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『フェミニスト労働組合』は、労働組合法における"労働組合"の定義にあたるか?

こんにちは。とあるソシャゲプレイヤーのアスタです。
今回はSNS上でデモの呼びかけ活動されている「フェミニスト労働組合」さんを取り上げたいと思います。曰く『3月8日の世界女性デーにストライキをして、男性を困らせちゃおう!』というアンチフェミ?が反応しそうな話題で界隈をざわつかせています。
ですが、私はネットでよく見る「またツイフェミか」といったネット論はともかく、それ以外に大きく異なる違和感があるんです。

というのも、「労働組合」「ストライキ」という用語をSNSで使用していますが、労働組合法に定義されている団体交渉権を認められた労働者団体であろうか?という点です。

フェミニスト労働組合が一般的な"労働組合"ではない場合、例えるならば民放にて「お笑い芸人労働組合!〜笑ってデモしてストして〜」というバラエティ番組を制作してるのと同じ、ということになります。

私の思う結論を先に述べますが、フェミニスト労働組合とは「仮想労働組合バラエティ市民活動」だと推察します。

以下の目次に沿って解説していきます。なお、法の専門家ではなくあくまで個人の解釈と感想になります。

1.労働組合"法"って?

私は、とある上場会社の傘下グループ社員の職場代表として労組活動に参加したことがあります(その会社は退職済み)。
新卒翌年には新任の執行委員となっていたため、非専従で約10年ちょいでしょうか。その活動中に各種業界団体の会合にも顔を出した経験もあります。
まず職場から代議員→推薦で執行委員に新任されるのですが、新任時に当時の専従書記長様など先輩方に「労働組合法とは」など教育として叩き込まれるわけです。
※もちろん残業ではなく時間外に。

そこで教わったことはその後の私生活に大なり小なり役立つのですが、まず「労働組合」と名乗ることのできる法的根拠に「労働組合法」があります。労働法の全文は超長いので、今回のnote寄稿の主旨にそって要約します。原文は日本政府ホームページにも上がっています。

労働組合法上の"労働組合"の定義[要約]
使用者(経営者)と労働条件などについて対等に交渉するために、労働者が主体となって自律的に団結することを目的に組織された労働者団体のこと。憲法28条の団結権で保障されている。

至極簡単に言うと「経営者と労働条件について交渉できる」労働者代表団体のことで、概ね「自身が所属する企業の経営者に対して、その会社の両輪となる労働者団体である労働組合を組織している」ことが多いです。

最近は特定の1企業を交渉相手にしない、中小企業の労働者が団結した特定地域業種向けの会社横断的な労働組合も存在しています。

このような特定企業を交渉相手にしない労働組合は、概ね日本では"ユニオン"と呼ばれ、地域や業種を絞って活動しているとお聞きしています。

また、ユニオンではなく、業種内の同業他社の労働組合が集まって連合体を組むことがあります。それらは「xx労働組合連合会/協議会」など所属の労働組合をまとめる役割です。単一労組がそれぞれの交渉先の経営陣を持つため、交渉先を特定しないユニオンに比べて、組織横断の交渉力は概ね大きくなります。

私のいた労組は「電機連合」の傘下労組であったため、その上位組織として「連合(正確には金属労協経由)」があります。
 連合>金属労協>電機連合>親会社グループ連合>自社単一労組
こんな構図です。
歴史的にもう一つ全労連という大きな組織がありますが、支持政党などの違いから、連合と全労連は一線を引いています。

2.労働組合の定義、法的根拠

ではまず、「フェミニスト労働組合」とは、株式会社フェミニストなどといった主たる交渉相手である経営陣がいるか?というと、おそらくいないです。
よって、該当団体が労働組合法上で存在するならば、交渉企業を特定しないユニオン形式ということになると思います。ユニオン形式の労働組合を名乗ることそのものは難しくないと耳に挟んだことはあります。(そのため中小企業経営者からはユニオンと聞くとかなり警戒されます

さて改めて、労働組合法第2条に「労働組合法上の労働組合の定義」に除外条項があったので確認してみます。

①役職者や人事、経営に関わる立場の場合、労働組合の構成員となれない

管理職である役職者を含め、人事部や経理部など特定スタッフ部門に所属している労働者も、組織員となれません。

②経営側の金銭の援助を受けてはいけない

労働組合の活動に、会社の賃金で活動していてはいけません。専従者の給与もです。ただ労働組合向けの部屋を事業所内に会社が便宜する、などは問題ありません。


③共済事業や福利事業を主とする団体の労働組合ではない

労働者から組合費を集め、保険や福利厚生を提供するだけなら労組である意味がありません。

④政治活動や社会運動を"主に"目的とする場合、労働組合とは定義しない

労働条件の改善を企業に申し入れるべき労働組合の"主たる活動"が政治活動や社会運動であってはいけません。ただし、政治資金規正法に従い届出を行うなど、政治活動を行うことそのものは否定はしていません。
労働組合は、経営者と交渉する団体ではあるものの、選挙への呼びかけや市民活動への参加は、違法行為でない限り問題ありません。(ただし労働組合の組織員の賛同を得られるかは投票などで

とはいえ、外部から見えづらく比較的あいまいですので、過去の判例でも政治活動の隠れ蓑にされたりと争点にあがることがあったそうです。(終戦10数年後とかなので今とは時代背景が異なります)

3.労働組合の条件

次は労働組合が掲げるべき規約(条件)です。定義ではなく、明確に「〜〜をすること」を労働組合法で明言されています。
これらを団体規約で明示しない限り、都道府県の労働委員会に届出を出すことのできる労組組合法上の法的な労働組合とは認められません。

労働組合法的第5条2項を要約抜粋します。

①名称 (法人名称の提出)

②所在地 (事務所の用意が必須)

③[単一労組の場合]参加組合員が公平に扱われるか

④差別(人種/宗教/性別/出身)による組合員権利の剥奪が無いこと

⑤[単一労組の場合]労組の代表が直接無記名投票により選挙されること

⑥年一回以上の総会を開くこと

⑦会計監査を行うこと

⑧ストは事前の組織員による直接無記名投票にて開始すること

⑨[単一労組の場合]規約の改定は直接無記名投票により決定すること

以上が基本的な条件になります。

3.フェミニスト労働組合は法律上の"労働組合"か?

まだまだ労働組合法は法人登記など続くのですが、そろそろ「フェミニスト労働組合」という団体について考察します。

まず定義④「政治活動、社会運動を主な活動としない」には大いに抵触していると思えます。
ジェンダー問題を掲げている以上、社会運動と切っても切り離せません。その問題を訴えるべき経営陣もいなそうです。政府へストライキしてもお門違いです。
また「世界女性デーで"家事も性行為も"ストライキをする」ことを現在の目的であるので、"労使関係で定義される労働者"に無関係なのも明白です。
事実婚の労使関係とか逃げ恥か?

よしんば「労働組合の定義④」をクリアできても、「条件⑧スト条件」では「3月8日にストライキをする」ことが先に明示されており、今参加者を募っている状況であれば、事前投票が疑われる上に、どの企業へ争議活動を行っているか不明です。ストライキの終了条件も明示されていないよう思えます。
「労働組合を結成してストをしよう」ではなく「スト(=本当はただの社会運動)をしたい、だから労組と名付けよう」という印象が拭えません。

また勝手な思いですが「条件④差別撤廃」の項目にて、そもそもフェミニスト労働組合は男性お断りに見えます。(トランスジェンダー男性ならいいのか?
「"フェミニスト"という看板を掲げたので男性差別していい」って理屈を主張するのであればさすがに、「えっ?雇用機会均等法は?」、とは思います。

4.本稿の主旨(まとめ)

「有給休暇でいいだろう」など、まだまだ違和感のあるところは多いのですが、このへんでまとめます。

恐らく東京都労働委員会に、「フェミニスト労働組合」の団体申請は通らないと推察されます。よって、労働組合法上の「労働組合」ではないことになります。

「ストライキ」という言葉をこうも安易に持ち出すことも、既存の労組にいた私からすると信じられません。と言うのも「賃金交渉でストするぞ!」と経営者に言うことは、賃貸物件で入居者が大家さんに「家賃交渉で訴えるぞ!」と脅しているのと似た印象を持っています。

ようはストライキとは交渉決裂時の最終手段で、当組合では基本的にストを前提としてはいませんでした。労組なのにストしないの?と思う方もいることでしょうが、実態は経営陣との交渉のテーブルで言語として発することすら憚れます。
その理由については諸説あると思いますが、そもそも当労組は「ストライキをするための争議費用」を3日〜5日(一週間)ほどのスト費用として別口座で管理していました。スト実行時に停止した無給与分の補填として賄われる費目であり、億単位の額になります。「ストライキをする」という行為は、かっこいいとか闘争とかイメージがあると思うのですが、裏では賃金補償などを行わねばならず、その費用は常に労働組合法に従い適切にプールしておく必要があります。
組合員の同意もストライキをする用意(費用)もないのに「ストするぞ!」と言っても実行できないなら、ただのいいがかりでイチャモンに過ぎません。なので軽々しく使って欲しくない、そういった思いなわけです。

これを言うと、活動家のみなさんを喜ばせることになると思うのですが、連合などの「既存のまともな労働組合」の評判を陥れるために"フェミニスト労働組合"なる名前を借りた団体が、ジェンダー問題にかこつけて社会市民運動を行っているのではないか?と感じざるを得ないわけです。

ようは既得権益や今の日本経済をダメにしたい、という意図が見えてしまうんです。選択的夫婦別姓運動と、全く同じ構図ですね。

そのため、テレビ番組でやりそうな「労働組合バラエティ」と最初に述べさせていただきました。既存の労組への風評被害になりえないかな、と思いました。

「労働組合は経営側だ」とか「組合費が高い」や「そもそも労組不要」、というみなさんの発言を頭から否定する気はないのですが、憲法の団結権から発展した労働組合法で、事こまかく細則が定められた上での組織なんです。
言うなれば「株式会社」より設立が難しい組織なんですね。労働者同士の横の繋がりは同業他社間でも強固で、業種ごとの労組が一丸となって情報連携しています。
労働者側である連合に対応する組織として経営者代表の経団連などがありますが、労使双方の発展のために縦横に渡り議論をしています。あなたの会社の労働組合も、一歩違った目で見てあげてください。
会社の愚痴はむしろウェルカムですが、誹謗中傷にならないようほどほどにね!

以上、あくまで個人の感想です。
当寄稿も表現の自由ですので、そのあたりはあしからず。

もし私の文章に共感できたとき、気が向いたらポイッとしてくだされば、次回作の推敲のモチベーションになります。 誰だって他人に評価されることは嬉しいものです!ありがとうございます。 ですが無理/無茶はしないで下さいね!