初心者必聴!歴史に残したい洋楽名盤10選 60年代編
みなさんこんにちわ。
最近洋楽離れやら、ロックの人気低下、そもそも若者の音楽離れと洋楽ロック好きからしたら耳の痛いニュースばかりが入ってくる世知辛い世の中になってしまったものです。
ところで最近アメリカの老舗音楽雑誌ローリングストーン誌がオールタイムベスト500なる名盤ランキングを発表しました。
元々2003年ぐらいからあったランキングなんですけど、この度十数年ぶりのアップデートがされたわけです。
ところがこの改変がまぁ賛否両論を巻き起こしましてね、ざっくりいうとR&B、ソウル、ヒップホップなどのブラックミュージックと女性アーティストのアルバムが増加。この部分に関してはまだ自分も許しますよ。
問題なのはロックの名盤が露骨ともいえるぐらい減少、またはランクダウンしていたこと。その中でもイギリスのアーティストはかなり痛手をおってましてね。イギリスのアーティストで10年代のアルバムでランクインされていたのがたった3枚(しかもアデル、アクモン、1Dのハリーという微妙なチョイス)だったり、ピンクフロイドとレッドツェッペリンが50位に入らないといったUKロックリスナー激怒案件が平然と起こってるわけですよ。
とはいえこれってアメリカの音楽雑誌が選んでるってこともあって、そりゃ自国贔屓は当然起こるよなってなるわけでしょうがないと思うんですよ。
だってイギリスのNMEが同じことやったら1位が名だたる大物を差し置いてスミスっていう、一発で信頼を失うようなチョイスするんだからそういうもんなんですよ。
そういう点を考えると日本って実は洋楽文化を嗜むということに関してはかなり恵まれた土壌なんですよね。アメリカ、イギリスといった国とか関係なく、ロック、フォーク、ヒップホップ、といったジャンルとか関係なく、日本じゃないものは全て洋楽という一つのカテゴリーに入れることができます。つまり我々日本人はフラットな目線で名盤を評価できる稀有な立ち位置にいるんですね。
幸い今の時代はサブスクやYouTubeのおかげで、以前よりも手軽に音楽にアクセスすることができます。そんなわけで今回は洋楽を知らない人や、これから洋楽を楽しみたいという人、または洋楽を聴いてるけどもっと自分の知らない分野を開拓したいという人のために、これだけは聴いとけっていう名盤を各年代から10枚選ぶシリーズを始めることにしました。
第一弾はロックンロールがロックへと変わり、アルバムという一つのフォーマットが完成された1960年代からです。
1.The Beatles 「Revolver」
完全無欠の一枚
洋楽を語るうえで一番外せないアーティストと言えばビートルズで間違いないだろう。ジョンレノンとポールマッカートニーという20世紀最高の二人の音楽家を擁するこのバンドは、ロックのみならずその後の音楽シーンに多大な影響もたらした。
ビートルズはとにかく名盤が多く、その中から一枚選べっていうのは非常に悩ましい質問である。一般的な名盤ランキングだと次作サージェントペパーズが選ばれることが多いが、今回は敢えて66年発表のリボルバーをチョイスした。理由は今聴いても強度のあるサウンドであることと、ジョンレノンとポールマッカートニーのパワーバランスが均等であるからだ。
次作サージェントペパーズは不思議なアルバムで、コンセプトアルバムという概念を成立させたという歴史的意義から評価されるのだが、ビートルズの全アルバムの中で一番と言われるとそうでもないという評価を下される矛盾性を持っている。
一方リボルバーは過渡期の作品ではあるものの、サイケデリックにどっぷり浸かったサウンドは最高に冴えており、なによりも収録曲の個性という点では高いレベルを維持してる。
ジミヘン登場前でこのギターサウンドは凄い「Taxman」。ポールマッカートニーの十八番ともいえる美メロが炸裂する「Eleanor Rigby」、「Here, There And Everywhere」。今聴いても強烈なサウンドと深遠な世界観が魅力のジョンレノン作の魔曲「Tomorrow Never Knows」。
前衛性と親和性を兼ね備えた、五角形のステータスが全て最高値という圧倒的なバランスの良さ。これぞ名盤だぞ言わんばかりのお手本のような一枚。
<ネクストステップ>
このアルバムがピンときたらこの前後の「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」、「Rubber Soul」前期の傑作「A Hard Day's Night[後期の集大成「Abbey Road」などを聴いて、ビートルズをより深く理解してみよう。
2.The Beach Boys 「Pet Sounds」
天才の嫉妬と孤独
この手の名盤ランキングをやると高確率で2番手にやってくるでお馴染みのビーチボーイズの最高傑作。同時にポップミュージックの闇をも内包したドキュメンタリー的性質も持ち合わせているのがこのアルバムの特性である。
サーフィン、車、女の子といったテーマとキャッチーとメロディ、そして唯一無二の美しいコーラスワークを武器にヒットチャートを躍進していたビーチボーイズ。しかしビートルズという大衆性と革新性を兼ね備えたイギリスからの刺客がアメリカにやってきたことで、バンドの頭脳であるブライアンウィルソンは大きな危機感を抱く。
打倒ビートルズを掲げ、ライブ活動から身を引いたブライアンは腕利きのスタジオミュージシャンを集め、スタジオにこもり壮大な実験を始めることとなる。
そして完成したアルバムは彼らの持ち味の美しいハーモニーに加え、オルガンやハープシコードを始め、テルミンや犬笛といった多種多様な楽器による多重録音が織りなす重厚なサウンドスケールが展開された。
しかしその内省的な歌詞やキャッチーさを捨て美しさを重視した姿勢は、メンバーやレコード会社のみならず、アメリカという国自体が受け入れなかった。そしてこのアルバムにインスパイアされた天敵ビートルズがサージェントペパーズという金字塔を作ってしまったことがトドメとなった。以後ブライアンは長きにわたり精神を病み、表舞台から姿を消すことになる。
だが時が経つと次第にこのアルバムの賛同者は増え、影響を受けたフォロワーが次第に頭角を現すこととなる。今ではロック史に残る美しい名盤としてその名を残すこととなる。
<ネクストステップ>
ペットサウンズフォロワーのアルバムを追っかけてみよう。特にジェリーフィッシュの「こぼれたミルクに泣かないで」はおすすめ。ビーチボーイズはこれ以外にも71年発表の「Surf's Up」が個人的に良き良き。ちなみに裏話ではあるが天敵のポールマッカートニーがブライアンの家を訪ねた際、ブライアンは恐怖のあまり押し入れに閉じこもって身を潜めたのは有名な話。
3.Bob Dylan 「Highway 61 Revisited」
大きすぎる転換点
ボブディランといえば60年代のアメリカの音楽シーンの顔役ともいえる存在だ。彼が吐露するその言葉の数々は、ポピュラー音楽の詩という分野に大きな魔法をかけた。
現在も第一線で活躍し、その長年の功績を称えられポピュラー音楽家ながらノーベル文学賞を受賞したのは記憶に新しい。彼のフォロワーはフォークというジャンルはおろか、音楽以外の分野でも存在する。ディランとノーベル賞を争った日本を代表する作家村上春樹もその一人だ。
当時のボブディランはアコースティックギター片手に簡素なフォークミュージックと、自分の心情を説得力溢れる巧みな詩に乗せ歌った、公民権運動に揺れるアメリカ社会が渇望した時代の代弁者として持ち上げられていた。
とはいえ当の本人としてはそんな風に持ち上げられることはまっぴらごめんといった感じで、むしろビートルズなどのロックへの興味を抱いていた。実際ディランとビートルズはこの頃ぐらいから交流がある。
そんなわけで今作はエレキギターとオルガンを大胆に導入し、完全にロック寄りのシフトを切ったことでこれぞディランともいえるサウンドを確立。このアルバムでギターとオルガンを担当している二人こそ、後のUSブルースロックを支えるマイクブルームフィールドとアルクーパーという名コンビであるのも見逃せない事実だ。
しかしフォークの貴公子がアコースティックギターからエレキギターへと持ち替えたことの反発もあった。66年のライブで観客が彼のことを「ユダ(裏切り者)!」と罵った時、「嘘つきはお前だ」と返し今作に収録された名曲「Like A Rolling Stone」を大音量で演奏したのは象徴的な出来事だ。
<ネクストステップ>
キャリアが長いため全アルバムを追っかけるのは難しいアーティストではあるが、定番の「The Freewheelin' Bob Dylan」、「Blonde on Blonde」、「血の轍」、最新作の「Rough and Rowdy Ways」などを聴くのがおすすめ。
4.The Who 「My Generation」
等身大の僕らの歌
ビートルズ、ローリングストーンズ、キンクスと並びブリティッシュロック四天王の一角に君臨し、その中でも若者から多くの支持を得たのがザ・フーである。
大音量かつ楽器破壊なんて当たり前な破天荒すぎるライブパフォーマンス、メンバー全員の個性の尖り具合、モッズカルチャーを意識したファッションといったパブリックイメージとは裏腹に、音楽的にはかなり先鋭的かつ実験性あふれる姿勢を持った魅力的なバンドでもある。
その音楽性はキャリアが経つにつれよりディープな方向へと深化していき、ロックオペラ「トミー」ではその名の通りストーリー仕立てのコンセプトアルバムを作り上げ、「フーズネクスト」ではロックバンドとしての底力を見せつけ、ついには「四重人格」という集大成を迎える。
だがこれらの作品は音楽性が深いところまで行きつつも、ピートタウンゼントが描く若者の苦悩と孤独というテーマが根幹にある。そしてその姿勢は僕らの世代と名付けたタイトルの通り一貫してブレていないことがわかる。
歳を取る前に死にたい
これが俺たちの世代だ
こんな刹那的な歌詞を破壊的なパフォーマンスで歌うんだから、彼らに期待した若者が多いのも頷ける。
<ネクストステップ>
音楽性は違えど同じモッズ系のバンドとして、キンクスの「The Kinks Are The Village Green Preservation Society」、スモールフェイセズの「From The Beginning」を聴いてみるのもおすすめ。The Whoだけ聴きたい場合は71年発表の「Who's Next」、映画「Tommy」を見てみたりしてみよう。
5.The Velvet Underground 「The Velvet Underground & Nico」
ロックとアートが結びついた瞬間
1960年代初頭、キャンベルスープの缶、マリリンモンローといった商品や女優を色鮮やかに描いた版画を大量生産し、アメリカの芸術業界にその名を知らしめた男がいた。その男の名前はアンディウォーホルと言い、後に20世紀を代表する芸術家として歴史に名を残す人物だ。
ウォーホルは1964年に製作の拠点をニューヨークに移し、そこにファクトリーと呼ばれるスタジオを作る。アルミホイルと銀色の絵具で覆われたその空間は、多くの文化人が溜まり場として利用することになる。
時を同じくしてニューヨークに現代音楽を学ぶためにイギリスから留学していたジョンケールは、レコード会社の雇われ作曲家をしていた男と意気投合しバンドを組むことになる。その男の名前はルーリードと言い、後のパンク、ニューウェーブ、オルタナティブロックに多大な影響を与えた人物だ。
そしてルーリードとジョンケージの二人を中心として結成されたヴェルヴェットアンダーグラウンドは、ファクトリーに拠点を移したウォーホルと出会ったことで全ての歯車が回りだす。
モデルのニコをゲストボーカルに呼び、前衛的かつ煙たいサウンド、ルーリードの描く性、麻薬といった生々しく挑発的な歌詞、そしてウォーホルによる印象的なバナナのジャケット。
ニューヨークの才能溢れる人間たちの巡り合わせが生んだ偶然の産物は、当時こそは商業的成功こそ収められなかったが、その先進性は時が過ぎるとともに高い評価を得るようになる。
<ネクストステップ>
次作「White Light/White Heat」ではウォーホルの手を離れるものの、ノイジーなサウンドと楽曲の完成度の高さからファンの間で最高傑作と称されることも多い。またアメリカのヴェルヴェッツに対し、当時のイギリスにはシドバレット率いるピンクフロイドが「The Piper at the Gates of Dawn」という傑作を残してるのでおすすめ。
6.The Jimi Hendrix Experience 「Electric Ladyland」
偉大なサウンドイノベーターの最高傑作
ロックという言葉を聴いて最初に思い浮かべる楽器は何か?と言われた時、間違いなく多くの人々はギターを思い浮かべるだろう。
そんなギター、特にエレキギターの歴史はざっくりと2つの時代に分けられることが出来る。それはジミヘン以前とジミヘン以後である。
1967年にイギリスにて自らのバンドであるエクスペリエンスを結成すると、瞬く間にクリームのエリッククラプトンと共にエレキギターの可能性を開拓していった。
ジミヘンはその抜群のセンスとどこから思いついたかわからない突飛なアイデアで、エレキギターから引き出せるサウンドを最大限にまで広げた。そして歯で弾いたり、ギターを燃やしたりと視覚的なパフォーマンスも取り入れる。
今作はそんなサウンドイノベーターとしてのジミヘンの才能が最も開花したアルバムだ。アナログ盤で2枚組という圧巻のボリュームに押し負けない、楽曲のクオリティの高さは圧巻。15分の大曲「Voodoo Child」、ボブディランのカバーにして泥臭いアレンジが秀逸な「見張り塔からずっと」といった代表曲も収録。
しかしアルバムリリースの翌年バンドはエクスペリエンスは解散、結果としてジミヘンにとって最後のオリジナルアルバムとなった。27歳という太く短い生涯を送った天才ギタリストが残した、全てのギタリストに捧げるバイブルがこのアルバムなのだ。
<ネクストステップ>
エクスペリエンス時代のオリジナルアルバムはこれを含めて3枚しか無いので制覇しやすい。プラスアルファでウッドストックのライブ映像視聴と、彼のライバルでもあるエリッククラプトン率いるクリームのアルバム3枚の制覇もやってみよう。またジミヘンに感化されてギターがやりたくなったら、今すぐ楽器屋に行くことを推奨する。
7.The Rollgng Stones 「Let It Bleed」
激動の時代と黄金期の幕開け
1960年代前半にその歴史をスタートさせてからいまだに第一線に君臨し、今年でレコードデビュー57年を迎えるローリングストーンズ。そんな彼らの歴史の始まりは永遠のライバルであるビートルズとの対比から始まる。
それまでのロック=不良の音楽というイメージを刷新したビートルズに対し、真逆のスタンスを標榜したストーンズは不良のイメージを体現すると同時に、常にビートルズと対抗することで彼らに食らいつこうとした。レノン=マッカートニーに対抗して出来たのがジャガー=リチャーズというこれまたロック史にその名を残す名コンビだ。
しかしもろサージェントペパーズの後追いの「There Satanic Majesties Request」の失敗を受け彼らはビートルズへの対抗から、本来の自分たちのルーツに立ち返ったロックンロールを志向することになる。
このアルバムの一つ前の「Beggars Banquet」で提示したストーンズ流ロックンロールは多くのリスナーに受け入れられたが、やはり永遠の悪童を地で行くバンドというだけあって、メンバーの薬物問題にリーダーのブライアンの脱退及び溺死と彼らの周辺は落ち着かない。
「Let It Bleed」では脱退したブライアンの後任としてミックテイラーがバンドに加入、そしてこのレコーディングに参加したライクーダーのギターに感銘を受けたキースがオープンGチューニングを取り入れスタイルを確立する。
このアルバムのリリースの翌日にはあの悪名高きオルタモントの悲劇が起こり、翌年にはライバルのビートルズが解散する。激動の時代を乗り越えたストーンズは「Sticky Fingers」、「Exile On Main Street」といった傑作を立て続けにリリースという黄金期を迎えることとなった。
<ネクストステップ>
ブライアンジョーンズ在籍時の「Aftermath」、ミックテイラー在籍時の「Beggars Banquet」から「Goats Head Soup」の5枚、ロンウッド在籍時の「Tattoo You」を聴いてみよう。それぞれのギタリストのスタイルとそれに合わせたキースのプレーの変化を楽しむのも醍醐味の一つ。
8.Aretha Franklin「I Never Loved a Man the Way I Love You」
女王が女王たる所以
ローリングストーン誌が選ぶ歴史上最も偉大なシンガーとして、マーヴィンゲイ、エルビスプレスリー、ジョンレノン、レイチャールズといった名だたる大物を抑えて一位に輝いたのがアレサフランクリンである。
教会の牧師の父とゴスペル歌手の母を持ったアレサは幼少期からゴスペルを歌い育った。このバックグラウンドがあのパワフルかつ、ゴスペルフィーリングを感じさせる歌唱スタイルへと繋がった。
今作は泣かず飛ばずだったコロムビアレコードからアトランティックレコードへと移籍し、彼女の本来の持ち味であるゴスペル的歌唱を全面に打ち出したことでその名を全国区にした作品でもある。
特に全米No.1の特大ヒットとなった「Respect」はパワフルな歌唱も相まって多くのリスナーの共感を獲得、彼女の代表曲どころか公民権運動やフェミニスト運動のアンセムの立ち位置にまで来た。この曲は元々オーティスレディングの曲なのだが、アレサのカバーが本家より売れてしまったため「あの娘が俺からあの曲を盗んだ」と愚痴をこぼしたのは有名な話。
このように彼女ははカバーのセンスもずば抜けており今作に収録の「Respect」然り、後年のサイモン&ガーファンクルの「明日に掛ける橋」、キャロルキングの「ナチュラルウーマン」など、本来の曲の意味を超えて彼女が歌うと人類愛を歌ってるように見えると言わしめた名曲は数多くある。
今作リリース後も「Lady Soul」、「Aretha Live at Filmore West」と立て続けにリリースしたことで、ソウルの女王としての地位を確立した。長年アメリカを代表する国民的シンガーとして活躍できた所以が、このアルバムを聴けばおのずとわかってくるはずだ。
<ネクストステップ>
前述のとおり「Lady Soul」、「Aretha Live at Filmore West」といったアトランティックレコード時代の作品に触れてみよう。また彼女が出演している映画「ブルースブラザーズ」の視聴や、同時代に活躍したオーティスレディング、サムクックなどのソウル、R&Bの名盤にチャレンジするのもあり。
9.King Crimson 「In The Court of Crimson King」
混乱の美学
1969年のイギリスに目を疑うようなニュースが飛び込んだ。無名の新人バンドのデビュー作がビートルズの「アビーロード」を引きずり落してチャート1位に輝いたというものだ。その無名の新人バンドのデビュー作こそ、プログレッシブロックと呼ばれるジャンルを誕生させたキングクリムゾンの「クリムゾンキングの宮殿」である。
ビートルズの「サージェントペパーズ」をきっかけにミュージシャンを志したロバートフリップを中心に、後にエマーソンレイク&パーマーで人気を博すグレッグレイクや、スタジアムロックの大御所フォリナーの創設メンバーとなるイアンマクドナルドといった名手たちによってキングクリムゾンは結成された。
収録時間43分52秒でわずか5曲という1曲の濃密さ、ジャズやクラシックなどの他ジャンルを取り入れた音楽性、緊張感がありつつも抒情的で美しい楽曲の数々は後世に大きな影響を残した。
このように商業的にはあまり成功しなさそうな楽曲が多いけれど、そのあまりの完成度が話題を呼び「アビーロード」を引きずり下ろすのも納得だとみられるまでになったモンスターアルバムでもある。The Whoのピートタウンゼントは「恐ろしいほどの傑作」と評し、ジミヘンはロバートフリップに握手を求めてきたそうだ。
しかし今作リリースから間もないうちにフリップの厳格な独裁政権がスタートし、クリムゾンの恒例行事ともいえる激しいメンバー交代の歴史が始まることとなる。
その後はジョンウェットン、ビルブラッフォードらと共にプログレ戦国時代を駆け抜けた70年代、ニューウェイブへと接近した80年代、もはやメタルの域へと片足を突っ込み始めた90年代と堂々巡りするキャリアを繰り広げるクリムゾンの混乱を暗示した衝撃のデビュー作。
<ネクストステップ>
キングクリムゾンに関してはハマったらマジで沼。ロバートフリップがこれでもかとリリースする未発表音源やライブ音源をお布施として買う羽目になる覚悟が必要とされる。個人的には黄金期の「Lark's Tongues in Aspic」から「Red」までの3枚、ニューウェイブ期の「Discipline」を聴くのがおすすめ。
10.The Doors 「The Doors」
果てしない闇を駆け抜ける
「昼が夜を滅ぼし、夜が昼を切り裂く」という最初のフレーズから引き込まれてしまうドアーズのデビュー作は冷たい空気感で底から湧きあがる熱気を内包した奇跡のようなアルバムだ。
ジミヘンドリックス、ジャニスジョプリン、ブライアンジョーンズらと同様に27歳という若さでこの世を去り、高い文学性を兼ね備えた生まれながらのカリスマであるジムモリソンが中心となったバンドは、詩人ウィリアムブレイクの詩の一節を下にドアーズと名付けられた。
ジムモリソンの類まれなルックスとパフォーマンス、スキャンダラスな言動でのし上がってきたバンドではあるが、レイマンザレクの個性的なオルガンやロビークリーガーのフラメンコ仕込みのギターなど優秀なメンバーが祖負っていたことや、ジャズやラテンの影響を受けた唯一無二の音楽性も忘れられない。
とはいえこのバンドの根幹はジムモリソンが描く詞なのは間違いない。哲学や文学への造詣が深かった彼が書く歌詞は、退廃的で破滅的というまさに彼の生きざまを体現したようなものが多い。アルバム1曲目を飾る「Break on Through」での生き急ぐような詩世界や、ラストを飾る「The End」におけるアンタッチャブルな内容は、ベトナム戦争に疲弊したアメリカの若者から熱い支持を得ることになる。
後年「地獄の黙示録」や「フォレストガンプ」などベトナム戦争を扱う映画に本作の収録曲がBGMで使われていることや、ベトナム戦争への従軍経験があるオリバーストーンがジムモリソンの伝記映画を撮っていることから明らかであるように、ドアーズはまさしくこの時代のアメリカの空気感を宿したバンドである。そしてそれはどこまでも果てしない闇への扉でもあるのだ。
<ネクストステップ>
とりあえずこのアルバムと共に最高傑作と名高い次作「Strange Days」は聴いてみよう。それ以外のアルバムに関しては好みは分かれそうなので、あまりしっくりこなかったら上に挙げた映画を見てみるのもあり。ただしジムモリソンの伝記映画に関しては絶対に親とみると気まずくなるとだけ言っておく。
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