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冷たいおしり


動かぬ祖母が病院から戻ってきて、ベッドに横たえ、そのあとしばらく片付けや自分たちの食事の準備や、遺影用の写真を選んだりとバタバタしていて、気づくといぬの姿が見えない。

いつもは呼ぶとすぐにタタタと走ってくるのに、その気配もない。
ふと見ると、祖母の肩のあたりに丸くなっていっしょに寝ている。
もう亡くなったのと頭を撫でるとベッドから降りたが、しばらくするとまた側で横たわっている。何度下ろしても、また上がってきてそこでじっとしているのだった。

家では膝の上に乗っておしゃべりしたり、一緒にテレビを見たり、昼寝をしたり、おやつを食べたり、長くはないけれど散歩に出てお祭りのお神輿を見たり。
可愛い可愛いといつも名前を呼んで、撫でてくれて、抱きしめてくれたひと。

共に暮らしてきたそのひとが亡くなったということがわかるのか、そこから動かないようすに初めて涙が出た。

祖母の身体の周りに置かれたドライアイスで、いぬのおしりが冷たくなっている。
抱き上げて、冷たいおしりを撫でながら静かに泣いた。



#いぬ #犬 #愛 #生きる #エッセイ

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