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転送

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold

 ピロと通知音が鳴ったので、拓也はベッドに寝転んだままスマートフォンを手に取った。
 画面には里桜からのメッセージが表示されている。
——さっきトシからメッセが来たんだけど、これマジでヤバいかも——
 拓也は指先で画面をスクロールさせた。
——このメッセージは誰にも転送してはいけません。もしも転送すればあなたはすぐに死にます——
 そう書かれたメッセージがあとに続き、そこで終わっている。
「へぇ」拓也はぼんやりした声を出した。
 いわゆる不幸の手紙やチェーンメールは、あの手この手で読み手を脅して、次の人へ転送させようとするのに、これはその逆だ。転送するなってんだから、ここで終わらせればいいわけで、何がしたいのかさっぱりわからなかった。
——なにがヤバいの?——
  ビュン。里桜にメッセージを送ったが、返信はない。
——メッセ見たよ——
 ビュン。しばらく経ってさらにメッセージを送ったが、二通とも未読のままだった。
 拓也は半身を起こして音声通話のボタンを押した。
 ティトトティトトティトト。呼び出し音は鳴り続けるものの反応がない。
 拓也はもう一度、さっきのメッセージを読み直した。
——このメッセージは誰にも転送してはいけません。もしも転送すればあなたはすぐに死にます——
「おいマジかよ」
 急に背中に寒気が広がって、拓也はブルッと体を震わせた。
 里桜に送ったメッセージはずっと未読のままだ。
「ヤバいんじゃねーの、これ」
 拓也は新しいメッセージを立ち上げた。
——里桜がヤバいかもしんねえ——
 宛先から早麦を選んで送信する。ビュン。
——なんで?——
 早麦からはすぐに返信が来た。
——里桜から変なメッセが来たんだけどさ、これがヤバい感じなんだよ——
 ビュン。
——どんな?——
——これ——
 ビュン。
 拓也は里桜からのメッセージを選択する。
——このメッセージは誰にも転送してはいけません。もしも転送すればあなたはすぐに死にます——
 そして、転送ボタンを押した。ビュン。

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