イオ
都市を渡る星空間シャトル
始祖鳥の尾羽
僕はけふ十三に成りました
[nl057便をご利用の皆さま…]
海はとうに干上がり、人々はかなしみの余りステーション建設に勤しんだ。ひとつの球体と燻鼠色の長方形の胴体を持ったステーションは、他の星々に遜色ない出来映えで、TVショウでその様子が映されると皆毎日のようにそれを喜んだ。
(スムーズな乗降にご協力ください)
音を発さないアナウンスが響き渡ってーーー。
十三の記念旅行で僕が行きたい星は決まっていた。それはイオ、唯一つ。
先ず木星への大型便に乗り、個人シャトルに乗り換える。
朝食に向いたゼリーを飲み干して、僕はステーションを行き来する人々の往来をただ眺めていた。
ストロー、上がって、僕等、宇宙。
(酸素は常に配分されています)
(コールドスリープのパンフレットは…)
(nl057便の安全航行にご協力ください)
小惑星帯の雑音
死んだ彗星
宇宙にかかるブランコに乗りたい
[衛星イオには小さな海が観測され…]
僕が踏むのは僕の海
星々の喧騒から遠く
僕はゆっくりと座り込んだ
其処はとてもとても冷たい地面だった
僕の嘗て見たことのない海は
ブラックホオルなど飲み込んでしまう筈さ。
つめたい、だんぜつ、いしをけって、そら、ひとり、あゝ、うみだよ…
(ツーーー。)
おたすけくださひな。