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3月に読んだ本

突然ですが、私が3月に読んだ本を紹介します。
こちらの3冊。

ちなみに、以前におすすめの小説を紹介した記事はこちら。

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①総理の夫/原田マハ

絵画などの美術系の小説が多いイメージの原田マハが、政治について書いていて、「日本初のファーストジェントルマンの日記」という形で書かれた小説。

日本初の女性総理大臣になった相馬凛子は、夫の日和にこう問いかける。
「もしも私が総理大臣になったら、何かあなたに不都合はある?」
これ以上にインパクトのある質問ってなかなかないんじゃないか?

政治家だから、もちろんたくさんの問題に直面するし、思い通りにいかないことも多くある。でも、それを乗り越える時には、凛子の多くの人を味方につけられる人間性、必ず敵はいると割り切れる性格、日和の頼りないけど常に妻の味方でいられる姿勢、こういった「人間らしさ」が力を発揮している。
この人たちには見習いたい(けど自分には無理かもしれない)ところがたくさん。

『本日は、お日柄もよく』で活躍するスピーチライター、久遠久美が再び登場したことも個人的には推しポイント。
『本日は、お日柄もよく』では、スピーチの持つ力が描かれていたが、『総理の夫』でも、総理である凛子が心から国民に語りかける「ことば」が大事な役割を果たしてる。
やっぱり原田マハは、「ことば」を使う小説がうまいなぁと。

2013年に発行された政治へのアイロニーが込められた本だそうだが、10年経った今でも、政治家は「ことば」を軽々しく扱うし、凛子のような応援したくなる政治家はいない。結局のところ、日本の政治は変わってないんだなと感じられる本。

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②四月になれば彼女は/川村元気

私の数少ない友達が薦めてくれた本。
読み終わってから、なぜこの本を薦められたのだろうかって考えてる。

「四月になれば彼女は」というタイトルは、Simon & Garfunkelという1960年代のアーティストのApril Come She Willという曲からつけたらしい。
ひと月で1章になっていて、1年分の12章で構成されている。

カバーの色のように、とても淡い色の世界。
主人公の藤代、昔の恋人のハル、婚約者の弥生、弥生の妹夫婦、大学の写真部の大島など、それぞれが「風邪のように発熱し、そして熱を失っていく」様子がとても静かに描かれている。

小説に登場する色と、登場人物が纏う色を繋いでみると、ストーリーの深さが変わってくる気がする。
白で描かれる主人公の藤代、藤代の昔の恋人のハルは青、藤代の婚約者である弥生は「赤」で描かれる。3人の色(白青赤)を混ぜると色になるという、なんともよくできた色と名前の関係性。
その他にも、花火の色、動物園の飼育員の服、彼がサルにあげるリンゴの色など、さまざまな色が登場する。
このこと気付いたのは終盤だったから、もう1回色に注目して見ながら読んでみたい。

人生とか、恋とか、愛とか。深く考えてみたい人におすすめ。
でも、どんなことに対してもいつか熱がなくなる日が来るのかなあと思うとちょっと怖くもなる。
そして、理屈では答えられない「なんで」と向き合うことになると思う。

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③池袋ウエストゲートパーク/石田衣良

ジャンルはミステリだと思うが、「難事件が起きて、トリックを見抜いて解決してみせる」というよくあるストーリーではなく、ちょっと変わった展開の仕方をする。

主人公のマコトが、池袋のストリートで起こるトラブルを解決していく短編。一人称の語りで、マコトの回想録のように書かれている。

ストリート、ヤクザ、暴力団、ギャル、薬物、少年課。
自分がまったく関わったことのない世界だが、文章のキレがよく、爽やかではない描写さえもリズミカルにすんなり頭に入ってくる。

残虐な話の中に、一見悪そうな人たちの人情や地元愛が垣間見えるのがいいアクセント。マコトがトラブルを解決する手段は、法に触れていることもあるはずだけど、大胆で痛快。

この作者のことはあまり知らなかったけれど、たまにはこんなちょっと変わったミステリもいいかもしれないと思った。

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以上、私が3月に読んだ3冊の小説でした。
ぜひ読んで、とおすすめするなら2番目の『四月になれば彼女は』ですね。
では、また。

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