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面白くない話

「今日ね、月蝕って、知ってた?」

我が家に遊びにきた次男の友達Hくんが、私に話しかけてきた。
洗面所で、手を洗いながら。
この子はいつも丁寧に手を洗う。

「うん、月蝕だよね。Hくんは見るの?」
「見ようと思ってる。(  次男 )は見るー?」

すでに向こうでゲームを始めていた次男は「見るーっ」と適当な返事を大声で返す。
何を見るのか分かっているのだろうか。

男子ふたりはソファーに横並びで、ゲームに熱中し始めた。
Hくんの帰る時間を確認して、私はとなりの部屋に移動。
楽しそうな声が聞こえてくる。

◇◇◇◇◇◇

「あっ、6時だ。Hがさ、6時3分が見ごろだって言ってたから、お母さん、ぼく屋上行くね。」

長男を塾に送り出して、夕飯を作っている最中に次男が教えてくれた。

ふたりで急いで自宅の屋上へ。

「お母さん、月。月、いたよ。」

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いたね。欠け始めているね。

しばらく見ていると、「じゃ、ぼく、これでいいや。先に行くね。」次男は下は降りて行った。

夕飯を作っている最中だったので、エプロンをつけたまま夜空を見ていた。

「あーーーーーーーっい!」

突然小さな子どもの声。

向かいのマンション、月を見ている親子の姿が見えた。

月はやがて見えなくなった。

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月が見えなくなった夜空を見上げる。

さっきまで月がいたところをじっと見つめる。


自分のこと、子どもの学校PTAのこと、勉強のこと、家族のこと、体調のこと、働くということ………

どうしたい?と自分自身に問う。
甘えて、放置していることが、次から次へと浮かぶ。

答えは今出なくてもいいんだ。
出せるものも、きっとあるんだ。

ふだんネガティブ思考一直線の私が、前向きに思えたのは月蝕のおかげかもしれない。

夕飯を作り終わり、再び屋上に上がった7時過ぎ、月が現れていた。
(次男に声をかけたが、マンガを読むと言う。)

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「また月が出てきたよ。ほら。」

撮った写真を一瞬チラッと見ると、ふーんと言ってマンガに戻る次男。

こんな時に天体大好きな夫がいれば、興味をそそるように月蝕の話が出来そうなのだが残念。
空手の稽古日で、帰宅が遅い。

「お母さん、月蝕見れてよかったよ。気持ちが明るくなって、なんだか嬉しくなったんだ。そのこと、noteに書こうと思って。」

すなおな気持ちのまま話してみたところ、

「そんなの面白くないんじゃない? noteは面白い方がいいからね。」

次男は noteを時々読んでいる。(アイコンとハンドルネームを見て楽しんでいる、と思われる。)

「面白いって、例えば何よ?」

「うんこ。うんこがいいよ。」

話すんじゃなかった。
(すみません、常にこんな会話ばかりの親子です)

「ただいまーー!」

長男が塾から帰ってきた。
さあ、夕ごはんにしよう。


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