二かいからの目薬
一日中パソコンを見つめているせいか、夕方になるとどうも目がかすむ。飯尾は目を閉じて手のひらでグッと目を押さえつけた。しばらくそうやってから手を離す。
そっと目を開けると視界がややすっきりしたような気もするが、やはり目の疲れは取れていなかった。
飯尾は口をへの字に曲げたあと、引き出しから目薬を取り出した。半透明の赤い容器は妙に角が多い。宝石のカットをイメージしているのだろうか。
キャップを捻って外し、天井を向いて目薬を注す。
「あれ?」
何も出てこない。
飯尾は顔を正面に向けると赤い容器に目を凝らした。どうやら薬液がなくなっているようだ。容器を持ったまま左右に軽く揺するが何も見えない。
引き出しの中をまさぐると、もう一つ目薬が出てきた。こちらは白く細長い容器で中は見えない。飯尾は再び顔を天井に向けて目薬を注そうとした。
「ダメか」
またしても何も出てこなかった。
「いいや、帰ろう」
二回、空の目薬を注そうとしたものの二回とも上手くいかなかったので、飯尾は目薬を注すことを諦め、大きく伸びをした。
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