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【絵本レビュー】 『ぐりとぐら』

作者:なかがわりえこ
絵:おおむらゆりこ
出版社:福音館
発行日:1967年1月

『ぐりとぐら』のあらすじ:


お料理することと食べることが何より好きな野ねずみのぐりとぐらは、森で大きな卵を見つけました。目玉焼きにしようか卵焼きにしようか考えたすえ、カステラを作ることにしました。でも、卵があまり大きくて運べません。そこでフライパンをもってきて、その場で料理することにしました。カステラを焼くにおいにつられて、森じゅうの動物たちも集まってきます……。

『ぐりとぐら』を読んだ感想:

ぐりとぐらの1冊目を大人になってようやく読みました。すっかり忘れていたのに、名前を聞いた途端赤と青のとんがり帽子とつなぎのズボンを履いた二匹のネズミがすぐに蘇って、いつのまにか顔には笑顔が浮かんできました。息子にも大好評で、世代を超えて人気のあるぐりとぐらの魅力を改めて感じました。

このよで いちばん すきなのは
おりょうりすること たべること

お料理することが好きなのはいいのですが、一体どこにこんな巨大なフライパンや鍋がしまってあるんだ、という野暮な質問は飲み込むとして、なんて素敵なカステラ!フライパンから盛り上がる黄色の表面は、とってもフワフワで、本の中から甘い匂いが漂ってきそうです。そういえば、子供の時このカステラをなんとかして食べたいと思ったものでした。

手作りカステラは食べられなかったけれど、思い出に残っているのはホットケーキです。私の家では当時父が主夫で母が外へ仕事に行っていたので、食事の支度は父がしていました。もちろん幼稚園のお弁当も父が作りました。ところがうちの父は割と年配だったので、タコのウインナーなどという可愛らしいお弁当を作るというコンセプトはゼロでした。まして食欲をそそるカラフルさは全くありません。全部茶色。そんなお弁当ばかりでした。ある日クラスの大嫌いな女の子のお弁当にホットケーキが入っていて、それがなんともおいそうだったのですが、大っ嫌いだったので「ちょうだい」とも言えずにいました。うちに帰ってそれを父に報告したら、なんとまあ次の日朝から作っているんです、ホットケーキを。びっくりするやら嬉しいやら。もちろん父のことなので、入っていたのは茶色く焦げたホットケーキだけ。美味しそうに三角形にも切れていなかったし、うさぎのリンゴも、メイプルシロップもありません。しっとり感もないので喉に詰まって窒息するかと思いましたが、あんなにお弁当の時間が楽しみだったことはありませんでした。ぐりとぐらのカステラを待っていた動物たちも同じ気持ちだったのかな。

『ぐりとぐら』の作者紹介:

なかがわりえこ
作家。1935年札幌生まれ。東京都立高等保母学院卒業後、「みどり保育園」の主任保母になる。72年まで17年間勤めた。62年に出版した『いやいやえん』で厚生大臣賞、NHK児童文学奨励賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞推奨作品賞を受賞。翌年『ぐりとぐら』刊行。『子犬のロクがやってきた』で毎日出版文化賞受賞。主な著書に絵本『ぐりとぐら』シリーズ、『そらいろのたね』『ももいろのきりん』、童話『かえるのエルタ』、エッセイ『絵本と私』『本・子ども・絵本』。映画「となりのトトロ」の楽曲「さんぽ」の作詞でも知られる。2013年菊池寛賞受賞。『ぐりとぐら』は現在まで10カ国語に翻訳されている。


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