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ハーレムからの年賀状

お元気ですか?

卒業してからもう四半世紀が経ってしまったなんて信じられないですね。
18歳の頃の私たち、48歳の自分なんて想像出来なかったよね。あ、私はまだ47だよ。

年賀状での年一回のやりとりが、うちが2年連続の喪中で、すっぽり開いてしまったね。
今年は年賀状書けそうです、たぶん。書きたいよ。


ずいぶん昔に届いたあなたからの年賀状に、どうしても言いたかったことがあります。 

「ハーレムの暮らしぶりはいかが? 
好きなオトコたちに囲まれてウハウハですね」

あれ?誰宛て?間違えた?って一瞬分からなかった。

ハーレム?オトコ??オトコって「男」?
うちにいる男って誰よ……と、頭のなかを?マークがぐるぐる駆け巡った。

ようやく気づいた。
夫と、長男と、次男。
好きな男たちに囲まれている紅一点な私。

あなたらしい言い方だなと思ったよ。
大学の頃も、良くも悪くも、相手が一瞬えっ……となるひと言を突然言うのが好きだったなぁと思い出した。

この年賀状を受け取ったころは、幼稚園一年目の長男と、1歳の次男。
夫の帰りは、毎日日付けが変わってから。

好きな男たちって!!
オトコって誰よ!
あなたに叫びたかった。
このオムツとおしりふきと着替えとたたんでない洗濯物でぐちゃぐちゃな空間がハーレムですって?!


翌年の年賀状にもやはり
「ハーレムを楽しんでますか?テキパキと育児や家事をこなしているのでしょう!がんばってね!」
のメッセージ。

ああ、どうしよう。
これ以上ハーレムって書かれるのがつらい……
私、まったくテキパキしてないよ、つらい、つらい、つらい………
年賀状のやりとりを止めてしまおうかな、何回かそう思ったこと。

怒りや妬みを感じる自分が嫌だった。
ひとはひと、自分は自分
そう思っているくせに、ひとにはそう言っているくせに、どうしても比べてしまう私が消えない。

でも年賀状は止められなかった。
年一回の他愛もないやりとりが、私のクレージーでワイルドでバイオレンスとラブにあふれた毎日を、遠くから「がんばれ」って応援してくれている気がしていたから。


◇◇◇◇◇◇

小さかったハーレムの住人たちは大きくなってきて、私も少しずつ気持ちに余裕がうまれてきたよ。
大きい住人は相変わらず大きくて、毎日腕立てを200回しています。

私は住人たちに愛されているのかは、わからない。
自分が彼らを愛しているのかも、よくわからなくなる時もある。
愛ってなによ?
気がついたらそこにあるものって、ミスチルさんも言ってたよね。

あんた何言ってんの?っていうか、あんた今働いてないわけ?だめじゃん!これからお子たちに金がかかるんでしょ?

あなたに言われても私、だいじょうぶな気がする。
言われる相手によるんだよね。

住人たちは、ああ見えてわりとやさしいのよ。
めんどくさいし、汗とかすごいし、洗濯物は大量だし、トイレも汚れるし、すぐ「お腹すいた」「今日のごはんは何?」って言うけれど。
彼らがやさし過ぎてつらい時もあるのよ。
おかあさんはそのままでいいんだと言ってくれるのだけれど。
私が居ない方がいいんじゃないかな、その方がうまくいくんじゃないかなと思う時もあるんだ。

でもここが自分の場所と決めたから、私は私でやってみる。
あなたが言ってくれたハーレムで。

今年は年賀状を書きたいです。
あなたがずっとお元気でいますように。












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