シリーズ:米国のアジア人脈 ⑬ インド太平洋協力の伝道師 アトゥール・ケシャップ国務次官補代理

巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中国に対し、米国は「自由で開かれたインド太平洋」協力を強化している。その尖兵としてアジアを駆け巡っているのが、国務省のアトゥール・ケシャップ首席次官補代理(東アジア・太平洋担当)だ。25年の外交官キャリアを持つケシャップ氏は対中最前線であるスリランカとモルディブで大使を務め、米国防大学幹部も歴任した安全保障の専門家で、日本政府の期待も高い。【毎日新聞論説委員 及川正也】

■中国にらむ主導権争い

あたかも「インド太平洋協力」の推進月間のような9月だった。3~4日にはモルディブで「インド洋地域会議」が開かれ、ハリー・ハリス駐韓米大使が「インド太平洋地域の未来のための協働」をテーマに講演した。9~12日には東京で日米両政府主催の「インド太平洋地域向け日米サイバー演習」が実施され、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインド、ニュージーランド、台湾などが参加した。

軍事演習も盛んだ。2日からは米海軍とASEAN諸国の海軍との初の合同軍事演習「オームクス」がタイで始まり、19日には陸上自衛隊と米陸軍の実動訓練「オリエントシールド」の一環で山口湾沖を航行する海上自衛隊潜水艦救難艦「ちはや」に米陸軍の多目的ヘリ「ブラックホーク」が着艦。26日からは日本、米国、インドの海軍・海上自衛隊による合同軍事訓練「マラバー」が長崎県・佐世保沖で始まっている。

ここから先は

2,240字 / 2画像
この記事のみ ¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?