結局MBAは何を得られるのか。
みなさんこんにちは、岸です。
2020年10月にシンガポールに渡航し、2021年1~12月の1年間でシンガポール経営大学のMBAを取得しました。
とても良くあがる疑問で、私自身も行く前に何度も自問した、
「正直MBAって行く価値あるの?」
という問いに真摯に回答したいと思います。
・現在会社勤めをしているが、MBAに留学に行こうか迷っている方
・MBAという単語自体聞いたことはあるが、詳細はよくわからず、興味がある方
にとって有用な記事となれば幸いです。
全部で5分程度で読めます。
MBAとは?
そもそもMBAとはなにか?Master of Business Administrationの略で、Masterは修士号を表しています。
経営学に関しての大学院なのですが、少しふつうの大学院と違うところは、社会での実務経験がないと入学ができないという点です。
学校によっても異なりますが、通常は最低2年間の企業勤めの経験がないと入学できないところがほとんどです。
私が今回主に紹介したいのはMBA留学で得られる宝3つとマイナスポイント2つです。
得られる宝①:グローバル人材への近道
とにもかくにも将来英語を使用するような職業を志す方であれば(そして現時点で英語をビジネスで使用することに不安を感じている方であれば)、迷わずMBA留学をお勧めします。
私もMBA留学前までは英語は受験勉強で学習したくらいで、業務においてもなんとかだましだましやってきたような人間でしたが、講義に向けた資料の読み込み、予習課題、講義の先生の話、質疑応答、クラスメイトとの昼ご飯、授業時間外でのグループワーク、プレゼン資料作成と発表、クラスメイトとの飲み会、など、あびるように英語を使用するので否が応にも上達していきます。
この上達というのが、机に向かって参考書を片手に学ぶ上達とは違い、小さい頃に言葉を覚える感覚に近いです。
シンガポール経営大学のクラスメイトの素晴らしいところは、日本から来た私に対して「MBAに来ているのだから英語を話せて当たり前」といった接し方ではなく、「英語が母国語ではないのだから英語をナチュラルに話せなくて当たり前」という接し方をしてくれたところでした。
客観的に比較できたわけではないのですが、アメリカの大学と比べて、アジア、特にシンガポールの大学はネイティブスピーカーの割合が高くないため、英語をナチュラルに話せないことに対する寛容度が高いのではないかと感じています。
私も最初の方は「MBAに来たのだからなめられないようにいい英語をしゃべろう」とビビりながら会話に参加していましたが、すぐにそれが得策ではないことに気づきました。いい英語を、文法的に正しい英語を話そうとすればするほど、言葉に詰まる、相手に待たせる時間ができてしまう。
何はともあれ思うようにしゃべってみる、なんか違うなと思ったら言いたいことが難しすぎる可能性があるので、簡単に表す努力をしてみるというのが結果として上達の近道でした。
加えて、人の使っている表現をとにかく真似するのが一番です。たくさん聞く表現はそれだけよく使う表現だということなので、とにかく友達が使っている表現をひたすら使うようにするのがよいと思います。
MBAが半分すぎたころには、友人たちに「いつの間にそんなに英語うまくなったの!?」と良く言われました。自分としてはそこまで変わった気はしてなかったのですが、おそらく最初がとてつもなくぎこちなく、壊れたロボットのようにUm…Um….と言いながらフリーズしていたのでしょう。笑
そんなこんなで1年間会話をあびるように繰り返していれば、ビジネスや日常会話で英語を使用することが完璧でなくてもよいことを知り、頭には友人が使用していた数々の表現が残り、講義や予習資料で調べまくった大量のボキャブラリーが残っていることになります。
あなたの志望する「英語を使用するビジネス」がよほど高度なものでない限り、十分すぎるスキルを手に入れることができると思います。
そして当然このスキルを手に入れるにはMBAだけが選択肢となるわけではありません。あなたが身に着けたい専門(法学や科学など)がある場合は海外大学院への留学の方が、自身の興味があり共通言語が多いはずですので、効果的かもしれません。いずれにせよ仲間が「英語を習得したい私」を受け入れてくれる環境であれば、どこでも上達の近道になりえると思います。
得られる宝②:世界各国の友人
月並みですが、MBA卒業者がなぜこのポイントをMBAの価値として挙げているのか、今になってわかりました。
様々な国の友達ができたので、お互いの国を行き来した場合に会いに行けるクラスメイトという意味でざっと考えてみると、少なくとも、シンガポール、インド、中国、インドネシア、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、アメリカ、ドイツ、イギリス、バングラデシュ、モーリシャスに行った際にはクラスメイトと現地で再開した際にハグをし、その国の観光名所のみならず地元の名店を案内してもらって、お互いの近況を語るディナーをすることになるでしょう。
やはりシンガポールのMBAということもあり、東南アジア各国の比率が高く、ヨーロッパの国の方とのコネクションは築きづらいというのはあるものの、少し長めの休暇が取れた際には必ずどこかの国には行かなければ!と思わされるくらい、大切な絆ができました。
特に定期的に一緒に世界のカジノを回る旅行をする約束をインド人の”ズッ友”としておりますし、ギリシャ駐在になることが決まっている中国人の”ズッ友”を訪問する予定は、コロナが落ち着いたら早く実現させたいです。
得られる宝③:広い視野・俯瞰的な視点
今まで私が日本の一企業の中で過ごした仕事人生は決して悪いものではありませんでした。むしろとても楽しんで職場の仲間と切磋琢磨し、新しい知識をたくさん学びました。
それでいてなお、私の周りにいた人たちは私と似ている境遇の人たちだったのだなと気づかされました。
MBAの中でまず感じたのがクラスメイトのバックグラウンドの多様さです。前段でお話ししたクラスメイトの国籍はもちろんのこと、皆の仕事のバックグラウンドは様々で、監査法人や銀行、船会社、メーカー、IT系、エンジニア、医療系、省庁からの派遣など、自分が知らない世界が沢山広がっていました。また、それぞれMBAで学ぶモチベーションも様々で、MBAが終わったら家業を継ぐ人、企業派遣で元の企業に戻る人、MBAの肩書を得て自国で転職活動をする人、シンガポールでの職を探す人、目的によって学び方のスタイルも違っていました。そうした多様な考え方に触れることで自分が今まで商社で培ってきたスキルはなんだろう、自分が今後どういう知識をつけてどういう方向に向かいたいんだろうというのを客観的に考える・見つめなおすことができました。
また、MBAプログラムの中での出会いも私に大きな影響を与えました。例えばファイナンスの授業では実際にシンガポールで活躍しているスタートアップにインタビューをして、彼らの今後の数年間のプロジェクトの見通しとその財務プロジェクションを構築するグループワークを行ったり、ヘッジファンドの授業では実際のシンガポールのファンドマネージャーにインタビューをして彼らのビジネスの構造を紐解くグループワークを実施したりしました。自分の今まで触れたことのない世界で活躍する人のお話を聞くことがこんなに刺激的なことなのだという気づきがありましたし、自分の世界を押し広げるには自分一人で考えていないでいろんな人の話を聞くのが重要なのだという大切な教訓を学びました。
マイナスポイント①:費用
さて、MBAで得られるものは上に挙げた代表的な3つだけではなく無数にあるという感覚ですが、いい面ばかり話しても判断の材料にはならないと思うので、マイナス面についてもお話ししておこうと思います。
一番大きな問題としては、コストが高いのでそれに見合った価値提供を受けられるのかという点です。
私の通ったシンガポール経営大学はだいたい1年間の学費が600万円程度でした。アメリカの大学は1,000~1,500万円程度が相場ですが、こちらは基本的に2年間プログラムなので1年間で比較したときは割と似たような金額レベルとなります。手早く安くMBAタイトルを取得したいという目的の方は積極的に1年間プログラムを中心に探すといいかもしれません。
また、実際にかかる金額としては学費の他に生活費もかかるわけですので、だいたいこの金額の300~400万円プラスくらいは見ておいた方がいいと思います。1年間プログラムで1,000万円、2年間プログラムで2,000万円くらいが実際の費用といったところですね。自分で通うにはかなりハードルが高い金額であることは間違いないです。会社派遣の制度があるならばまず会社派遣を検討したいところです。
ここではあくまで自費留学を前提に話をしますが、前述の経験を積むためにこの1,000万円ないし2,000万円を払うかといったところがポイントです。経済的手法で考えるならば、今後30年間で現在価値1,000万円分の価値があればペイするということなので、30年間毎年65万円ずつ給料があがるのであれば行く価値があるということになります。(総収入30年×65万円=1,950万円を5%で割り引いたもの)
ただし私は敢えて経済価値だけではなく得られる経験についても一考してもらいたいと思っています。やはり普通に生活している中ではなかなかこのような自分の仕事について考え直す機会、国際的なつながりを持ってお互いに高めあうことを前提にした環境に身を置く機会というのが得づらいため、こうしたMBAのようなビジネスマンが飛び込みやすいプログラムがこの金額帯で提供されているのだと思います。
日常の生活から強制的に自分を引きはがして、チャレンジングな環境に放り込むことができるので、ある種「思考停止的に自己研鑽」できるというのが特徴だと思います。
(ここでの思考停止は、MBAでの学習において思考しないというわけではなく、勉強するかしないかを迷う暇なく、という意味です)
特にシンガポール経営大学では1年間の後半は外部の企業でのインターンシップも必修として実施する必要があり、平日9~18時はインターン、夜19~23時で授業、それ以外の時間で授業の予習復習とグループワークといった超過密スケジュールを送ります。予習復習とグループワークは夜23時から起きていられる時間までと土日でどれくらいできるかが勝負になります。私も暇があったらゴロゴロしたりyoutube見たりするのは好きですが、そんなグダグダな自分の生活を見直す必要もなく「思考停止的に」タスクの山に追い立てられます。笑
もし自分の生活を律するのが得意で、こうした国際的なネットワークや環境にそこまで魅力を感じない場合は、少しMBAは金銭的に高いかもしれません。
マイナスポイント②:ジェネラリスト志向
もう一つのマイナスポイントとしては、MBAは決して一つの領域について限りなく深淵まで掘り下げるようなプログラムではないという点です。
基本的には企業の経営者になったときに困らないような全般的なスキルについて学ぶ、ジェネラリストを作るというところを目標としていますので、財務について専門的に学びたい、起業のノウハウについてだけ知りたいといった特定の要望については応えられないプログラムだと思います。
その代わり、カバーする領域としては、例えばシンガポール経営大学の場合、財務、会計、企業戦略、デジタルトランスフォーメーション、マーケティング、オペレーションマネジメント、ミクロ経済、組織行動学を必修で学習します。
選択科目は参考までに私の履修を紹介すると、デザイン思考、プログラミング、サプライチェーン構造、ヘッジファンド、起業学、プライシング、交渉術、統計学を履修しました。
一つの授業につき3時間半の授業が8コマで構成されています。
そして、各授業にはその授業がカバーする分野が設定されており、その分野があまりにも偏るような履修の仕方ができないようにルールが設定されています。
個人的にはボリュームも満点で、幅広い知識が得られるのがとても新鮮で刺激的だったのでおすすめなのですが、やはり特定の領域を深く学ぶといった設計にはなっていないです。
最後に
結論を申し上げると、私の個人的な見解ではMBAは迷っているなら行った方がいいです。当然資金と時間というリソースを大量投入しなければならないので、足を踏み出しづらい方もいらっしゃるかもしれませんが、その余ったお金で嗜好品や高級品を買うくらいなら、その余った時間でついつい余計な動画やドラマを見るくらいなら(もちろん見ること自体は否定していません!僕も大好きです笑)、自分自身にリソースを投資してみてもいいのではと思います。
得られる宝③のお話とも関連するのですが、起業学の教授の言葉で「Do what you love」、自分の好きなことをやれ、というものがあり、私の中で今でも深く印象に残っています。当然自分の好きでお金を稼ぐにはちゃんとお客の課題を解決しなければならないので簡単なことではありませんが、自分の仕事を少しでも自分の好きな方にもっていったり、そもそも自分が好きなこと、人生の中でやっていきたいことは何かを見つめ直すことは、決して損にはならないと思います。
私自身は前から勝負事やみんなでワイワイするのが好きだったのですが、MBAのクラスメイトと遊んだボードゲームがあまりにも楽しすぎてどっぷりはまってしまい、日本でも同じようにボードゲームがもっとたくさん、ごく当たり前に楽しんでもらえるような仕組みを考えたいと思い、会社を立ち上げました。
自分が何を成し遂げられるのか全く未知の状態ですが、エンターテイメントの業界の端っこで自分の好きな仕事のかたちを模索していきたいと考えています。
ということで今回のnoteはこの辺で終わらせていただきたいと思います。
本ブログを最後までお読みいただいてありがとうございました。
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