純愛って何?と10歳に問われる
「お母さん、純愛って何?」
ふたりで外食し、満腹で歩く帰り道、いきなり飛んできた質問だった。
純愛。
10歳の男の子にどう説明すればいいのか。
そもそも私にこの説明が出来るのだろうか。
「その人のことが好きで好きでたまらないことだと思う。一途っていうか、ピュアっていうか…一途、ピュアって言葉、わかる?(「わかる」と次男。本当か?)その人を想うだけでしあわせ、胸がいっぱい、ってなるのが純愛かなぁ」
情けない。
急に聞かれて動揺し、言葉が出てこない。
「( 次男 )がもう少し大きくなったら分かるよ」とは口が裂けても言いたくない。思ってもいない。
次男が分かる言葉で説明するべしと悩んでいると、すかさず次の質問が飛んだ。
「それはひとりだけってこと?例えば、嫁が3人いる宇髄天元は純愛じゃないの?」
(宇髄天元は『鬼滅の刃』に出てくるキャラクター。元・忍びで、くノ一の奥さんが3人います)
「宇髄さんは3人の奥さんみんなを好きだと思うから愛だとは思う。だけど、純愛というと、うーん違うかなぁ。お母さんのなかでは、純愛は一対一のイメージ」
「ふぅん、そうなんだ。へぇー」
投げかけた質問は、彼には既にどうでもいいらしく、今度はマンガのストーリーを楽しそうに話し出した。
純愛。
言葉としてはよく聞くけれど、ちゃんと考えたこともなかった。
恋愛に、純も不純もあるのかと言ってしまえば元も子もない。
それぞれのかたちがあり、人によってジャッジが違い、私は私のことでしか判断出来ない。
「純愛の経験がありますか?」
と聞かれたら、私はNoとこたえると思う。
恋愛感情を抱くとき、私という人間は全くもって、一途でも純(ピュア)でもないなと思う。
夫との結婚前、まだ互いに独身でいた頃。
彼はいるけれど、それなりに出会いはあり、それは恋愛には至らないけれど、心ときめくことはあった。
でも。
いや、やっぱり。
ないでしょ、ないない。
瞬時にパターンA、パターンBのような幾つものシュミレーションが脳内を巡り、自分に都合よく計算する。
色恋ごとが単純に面倒だったり、まわりの誰かを傷つけてまでと思うと、自分いちばんコンピュータの出すこたえは決まって「現状維持」だ。
「あなた、それは人生損してるわ」
友達に言われるその通りで、後先考えずに飛び込んだりが出来なかった。
して、どうなるの?その後は、と思ってしまうのだ。
自分の前後左右を確認し過ぎて動けない。
臆病者というより、計算高いのだと思う。
結婚してよかったのは、これで自分の居場所が定まったという安心だった。
心地よい私だけの場所。
誰からも脅かされないところ。
この人と一緒に歩んでいけばいい、恋だの愛だの悩まなくていいし、煩わされることもないし、何より彼をずっといちばん好きでいられると自信があった。
実際、今のところその通りで暮らせている。
むこうもそうだったら嬉しいが、その辺はふわっとさせておこう。
30年くらい一緒にいると、感情が地層みたいになっていて、今更掘り起こす気にもならない。
「純愛って何?」
と聞いてきた息子が、この先どんなふうに誰かを好きになるのかは分からない。
恋愛感情なるものが、彼にあるのかもまだわからない。
(幼稚園時代、「〇〇ちゃんが好き」と同じクラスの女の子の話をしてくれたけれど)
恋愛感情がなくても、人はしあわせになれると思う。
このドラマで、私は初めてアロマンティック、アセクシュアルという言葉を知った。
※アロマンティックとは、恋愛的指向の一つで他者に恋愛感情を抱かないこと。アセクシュアルとは、性的指向の一つで他者に性的に惹かれないこと。どちらの面でも他者に惹かれない人を、アロマンティック・アセクシュアルと呼ぶ。(番組公式サイトより引用)
息子の質問で、愛だの恋だのを考えていた。
苦手。
自分の色恋ごとは苦手だ。
物語や人の話は大好きで、ほらやっぱり、純も不純もあるものかと常に思っている。
お読みいただきありがとうございました。
※見出し画像はみんなのフォトギャラリーよりAHIRU LIFE.アヒルライフさんの作品「ロンリー」をお借りしました。ありがとうございました。
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