【絵本レビュー】 『ぐりとぐらのおきゃくさま』
作者:なかがわりえこ
絵:やまわきゆりこ
出版社:福音館書店
発行日:1967年6月
『ぐりとぐらのおきゃくさま』のあらすじ:
森で雪合戦をしていたぐりとぐらは、雪の上に大きな足跡を見つけました。足跡は森をぬけ、原っぱを通り、ぐりとぐらの家まで続いていました。ドアを開けると玄関には大きな長靴、壁には真っ赤なオーバーと白いマフラー、そして赤い帽子がかかっています。いったいだれ?
『ぐりとぐらのおきゃくさま』を読んだ感想:
おそらくこの絵本が私が手にした最初の「ぐりとぐら」だったと思います。
前にもどこかで書いたかもしれませんが、我が家にサンタクロースは来ませんでした。うちには煙突もなく、サンタはヨーロッパの北のほうに住んでいて、日本まで来る時間はない、というのが主な理由でした。なのでこの絵本を読んだ時も、このおじいさんがサンタという認識はなく、サンタの仕事をしている人というくらいにしか考えなかったように思います。
ただいいなと思ったのは、ぐりとぐらの家にたくさんのお客さんが来て、みんなでケーキを食べたりお茶を飲んだりして夜を過ごすことです。私のうちは本当にお客さんの少ないうちで、なんでも家族だけですることが多かったのですが、私は一人っ子でいつも大人とばかり過ごすことにちょっと不満がありました。私の父はすごく年配で、ことわざや迷信などを教えてもらったり、ポーカーや花札などに小さい頃から触れるなどという、役に立つんだかたたないんだかということを身につけてはいたのですが、ぐりとぐらみたいにいつも人が集まるような家に憧れていました。
スペインに住んでいた時は、友達がぶらっと立ち寄ってくれるのが割と普通で、それがすごく嬉しかったのです。「前を通ったから」と言って上がって来て、お茶を飲んだら帰るとか、そのまま夕飯を一緒に食べるとか。「なんかだぐりとぐらみたいななあ」と温かい気持ちになりました。今いるドイツでは基本数週間前に約束をして会うというパターンが多いですが、それでも息子の友達に公園で偶然会ったりした後にご飯を一緒に食べたり、多めにご飯を作った時に友達を招待したりなど、子供の時に憧れていたお客さんの来る家に少しずつ近づいているかな、と思っています。
『ぐりとぐらのおきゃくさま』の作者紹介:
なかがわりえこ
作家。1935年札幌生まれ。東京都立高等保母学院卒業後、「みどり保育園」の主任保母になる。72年まで17年間勤めた。62年に出版した『いやいやえん』で厚生大臣賞、NHK児童文学奨励賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸賞推奨作品賞を受賞。翌年『ぐりとぐら』刊行。『子犬のロクがやってきた』で毎日出版文化賞受賞。主な著書に絵本『ぐりとぐら』シリーズ、『そらいろのたね』『ももいろのきりん』、童話『かえるのエルタ』、エッセイ『絵本と私』『本・子ども・絵本』。映画「となりのトトロ」の楽曲「さんぽ」の作詞でも知られる。2013年菊池寛賞受賞。『ぐりとぐら』は現在まで10カ国語に翻訳されている。
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