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短編小説集

19
短編小説、増幅中。
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2022年11月の記事一覧

水葬

水葬

 朝からよく晴れた秋の日に、彼女は死んだ。
 誰も知らないところで死んだ。けれど皆それを感じていた。
 彼女の名前はもう無い。死ぬとき僕等は名前を失くすのだ。
 この街にはしきたりがある。それはひとつだけ、弔いに関することだった。
 水葬。
 それを僕等は今日しなくてはならない。
 白蘭の木で死んだ彼女の重みが無くなった身体を、アルペーオおじさんとその息子が抱き抱えて川へと運ぶ。
 花屋のジルが沢

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