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明日ノ澪
2022年8月26日 10:30
あの悪い夢の所為で中々落ち着かない。胸の奥に夢の跡が残ったままぼんやりと寝室から出る。僕は思わず目を細めた。雪の光だ。キッチンにある窓から小さな街を見下ろす。空と地上の間は粉雪で煙っていた。高台にあるが故に階段が面倒だが、景色だけは良かった。街中の物件と比べれば利便性は劣れど、僕はこの家に一目惚れをしてしまったのだ。このキッチンの窓は色々な景色を見せてくれる。この窓から朝陽
2022年7月30日 21:26
駅の裏にある公園の前で、僕は車を停めた。もう終電は終わっているし、此処は田舎の古い町。道は細くて辺りの街灯はほとんど無い。彼女の話が途切れる度に、蝉時雨がタイミングよく降り始めるような、妙な感覚が今日一日付き纏っていた。窓を開け、運転席で煙草に火を着ける僕の左腕に、彼女の背中がもたれかかった。「あとちょっと」文庫本の左側が大分薄くなっているので、きっとラストシーンを読んでいるとこ