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#読書記録1 『52ヘルツのクジラたち』

52ヘルツのクジラ。世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。


この言葉が、このセリフの意味がわかると本当に心が痛くなる。今までその存在すら知らなかった52ヘルツの鯨たちがその声を聞く者たちと出会えるように。

そう思いたい。そう思いたくなる作品。
 

___『人には魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のような人』___
  


  


『52ヘルツのクジラたち』

町田そのこ作。2020年4月に刊行され、2021年本屋大賞受賞。


あらすじ

自分の人生を家族に搾取されてきた女性と母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえに愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれるー。

タイトルの意味/「52ヘルツのクジラ」とは

クジラは特定の周波数の声を出すことで仲間たちと意思疎通を図り、その高さは10から39ヘルツと言われている。

ところが、世界に一頭だけ"52ヘルツ"という普通のクジラよりも高い声で歌うクジラがいる。

仲間に届かない声で歌い続ける52ヘルツのクジラは世界で一番孤独と言われている


他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。
たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない___

感想

とにかく読んで正解だった、素晴らしい作品でした。
目を背けたくなるような、でもちゃんと見なくてはいけない、見届けないといけないと思わせられる。
自分がいかに恵まれているのか改めて感じる作品。

苦しく、切なく、痛いがその中でも温かさや朗らかさ、人という生き物の素敵な面が垣間見れた。
どんなに叫んでも自分の叫びは誰の耳にも届かない。
誰にもその声を聴いてもらえなかった女の子がその声を聴いてくれる人と出会い、失い、今度は自分が同じような子の声を聞こうとする。

心が痛くなるが強く生きる姿に心震わされる。

少しでも多くの人に読んでほしい作品です。

町田そのこさん

1980年生まれ。福岡県在住。2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞。2021年に「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞。

【代表作】
『コンビニ兄弟』
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
『星を掬う』
『宙ごはん』


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