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バトン編②習い事をやめた理由

↑の続き


バトンでは愛と私と、茜という女の子の3人でいつも一緒にいた。

愛も茜も、小学生の価値観では、とても離れた地域の子であった。
小学生なんてものは、隣のクラスに行くだけでノリや空気が変わるものだ。

当時のものさしで言うと、私たちは住んでいる世界が違う3人だった。

それでも、3人で過ごすのは楽しく、とても気が合った。


初めて見た時に「大人っぽい子だな」と感じた私の読み通り
愛はませた子どもだった。

愛には小学生ながら彼氏がいて「昨日の夜は公園で話した」などと、すでに公園デートなるものもしていた。

お昼休憩の時には上級生と一緒にマクドナルドを買いに出た。
戻ってくる時はいつも、ポテトを食べながら笑顔で教室に戻ってきた。
愛は華があって、舞台に立っても目立つ子だった。


茜は子役として芸能事務所に登録をしていて、テレビCMにも出演していた。
可愛くてお嬢様な雰囲気で真面目で、育ちの良さを醸し出していた。

茜のお母さんは、いつも誰よりも早くに迎えにきては、ニコニコと茜の様子を見ていた。
合宿の出発日には、親子で抱き合って「寂しい」と2人でわんわん泣いていた。
ひとしきり泣き続け母親とお別れした茜は、合宿所に着いてからは母親からの手紙を読んでまた泣いていた。

当時の私は、自意識というものが育ち始めたところで、今思い返してもどんな子だったか分からないが、とにかくみんなの事が好きでバトンに行くのも好きだった。

彼氏なんてものをまだ欲しいと思った事がなく、
お昼は母親のお弁当を持参し、
合宿で仲間と一緒にお泊まりできる事に、ワクワクしかなかった私にとって
2人の存り方は興味深かった。

習い事の後にプリクラを取りに行ったり、休みの日に遊園地に行ったりプールに行ったり。
一緒にたくさん遊んだ。
茜は親が厳しく、スケジュールが合わない事も多かったが、そんな時でも愛と私はいつも一緒だった。


中学生に上がる頃、3人の世界の違いが大きくなってきた。


茜は勉強に集中するからと中学に上がる少し前にバトンを辞めた。

私と愛は変わらず続けていたが、中学生になって少し経った頃、私もバトンが嫌になってきた。
理由は「学校の子と遊びたいから」とかなんだとか言っていたが、今の私には本当の理由が分かる。
かっこ悪く感じてきたのだ。

中学生になって自意識が大きくなってきた私にとって、レオタードを着たり可愛い衣装を着てダンスをするという行為が恥ずかしくなってきた。
成長期の体が丸わかりになるピチピチのレオタードも嫌だった。


バトンではその子の特性やチームのバランスを見てグループが組まれる。

私は所属していたグループの中で最年長だった。それに対して「小学生のグループに入れられた」と屈辱を感じていた。
愛は私のグループより1つお姉さんのグループに所属していた。

成長する私の自意識とは裏腹に、大人から見る私はただの子どもで、しかも実際の年齢よりも幼く見えたのだろう。
今思えば、リーダー枠として入れられていたのかもしれないが、当時は真意などどうでも良い。

私は望まないグループに入れられると言う初めての挫折や劣等感で、バトンが嫌になったのだ。

中学生になり、ヒエラルキーというものを感じ取った私は、学校で楽に生きるためにピラミッドのトップでいる事に価値を感じていた。
幼い雰囲気はイキりたい私にとっては邪魔で、大人っぽくなりたかった。

そんな私にとって、バトンは自分のイメージを下げるものとしか思えなくなっていた。
そして中1の夏前、愛にも伝えずにいきなりバトンを辞めた。

しばらくして母親から、愛もバトンを辞めたと聞いた。


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