【絵本レビュー】 『このあとどうしちゃおう』
作者/絵:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
発行日:2016年4月
『このあとどうしちゃおう』のあらすじ:
発想えほん第3弾!ヨシタケシンスケが「死」をテーマに挑む。おじいちゃんは、しぬのがこわかったのかな? たのしみだったのかな? しんだおじいちゃんのノートをひらいてみると・・・。しんだらどうなる? どうしたい? しんだあとのこと、生きてる間に考えてみよう。
『このあとどうしちゃおう』を読んだ感想:
前回、コロナ前の帰国時に購入しました。題名を見た途端ハッとして、でもすぐに必要になるだろうなと思ったのです。
その帰国は、10年間弱言葉を失い半身不随での生活を過ごした父にお別れをする、という目的でしていました。「パパはきっと脳梗塞で倒れると思うけど、延命だけはしないでくれよ」と私が高校生くらいの時から言っていた父でしたから、あんな状態で10年も生きていたというのは、彼の本望ではなく、ある意味辛かったのではないかと思います。外面はすごく良くて、デイケアの人たちにもとても好かれていたのは、元気だった頃と全く変わりませんでした。でも母には、笑顔よりも怒った顔をしていた方が多かったことも知っています。喋れないのに「バカヤロウ!」とはっきり言ったのも聞きました。喋ることと車の運転が大好きな人だったので、ただ座っているか寝ているかだけの生活にかなりの鬱憤が溜まっていたのではないでしょうか。
私たちがいる間はかなり気力を取り戻し、息子の持って来るミニカーを受け取ったりするなどの力強さも見せていましたが、仲良くさせていただいていた看護婦さんにも「あなたたちが帰ったら、きっと急激に落ちていくと思う」と言われていました。でもそれは私たちを見て安心して、この世と別れる準備が整ったという意味だから、と説明してくれました。私たちが後ろ髪引かれる思いでドイツに帰ってきてから2ヶ月後、父は逝きました。私は最後にまだ父らしい父に会えたことと、息子におじいちゃんらしいおじいちゃんと会わせれあげられたことを思い出としていくことに決めていたので、電話口で母のぐすぐすと涙ぐむ声を聞きながら、私はただ最後に見た父の顔を思い出していました。その午後、幼稚園から帰ってきた息子に「おじいちゃんね、死んじゃったよ」と伝えると、「死んじゃった?」と不思議そうに聞くので、少し前に裏庭に息子と埋めた死んだシジュウカラの話をしました。「おじいちゃんは眠って、土の中にいるの?」なんとなくわかってくれたようです。
この絵本は息子のお気に入りで、昨夜も読まされました。少し成長もしたしということで、「おじいちゃんと何して遊んだ?」と聞いてみました。帰ってきたのは、
「おばあちゃんとおじいちゃんとママと潜水艦に乗って、水の中をぶおおおおおって行ったの」
でした。いったい彼はどんな夢を毎日見ているのでしょうか。だから毎晩あんなに大声で叫んでるんだね。もし父が元気だったら、きっと一緒に潜水艦に乗ってくれたと思います。父は今頃どのへんをウロウロしているのでしょうか。
『このあとどうしちゃおう』の作者紹介:
ヨシタケシンスケ
1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)、『りゆうがあります』(PHP研究所)などがある。2児の父。
ヨシタケシンスケさんの他の作品
サポートしていただけるととても嬉しいです。いただいたサポートは、絵本を始めとする、海外に住む子供たちの日本語習得のための活動に利用させていただきます。