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辛いのは三日だけ

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold

 検査結果の表示されたモニタ画面から視線を外した医者は、厳しい顔つきで伊福に向き直った。回転する椅子がキーと軋む音を立てる。
「今日からお酒は禁止です」
 きっぱりとした声でそう言った。
「ああ?」
 不意を突かれた伊福の喉から妙に甲高い声が漏れ出た。彼の唯一の楽しみが毎日の酒なのだ。
「酒を禁止? 禁止っていつまでだよ?」
「ずっとですよ。一生です。この先死ぬまで一滴も飲んではいけません」
 伊福は目を剥き出すように大きく開き、首を大きく左右に振った。
「いやいや待てよ。おい先生、ちょっと待ってくれよ。そんなの無理に決まってるだろ」
 医者の向こうでは看護師が同情するような目で顔でこちらを見ている。
「なあ、先生よ。死ぬまで酒が飲めないなんて、冗談キツいぜ」
 思わず声が大きくなった。睨み付けるような目で医者の胸から顔をゆっくりと舐め見る。
 医者は鼻で軽い溜息を吐いてから、両手でそっと眼鏡を外した。そのまま柔らかい表情を伊福に向ける。
「そこを何とか我慢しましょう。せいぜい三日ほどですから」

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