見出し画像

[非定住の練習ワークショップ報告]厄介な問題へのレジリエンスを考える

複雑な問題を身体で体験する

この記事は5月末に熱海市の山林と芝浦工業大学の施設で行ったワークショップの内容を紹介するものです。今回は熱海にて活動されている環境リレーションズ様と芝浦工業大学山代教授のゼミ生の方々と共に、熱海の街のレジリエンスを高めるための介入のアイデアを考えるワークショップを行いました。
まず、我々は、環境リレーションズ様が維持・管理をされている山の敷地に向けて歩き出しました。山道と呼べるほど整った道は少なく。急勾配や木をかき分けての散策となりました。道中は環境リレーションズの鈴木さんから森の維持管理や、日本の山林をめぐる土地管理や鹿の食害といった課題に関する共有がなされました。

到着地点である森は一部に鹿の防護策がされており、それによって柵の範囲内にはさまざまな草が生えていました。対照的に私たちが歩いてきた道は虫も草も少ない森でした。それは樹木が育ちすぎて、陽の光が地面まで届かなくなっているからです。さらにその背景には鹿の食害や人間が山林に入らなくなった生活様式の変化があります。このように森の中を歩きながら私たちは複雑な問題の関係性に気づくことになりました。

山を降りてきて、芝浦工業大学の施設に移動してからはワークショップを行いました。

解決ができない問題と向き合うワークショップ

テーマは「熱海のレジリエンスを高めるための介入」です。

非定住というコンセプトについてインプットをしたのちに、実際のワークに取り組みます。
まず初めに、グループに分かれて、システム思考の因果ループという手法を用いて熱海の山林をめぐる問題をマッピングした資料を読み込みます。

このマップを見ながら先ほど山林を歩いてきた経験を共有することで、問題の背景にある関係性を理解することが目的です。
また、このワークショップでは一つの問題に対して一つの解答を出すのではなくシステミックに考えるということを重要視しています。近現代の建築がおこなってきた、建設による解決から離れ、小さいが具体的な介入によって状況を改善させることを目指しています。
マップを読み込んだのちに、そのマップを分析するための議論をグループで行います。全部で五つの問いに答えながら、相反する利害関係や問題を調整するためのアイデアを参加者は捻り出す必要があります。

またワークの途中では自分たちが考えたアイデアを批評的に見るという作業も行いました。現在の定住という生活様式とそれを作り出す開発のレジームを乗り越えるために、私たちは人間以外の眼差しや、関係性といった観点を建築・デザインに取り込むことができるのか?これは参加者にとってはかなり難しく、これからよりよいやり方を考えていく必要がありそうです。

最後に、介入のアイデアをグループごとに共有することで、ワークショップを終えました。今回のワークショップは時間が短かったこともあり、複雑な問題を考えることは参加者の皆さんにとっては難易度の高いことだったようですが、単純な解決策に走らないこと、問題の複雑さを前提に考えることを楽しんでもらえた意見も振り返りからはでてきました。


クレジット
協力:NPO法人環境リレーションズ, 芝浦工業大学プロジェクトデザイン研究室
企画・運営:鳥井要介(JGX),奥田宥聡(Poietica), 森原正希(ASIBA)
執筆:奥田宥聡(Poietica)


<告知>
私たちは、今後もより多くの人々と非定住の生活様式を考えるために、ワークショップやアイデアソンをおこなっていく予定です。そこで今回の実践を踏まえてブラッシュアップしたワークショップを体験しフィードバックをいただける方を募集します。

ワークショップは2.5hで、7月中旬に開催予定です。もしご興味ある方は下記のフォームからご連絡ください。

テーマ:GXのアンラーニングから始める暮らしのリ・デザインワークショップ
時間:2.5h オンラインにて開催(zoomとMiroを使用します、使用経験がない方はご参加いただく前にご自身で一度使われることを推奨します)
こんな方におすすめ:非定住というテーマに関心を持たれる方、アイデアソンやワークショップの新しい方法論を学びたい方、建築・建設業界で環境問題に取り組まれている方
問い合わせ: info [a]poietica.jp 代表社員 奥田宥聡
申し込みは以下のフォームよりお願いいたします。参加いただく方が決まったのちに詳細の日程やzoomリンクなどお送りさせていただく予定です。(先着20名ほど)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?