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笑い考(自分用メモ)

※笑いを考える上での注意
「ユーモアはカエルのように解剖できるが、その過程で死んでしまう。純粋な科学的思考の持ち主以外は、その内容に落胆してしまう。」
(アメリカの作家・E.B.ホワイトの言葉)

"The Saturday Review of Literature"
October 1941

0. 笑いの哲学(参考)

●モリオール(20世紀):「笑いの三大理論」

先人の提唱理論を
 <優越の理論>
 <ズレの理論>
 <放出の理論>

に大別。
(それぞれ「優位性の理論、道徳的理論」「不一致の理論、不調和説」「エネルギー理論、安堵説」とも)

⇒<優越の理論><放出の理論>は(否定的⇒肯定的の)感情的転化(非ユーモア的笑い)に通じ、<ズレの理論>は概念的転化(ユーモア的笑い)に通じる。

※注意
どの理論も、説明できない笑いの事例があるため、どれかが統一的な理論、というわけではない。
各場面での面白みは、上記分類の特徴を持つ構成要素が、複合的に重層して表現される。

0.1. <優越の理論>系

●プラトン(紀元前4世紀):「嫉妬由来の笑い」

本来「笑うべきもの」は「自己を知らないこと(=無知)」から発生する一種の「劣悪さ」で、無知の者は自分を現実以上に誇大に表現し、それを見る者は「嫉妬」する。魂の苦痛である「嫉妬」を、「笑う」ことにより「快」に転換している。

…正直、現代的な視点では理解困難な、反・お笑い的考えに思える。
これに対して

●ニーチェ(19世紀):「笑いというのは、良心の呵責もなしに他人の不幸を喜ぶこと」とプラトンの捉え方を肯定。

●アリストテレス(紀元前4世紀):「笑いの優位説」

人は他者から優越の感覚を得る時に笑いが生ずる。

●ホッブズ(17世紀):「他人への嘲笑と自分の優越」

「他人」の「不体裁」が「突然」現れるところに、優位の笑いが発生。

●デカルト(17世紀):「笑い=驚き+憎しみ+喜び」

デカルトは『情念論』で、感情を「驚き、愛、憎しみ(怒り)、欲望、喜び、悲しみ」の6つに分類し、笑いは喜びだけではなく、驚き、憎しみ(怒り)が混在した時に発生する、と説いた。
これに対して

●スピノザ(17世紀):「あざ笑いと笑いのあいだには大きな相違がある。笑いは冗談のように単純な喜びである。過度にさえならなければそれ自体「善」である」として、ホッブズ、デカルトの「優越理論の一義性」を否定。
●アダム・スミス(18世紀):「唯一真実純粋の機知である滑稽さは、人々の性格または行動様式における真実の欠陥が、滑稽な状況の中でわれわれの眼前にさらされる場合である。これは生活態度の改良と人類の利益になるので、紳士の性格にまったく一致する。」として、ホッブズ、デカルトの「優越理論の一義性」を否定。

●ベイン(19世紀):「笑いの卑俗化の理論」
(アリストテレスの「笑いの優位説」の別解釈)

自分よりも遥かに上位に位置する他者が自分と同じレベル、あるいはそれ以下に転落する時に生まれる笑いは、優越感から来るものではなく、権威や威厳のある者や事柄が卑俗化することによって生ずる。

●スターン(20世紀):「価値下落への拒否/拒絶反応」

価値判断と、価値下落に関わる本能的拒否/拒絶反応の現れ。あるいは、価値変化(プラス/マイナス双方あり得る)をゼロにする働き(照れ笑い、謙遜笑い、ごまかし笑い)

0.2. <ズレの理論>系

●カント(18世紀):「笑いの緊張解放説」(不一致説の端緒)

張り詰めた期待がにわかに無に転化することよって笑いが生ずる。
(※<放出の理論>に分類することもある)

●ショーペンハウアー(18-19世紀):「笑いの不一致説」

ある概念と、これと関連して考えられた事物とが一致しないと「突然」分かったときに笑いが生ずる。

●ケストラー(20世紀):「笑いの二元結合説」

不一致なもの、あるいは関係のない別領域のものが、同一平面状に結合する時でも笑いが生ずる。

0.3. <放出の理論>系

●スペンサー(19世紀):「下降的不調和」

不一致(不調和)のうち、予期していた大きな事柄から予期しない小さな事柄へ意識が不意に移行する時に、笑い(余剰エネルギーの発散)が生ずる。
(※逆に上昇的不調和の場合、驚きが生ずる。)

●フロイト(19-20世紀):「心的エネルギーの解放説」

超自我の検閲に引っかかるような攻撃的なもの/性的なものは、理性の心的エネルギーにより意識下に抑圧されているが、機知によってこの抑制が不要になった時、心的エネルギーは節約され、その節約された分のエネルギーが笑いとなって消費される。

●ベルクソン(19-20世紀):「生命の躍動(生の飛躍)」の結果

(※<ズレの理論>に分類することもある)
生命が動的に変化し続ける中で、創造的に内的な衝動により物質的な制限から開放されようと努力する際に、しなやかさを求めるのに反して一種の(ダーウィンの進化論に見る)機械的なこわばりが発生した時に、笑いが生ずる。(制度的硬直に対する自然な防衛反応)

…正直、よく分からない。。。

・喜劇における笑いの構成要素を提唱:反復、反転、交錯
 ⇒エノケン劇団でいう「天丼」「仁丹」「丸三角」に相当。

<系>ベルクソンの笑いの記述法則
法則1「まともな格好をした人間が真似することのできる不恰好はすべて滑稽になる」
 ⇒仮装行列、人間が行うロボットあるいは猿などのものまね。
法則2「人間のからだの態度、身振り、そして運動は、単なる機械をおもわせる程度に正比例して笑いを誘う」
 ⇒チャップリンのような、緊張と弾力に欠けたギクシャクした動作。指示された内容を機械的に受け止めるという融通の利かない様子。比喩をそのままの意味で捉えること。
法則3「精神的なものが本義となっているのに、人物の肉体的なものに我々の注意を呼ぶ一切の出来事は滑稽である」
 ⇒「人間の身体は7割が水分、その他に炭素と脂肪、鉄分と燐でできている。その分の炭素から鉛筆の芯が九千本、脂肪分で石鹸が七個、鉄分で二寸釘が一本、燐でマッチ棒の頭が二千に百本。それをお金に換算すると七千円。七千円の価値しかない人間に一千万円もの保険をかけるのは不合理である」(by 漫才コンビ:星セント・ルイス)
法則4「或る情況が相互に独立している事件の二系列に同時に属しており、そしてそれが同時に全然異なった二つの意味に解釈できるとき、その情況は常に滑稽である」
 ⇒洒落、掛詞、ダブルミーニング
法則5「不条理な観念をよく熟した成句の型の中に挿入すれば、滑稽な言葉が得られる」
 ⇒真面目の中の不真面目
法則6「或る考えの本来の表現を別な調子に移すことによって或る滑稽的効果が得られる」
 ⇒替え歌、パロディ


※以下、
 提供者:笑いを引き起こす(笑わせる/笑われる)側
 消費者:笑う側、笑いを求める側
と表現する。

1. 笑いの基本原理(ショーペンハウアーの「笑いの不一致説」に属する考え方)

通常想定する常識・共通認識等と異なることに遭遇する(事実であるか否かは問わない)

⇒「おかしい」という思いに通じる。
   ①変だ(=異常である)
   ②笑える(=可笑しい
 「あり得ない」という思いに通じる…情報的価値がある。(≒驚き)

2. 笑いの種類・手法

2.0. ジョーク

笑いを誘う小噺 一般。

2.1. ユーモア、ウィット、エスプリ

(消費者の心を)和ませる、思いやりを伴う笑い。

批評(風刺的)の度合い:ユーモア ≦ ウィット ≦ エスプリ

2.2. ブラックユーモア

不謹慎ネタを表現してはいけない、という抑圧からの解放。
(カントの「笑いの緊張解放説」や、フロイトの「心的エネルギーの解放説」に近い)

⇒上記「ユーモア」の亜種である以上は、消費者が不快に感じない場合に限り、そう呼ぶことができる。(不快を与えるものは「ブラックジョーク」)

2.3. アイロニー(皮肉)、サーカズム(嫌味)、シニシズム(冷笑)

期待(あるいは理想)と実状の乖離を悲観的に評価し、表明する。

2.4. 風刺

(主に社会等に関する)批評の手法。

2.4.1. エスニック・ジョーク

民族性/国民性を端的あるいは誇張的にステレオタイプ化して表すジョーク。

2.4.2. カリカチュア

人物の性格や特徴を誇張/歪曲して表現する人物画/似顔絵。

2.5. シュール、ナンセンス

カテゴリー・エラーを起こす。意外性の極致

2.6. パロディ

(ある程度広く認知度のある)特定の知識に基づく
※元ネタの知名度に大きく依存する。

⇒「メタ発言」もパロディの一種(物語構造に関する知識を持つ者限定の笑い)と捉えられる。

2.7. お約束、 十八番、テッパン

意外性ではなく、期待性を重視

⇒枕詞、テンプレ(フラグ)等といったレトリック(修辞技法)にも通じる。

2.8. シャーデンフロイデ(独)、メシウマ(日)

<優越の理論>に基づく「他人の不幸は蜜の味」。

3. 笑いの形式

3.1. スラップスティック・コメディ

提供者が体を使ったドタバタ劇で笑わせる。
(チャップリン、キートン、コント55号、ドリフなど。)

期待性(お約束)を求める傾向がある。

3.1.1. 道化

古代ギリシャ/ローマの裕福層の晩餐で物まね、軽口、大食芸を見せて楽しませた。ローマ帝国の裕福層で、魔除けの意味で精神/身体異常がある人々を奴隷「愚者」として傍に置いた。
⇒中世ヨーロッパの宮廷道化師(ジェスター)へ。
⇒宗教界、俗界問わず、笑わせる術を持つ者が芸術文化に浸透。

・芝居、サーカス、遊園地、教会の日曜学校:クラウン/ピエロ
・歌舞伎:道化方
・宴席:幇間

⇒病院、老人ホーム、被災地での「ケアリング・クラウン」活動へ。

3.2. スタンダップ・コメディ

話の内容で笑わせる。
必ずしも字義通り「立ったまま」である必要はない。
(日本では、漫談、漫才など)

意外性を求める傾向がある。

3.2.1. 落語

提供者が座して一人で行う話芸。噺の最後に「オチ (サゲ)」がつく。
⇒同じネタでも演者の違いを楽しむ。(期待性意外性の両方を求める)

<代表的なオチの種類>
考えオチ:少し考えるとクスリと笑えるオチ。
逆さオチ:立場や物ごとが逆さまになるオチ。
仕草オチ:言葉でなく仕草でオチになる。
仕込みオチ:前段階でオチを仕込んでおくもの(伏線回収)。
間抜けオチ:あまりにも間抜けなことがオチになる。
地口オチ:言葉のダジャレでオチになる。
途端オチ:最後の一言で話の結末がつくオチ。
とんとんオチ:とんとんと調子良く話を進めてオチになる。
梯子オチ:ひとつずつ上がってオチになる。
ぶっつけオチ:相手の言う意味を取り違えるオチ。
まわりオチ:回り回ってもとに戻るオチ。
見立てオチ:意表をつくものに見立てるオチ。

3.3. コント

笑いを目的とした寸劇。
スラップスティック・コメディにも、スタンダップ・コメディにも含み得る形式。

3.3.1. ショートコント(和製英語)

数秒から数十秒程度で終わるコント。

4. 笑いが起こるシチュエーション/技法

4.1. 人為的笑い

4.1.1. ボケ

(消費者が)通常想定することと異なることを言う。

4.1.1.1. ボケ倒し

正当なツッコミを期待していた消費者の想定をも裏切る。

4.1.2. ツッコミ

ボケに対して「突然性」を伴って誤りを指摘し、正当な状態に話を戻す。
共感チャンネルの役割。
(消費者の想定に沿うように着地し、答え合わせができて安心できる。次の展開を聞く準備が消費者側で整う。)

<「ズレの理論」の基づく安部達雄によるツッコミの類型>
(1) 情報非付加型 … 注意喚起のマーカーとして働く。
 (1-1) 否定型(「なんでやねん!」型)
 (1-2) オウム返し型(「xxxって!」型)
 (1-3) 沈黙型(「…」型)
(2) 情報付加型 … 意味上のフィニッシャーとして働く。
 (2-1) 訂正型(「それはxxxだよ!」 型)
 (2-2) 意味指摘型(「それじゃあxxx!」 型):ボケを肯定した場合に発生する新しい文脈に触れる。
 (2-3) 比喩型(「xxxじゃないんだから」 型):同上(表現に比喩が含まれる。)
 (2-4) 否定的感想型:注意喚起マーカーの機能を果たしつつ、「(2) 情報付加型」の上記以外の表現をする。

⇒「ノリツッコミ」は意味指摘型と否定的感想型などの複合形。

<邵東方による安部理論の拡張>
(3) 情報再確認型 … リマインダーとして働く。(後に伏線回収を起こす)

<スターン的「優越の理論」に基づくツッコミの作用>
強いボケ発言を、正当な返しにより棄却。
⇒ ボケ発言の価値下落が発生。

4.1.3. ボヤキ

(主に不平不満等に関する)正当過ぎる/度が過ぎるツッコミ。
ボケでないものに対するツッコミ。(共感性をくすぐる)

4.1.3.1. 「異化のツッコミ」

日常的に見慣れているものに対してツッコむことで、半強制的にボケの存在に変化させ、笑いを再発見する。
(各種あるあるネタ、タモリの素人イジリ、さまぁ〜ず・三村の「○○かよっ!」、千鳥・ノブの「○○じゃ!」)

4.1.4. 頓降法/漸降法

・頓降法:肯定的な言い回しを列挙した後、最後に全否定/意外なものを配置する。(持ち上げてから落とすことが多い)
⇒風刺的言い回しにも使われる。

・漸降法:関連する対象を階層化して順々にレベルを低くした後、最後に急激な落差/意外なものを配置する。

4.1.5. 言葉遊び

通常ではあり得ない音節の組合せが発生すること自体を楽しむ。
⇒なぞかけ、ダジャレ、スプーナリズム(頭音転換)、語呂合わせ、倒語(逆さ読み)、縦読み(折句の一種)など。

4.1.6. 見立て

あるものを表現するために、本来とは異なるものを用いる。
⇒隠喩(メタファー)、ものまね、パロディなど。

4.1.7. 暗号化

分かる人にのみ分かるようにした、消費者の知識や察する能力を期待した笑い。
⇒内輪ネタ/楽屋ネタ(範囲の狭さを特殊性として価値化)、倒語/隠語/業界用語/専門用語、含み・省略(全てを伝えると興が覚める。「皆まで言うな」。)

4.2. 自然発生的笑い
(ショーペンハウアー的分類)

4.2.1. 機知(ウィット)の笑い

①2つのまったく異なる現実が意図せず1つの概念に包括されてしまう場合。
⇒とんち、なぞかけ、ものまね、ダジャレ(おやじギャグ含む)など。

②概念的・意味論的な距離が遠いもの同士を、ある側面・観点・角度から見て「近い」と感じさせる場合。
⇒押韻(漢詩、ラップ)、掛詞、撞着語法(AかつnotA)、矛盾・パラドックスなど。

4.2.2. 愚行の笑い

概念によって目の前の現実を認識しようとしているとき、不意に現実が概念の範囲を大きく飛び越えてしまう場合。

⇒言い間違い、勘違い、空耳、天然ボケ、非常識・常識外れ(落語に登場する「粗忽者」)、自虐の笑い(自嘲)、予期せぬ事故(ただし悲観<驚きの場合)など。

4.3. 笑いの時間発展と連鎖

4.3.1. 笑いの時間発展

4.3.1.1. 基本的性質

①ある程度の期間、持続した後、収束する。
②「1つの笑い」が消費者の「共通認識」として蓄積される。

⇒「天丼」の成立
(1回目の笑いの前後で、消費者側の知識が変化することを利用)
 ・間髪入れずに … 笑いの持続期間内に再導入させる。
 ・忘れた頃に … 笑いの持続期間からズラして再導入させる。
 ・毎回 … お約束、十八番

4.3.1.2. 突然性
(ホッブズ、カント、ショーペンハウアー等が着目した要素)

ツッコミは、ボケの把握と終了に係るタイミング/テンポを、掌握/操作する術。

4.3.2. 落語における「緊張の緩和」理論

二代目・桂枝雀(20世紀)が、落語における笑いが「どこで起きるか」という点に着目し、独自に4つに分類。

ドンデン:物事の展開がいったん落ち着きや一致を見せることによって観客の心理が一度安定に傾き、その後に意外な展開になって不安定な方向に振れることで、落差により笑いが起きる。
謎解き:「ドンデン」とは逆に、物事の展開が観客にとっての謎を生むことで心理が不安定に傾き、その後に謎が解決して安定することで笑いが起きる。
へん:安定状態を経由せず、通常の状態からいきなり物事が不安定な方向に逸脱してしまう作用によって笑いが起きる。
合わせ:「へん」とは逆に、不安定な状態を経由せず、2つの異なる物事が合致してしまう安定化の作用によって笑いが起きる。

4.4. 笑いの心理的距離

●チャップリン (20世紀)

「人生はクローズアップで見れば悲劇。ロングショットで見れば喜劇。」

●河合隼雄(20世紀)

「笑う者」と「笑われる者」という分離があり、その意味において何かを「対象化」する心の働きが存在する事実がある。

●クライン(20世紀)

「心にユーモアがあると、抱えている問題を少し距離をおいてながめることができる。」

●ワインガードナー(21世紀)

「受け手が『ギャグ』を理解するために必要なエネルギーが多ければ多いほど、コミュニケーションが失敗する可能性があり、『ギャグ』が受けなくなる。
ツッコミというメカニズムは「エネルギー需要を少なくさせ、『ギャグ』をもっとわかりやすくする役割」を果たす。

⇒ツッコミは、ボケをくっきりと「対象化」「客体化」して、消費者との距離を最適化する役割を果たす。

バラエティ番組のテロップ
「映像・音声の理解補助」から「ツッコミの亜種」(突然性を持った客体化マーカー)へ変化。

4.5. 笑いのフォーマットの大衆化

笑い、ユーモアは「コミュニケーション・ツール」として大衆化。
「ボケる」「ツッコむ」「ウケる」「スベる」「噛む」「イジる」といったお笑い用語が日常会話にも使用される。

4.5.1. 日常会話におけるボケの機能的側面

<優越の理論>に基づく「自虐」「イジり」により、相手に優越性を与え、相手との心理的距離をコントロールする。
(初対面には「自虐」、仲間内では「イジり」)

4.5.2. 日常会話におけるツッコミの機能的側面

4.5.2.1. 攻撃のツッコミ

他罰的側面。咬みつき。
「ツッコミ」という単語の語感で、攻撃性を和らげて見せているが、一般的には「受けたくないツッコミ」。

4.5.2.2. 発見のツッコミ

「ボケの発見」により、周囲の人々が気づかなかったような面白さを浮き彫りにして、笑ってもらえたら自己承認欲求が充足する「したいツッコミ」。

4.5.2.3. 承認のツッコミ

面白くなかったとしても「スベり」や「無視」という状況にならないための防衛的な「されたいツッコミ」。

※ただし、上記の分類は受け取り方に拠るため、発言者(ツッコミ側)が意図した分類の効果を得られるとは限らず(コミュニケーション・エラーが発生し得て)、気まずさや、SNSの炎上などに発展する可能性はある。

5. AI/ロボットによる笑いの創造/提供は為しえるか?

5.1. <優越の理論>の観点から

人間とAI/ロボットの関係性(主に主従関係・使役関係)から考えて、「人間 < AI/ロボット」の図式は嫌悪されそう。

⇒必然的に、AI/ロボットによる失敗、自虐、弱さを売りとする(≒人間側の優位性を引き出す)形式になりそう。

⇒昨今の「弱いロボット」デザインに通じる。
(愛らしさ、愛おしさの中の笑い・和み)
例:https://www.recruit.co.jp/blog/guesttalk/20200325_429.html

5.2. <ズレの理論>の観点から

①AIが自然言語内の言葉の意味を(転用や誤謬の範囲も含めて)的確に把握したうえで、あえてその範囲を超える語句選択を「そのズレを定量的に評価」しながら行うことで、的確なタイミングでボケられるようになる。

⇒なんとなく「行儀のよい、模範的な」ボケになりそう(面白くなるか?)。

②ロボットが、 人間が期待/想像した以上の動作を行うことで、意表を突く。
正確性とスピードで人間を凌駕する動作(超絶技巧)を行う。

⇒伝統技芸の形式美・様式美に通じる?

5.3. <放出の理論>の観点から

AIから人間に対してストレス等を与えた後、ストレス状態からの解放による安堵感・達成感を与える構造は、既に多数のゲームにおいて一般的に盛り込まれており、一定の成功を収めている。

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