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【絵本レビュー】 『クリスマスマーケットのふしぎなよる』

作者/絵:たなか鮎子
出版社:講談社
発行日:2019年10月

『クリスマスマーケットのふしぎなよる』のあらすじ:

おじいちゃんとはじめて訪れたクリスマスマーケット。そこでヨハンは、ツリーから落ちて困りはてた金色のお星さまに出会います。マーケットの番人であるくるみ割り人形と一緒に、ガラス細工の天使やジンジャークッキーなど、マーケットの仲間たちみんなと協力して、お星さまを元のクリスマスツリーに戻そうとがんばるのですが、いじわるな北風が邪魔をして……。

ドイツで暮らした経験をもとに著者が描く、夜の町にかがやくクリスマスマーケットでおきた、ちいさな奇蹟のお話。


『クリスマスマーケットのふしぎなよる』を読んだ感想:

ドイツのクリスマスマーケットはなんだか中世の市場を歩き回っているような気分にさせてくれます。キラキラ光るガラスのオーナメントや木製の人形たちには、ヨハンでなくても目が引き寄せられてしまいます。今年はコロナの影響でクリスマスマーケットはありませんが、例年ならばメリーゴーランドや暖かいグリューワインを目当てに近場のものを見に行きます。

素敵なイラストはもちろんですが、この絵本で面白いなと思ったのは、悪者とされていた北風が実はのけ者にされたとふてくされていたこと。ヨハンの一言で北風の味方は180度変わります。こんなことって、私たちにもありますよね。一人で悩んでいたりするとついつい視野が狭くなり、周囲の全てが的に見えてくる。そんな時誰かの一言が助けになることってありますよね。怒っている人、ふてくされている人も、本当は話を聞いてほしい。誰か気持ちをわかってくれる人がほしいんですよね、とスーパーで自分のお菓子を別なお客さんに取られてしまったと思い込みギャン泣きした息子をなだめながら思ったのでした。

『クリスマスマーケットのふしぎなよる』の作者紹介:

たなか鮎子
1972年、福岡県生まれ、宮城県に育つ。福島大学経済学部卒業。デザイン会社勤務を経て独立後、絵本作家、銅版画家として個展を中心に活動。2000年、ボローニャ国際児童図書展の絵本原画展入選。おもな絵本に『フィオーラとふこうのまじょ』『マルーシカと12の月』(かんのゆうこ/文)『あきねこ』(かんのゆうこ/文)(以上、講談社)、『かいぶつトロルのまほうのおしろ』(アリス館)などがある。パリ在住。

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