鳩胸
久しぶりにジムで体を動かした丸古は、上気した顔でシャワールームへ入った。脱衣所には数名の男性がいて、汗を拭いたりロッカーから着替えを取り出したりしている。
「ふうう」
疲れた体を休めようとベンチにどっかと腰を下ろした丸古のすぐ横に、若い男がやってきた。おそらく大学の運動部員だろう。小柄ながらがっしりとした体格で、タンクトップから伸びる太い腕や肩には筋肉が盛り上がっている。男はロッカーを開けてから、タンクトップをガバッと勢いよく脱いだ。
「うわっ!?_」
何気なく男を見ていた丸古の口から思わず素っ頓狂な声が溢れた。
「何か?」
振り返った男は不審な顔つきで丸古を見る。
「いや、その、それ」
丸古は男の胸を指さした。本来なら乳首のある場所から鳩の頭がニョッキリと生えているのだ。
「ああ。俺、鳩胸なんすよ」
そう言って男は、左右の胸から生える鳩の頭に指先で軽く触れる。
クルックルックー。
クルッポーポー。
優しく撫でられた二羽の鳩は、満足そうな鳴き声を同時に上げた。
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