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【絵本レビュー】 『おにたのぼうし』

作者:あまんきみこ
絵:いわさきちひろ
出版社:ポプラ社
発行日:1969年8月

『おにたのぼうし』のあらすじ:


節分の夜、豆まきの音がしない一けん家にとびこんだおにのおにたは、病気の母を看護する少女に出会います。

『おにたのぼうし』を読んだ感想:

「にんげんって おかしいな。おには わるいって、きめているんだから。
おににも、いろいろ あるのにな。にんげんも、いろいろ いるみたいに。」

おにたの言葉です。ドキッとしたと同時に、鬼退治のものではなくこの絵本を選んだわけをもう一度思い出しました。

〇〇だからXXって決めつけがちな私たち。なんでも分類すれば効率的なのは机やタンスの中だけなのに、どうしたって人に対しても無意識にしてしまうんです。

うちの旦那は南米人です。今、どんなイメージが頭に浮かびましたか?サルサが大好きで、仕事よりも遊ぶことが好きで、待ち合わせ時間に遅れることはしょっちゅうで、話し始めると止まりません。ここまで言っただけで大抵来るのは「ラテン系はね〜」というコメントなのです。私も付き合い始めた時は何があっても「ラテン系だから」と流すようにしていたのですが、よく考えたらそれは失礼なことだと思うようになったんです。南米って、すごく大きくて何カ国もあるのに、ひとくくりにできるわけがないんです。まして家族として暮らすようになればなおさらです。「あんたたち南米人は。。。」などという文句は意味がありません。私は旦那に対して怒っているのであって、南米人全員を敵に回しているのではないのです。

子育てをしていると私と旦那の息子への対応の仕方にギャップがあり、キリキリすることも多いのですが、なんとかして「男はさ」とか「ラテンの男はさ」という思考回路を焼き潰そうとこの数年努力しているのです。そこへ飛び込んできたおにたの言葉に諭されたような気がしました。

「にんげんもいろいろいる」から、自分の思ったことをちゃんと伝える努力をしなくちゃ分かり合えないんですよね。

『おにたのぼうし』の作者紹介:

あまんきみこ
1931年満州に生まれる。坪田譲治主催の童話雑誌「びわの実学校」の同人となり、1968年『車のいろは空のいろ』で第1回日本児童文学者協会新人賞、第6回野間児童文芸推奨作品賞を受賞。作品に『おにたのぼうし』(ポプラ社刊)『きつねのみちは天のみち』(大日本図書刊)『ふうたのはなまつり』(あかね書房刊)他多数。エッセイ集に『空の絵本』(童心社刊)がある。京都府在住。

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