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【読書記録】文明の衰退を象徴する話

【読書記録】ファウンデーション 銀河帝国興亡史1 (著)アイザック・アシモフ より

これが科学的手法というものです!

作中の考古学者(帝国の重鎮でもある)は、人類発祥の惑星(宇宙進出は何万年も以前なので、地球は遠い過去に忘れられた)を捜索・研究している。彼の研究方法は、過去の文献(最も古くて800年前!)の調査に拠る。なぜ直接に候補の地を探索しないのかと言うと

しかし、その必要がありますか?私は昔の碩学の―過去の大考古学者の―著作をすべて所持しているのですよ。私はそれらを互いに突き合わせて、(中略)結論に至るのです。これが科学的手法というものです。 昔の碩学たちが効果的に実地調査をやってくれたのに、我々自身が(中略)を歩き回るなど、なんとも粗野なやり方ではありませんか! ― 第2部 第4章

と、諭すようにいう。

過去への信奉

彼は過去の文献を信頼し、その著者を「碩学の(学問が深く広い大学者)」として崇めている。

つまり彼には科学の根本である批判的思考がない。合理主義(既存の理論を優先する考え)や教条主義(権威に従う態度)と言える。

科学は過去の理論や定説を覆すことで進歩する。例えば地球は平らという定説を否定したから大航海時代を迎えるのだし、アインシュタインはニュートンの万有引力を否定したから相対性理論を発見できた。

経験主義

科学的手法とは「観測」と「実験」である。それは経験主義ともいい、経験は理論に勝る考え方だ。

自然の事物・現象に関わり、理科の見方・考え方を働かせ、見通しをもって観察、実験を行うことなどを通して、自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。―高等学校学習指導要領―理科編

国家・組織・個人の衰退

詰まるところ帝国の衰退は、彼のような思考―未来ではなく過去を見る―が広まったからであろう。

現代の科学万能時代でも、彼のような考えがたくさんある。それは確かに効率的かもしれないが、進歩はない。国家や企業、個人は、既存の手法や過去の資料を使い回すのではなく、新たな知識や技術の習得に努める必要があるだろう。

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