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何があってもダメ

 デスクの上に書類を叩きつけるように置いたあと、乱暴に椅子を引き、ドカと大きな音を立てて佐原は腰を下ろした。営業三課全員の視線が一斉に佐原へ向かう。
「課長、いったいどうされたんですか?」
 隣の席の宅羽が顔を向けた。
「それがさ」
 言い終わる前に、いきなりガラス張りのドアが開き、若手課員の街野が駆け込んできた。
「おいこら、走るな」
 注意されても聞く耳を持たず、街野はそのまま居室中央に置かれた応接コーナーに立った。グルリと周りを見回す。
「たいへんですッ!」
「どうしたの?」宅羽の額に皺が寄った。
「屋上に、天狗が」
「天狗?」
「謎の高笑いをしながら、大きな葉っぱを振り回しています!」
「それ、甲斐寺だよ」
 佐原はムッとした声を出す。

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