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【ASE-Lab.メンバーの声】 #12 〜慶應義塾大学 伊東 理紗さん 編~

海外や全国各地から宇宙好きメンバーが集うASE-Lab.
都内に拠点を置かない団体の活動にメンバーは実際どのように参加しているのでしょうか……?

そんな疑問を持った皆さん!運営メンバーの濵田が調査してきました!
メンバーインタビュー企画第12弾!
今回は、学部3年生からJAXAの宇宙科学研究所で研究をしている伊東 理紗(いとう りさ)さんにインタビューしてまいりました!

JAXAの尾崎 直哉(おざき なおや)先生のもとで軌道の研究をしている伊東さん。
女性研究者として生き抜くことの苦悩と向き合いながら、懸命に挑み続ける伊東さんの情熱をご覧ください




ー自己紹介


慶應義塾大学理工学部機械工学科所属、4月から大学4年生の伊東 理紗(いとう りさ)です。
いわゆる4力(材料力学・流体力学・熱力学・機械力学)を勉強していて、最近はロボットの制御やロボティクスメカトロニクスでパスプランニング(ロボットの移動経路を決める)勉強をしています。

サークルは国際関係会に入っていていましたが、コロナで対面でイベントできなかったり忙しくてやめました。

今はasaiというフェムテック系の会社でインターンをしています。asaiでは経血で健康状態把握したり、婦人科系疾患の早期発見ができるようなキットの研究開発チームに入ってます。

趣味はドライブとカメラです。暇さえあればどこかに行っています!


asaiで働いている方々と!


ーなぜ機械工の勉強をしようと思ったのですか?


高校2年生のときに東工大でやっているGateway to Scienceというイベントに行きました。そこで東工大の関根先生とJAXAの臼井先生の、地球外生命体探査を探す講演を聞きました。

そこで宇宙って楽しいな、宇宙は未知のものだと思っていたけれど、ロボットを飛ばせば人間にも探査ができるんだということに感動して、ローバについて勉強したいなと思って機械工に入りました。


ーASE-Lab.に入ったきっかけや、良い点について教えてください。


大学1年生の2月頃だったと思うんですけど、国際宇宙産業展に行ってASE-Lab.という学生コミュニティがあることを知って入りました。

情報が入ってくるのが本当にいいなと思っていて。
イベント情報はもちろんですけど、自己紹介チャンネル [1] の投稿を見て、医学部や法学部など一見宇宙に関係なさそうな分野にも宇宙を好きな人がいるんだと新たに知ることができました。

また、高校生も参加していたりして、宇宙ってどんな形でも関われるんだなと感じました。

宇宙界隈でもASE-Lab.の浸透率が上がっているのも感じています。

[1] 自己紹介チャンネル : ASE-Lab.のslackで、メンバーが自己紹介を載せているチャンネル。様々な角度から宇宙に向き合っている人がいることが伺えます!


ーASE-Lab.以外での活動について教えてください。


大学2年生の夏にJAXAのインターンに参加しました。これがターニングポイントの1つでしたね。
周りの人たちの宇宙に対する熱量と知識がすごすぎて、自信をなくしたのを覚えています。ただ、将来もこの人たちと一緒に戦いたいなと、そのために勉強しなきゃと思いました。

そこでとりあえず宇宙に関する情報を集めなきゃと思って、情報も集めていたらKAC(Keio Astrobiology Camp)の情報が入ってきました。

研究をしたいと考えるようになったきっかけは宇科連(宇宙科学技術連合講演会)でした。
発表を見ていて、自分のことを語れる何かが欲しい、他の人と対等に語れる何かが欲しいとすごく感じて。それが私にとっては研究であり、そのために早く研究をしたいと感じたきっかけが宇科連でした。



伊東さんと同時期にJAXAインターンに参加した広報部メンバーの記事はこちら↓


ーすでに研究を始めていると伺ったのですが……


はい。技術取得方式を用いて、JAXAの尾崎直哉先生 [2]のもとで研究をしています。

経緯については、大学2年生のときに宇宙ベンチャー企業のOUTSENSEでインターンをしていて、社長さんに宇宙系の研究に興味あるという話をしたら、尾崎先生を紹介してくださいました。
そこで初めて尾崎先生のことを知って、いろいろ調べてみて面白い研究をやっていることを知りました。

ちょうどその時期にKACを知ったんですけど、講師として尾崎先生がいるということを知って、即決で申し込みました。無事去年の3月に参加することができました。

帰りの空港の待ち時間に偶然尾崎先生と雑談する機会があって、JAXAの学生受け入れ制度に興味があるんですよという話をして。
そしたら4月になって尾崎先生から「准教授になって学生受け入れができるようになったけどどうする?」という趣旨のメッセージが来て、即決でお願いしました。

こんな経緯があって尾崎先生の研究室に受け入れていただけることになりました。

なのでKACに参加したことが2つ目のターニングポイントですね。
4月から研究を始めたい自分と、その年から学生の受け入れが可能になった尾崎先生。
本当にタイミングが良かったなと感じています。今でも本当に嬉しいです。

また、尾崎先生から「伊東さんには工学分野の女性研究者のロールモデルになってほしい」と言われたときにすごく驚きました。
ちょうどそのとき自分も女性研究者のロールモデルになりたいと思っていて、自分の夢が他の人に期待されているっていうのはすごく嬉しかったです。


KACのポスター発表で賞をもらった時の伊東さん


[2] 尾崎直哉先生 : JAXA宇宙科学研究所 准教授。世界初の超小型深宇宙探査機PROCYON(プロキオン)の開発を中心に数多くの深宇宙探査ミッションに携わる。軌道設計のスペシャリスト。
ASE-Lab.主催イベント、アストロキャンプにてミッション設計ゼミを監修して頂きました!


ーどんな研究をされているのですか?


火星サンプルリターン時のランデブードッキングに関する軌道の研究をしています。

例えば、NASAではパーサビアランス [3] を飛ばして試料を採集し、それを火星から打ち上げ、大きい回収機がキャッチするということをやっています。
これが宇宙空間のランデブードッキングなのですが、回収機が火星近くまで降りる必要があるため、火星重力下まで降りて再度上昇するのにコストがかかります。

そこで、思い切り打ち上げることで回収機を火星重力下まで下ろすことなく、深宇宙空間で会合して回収できないか、その軌道を計算して最適化するというのが私の研究です。
最適化というのはΔv(どの程度の速度変化が必要か、つまりどの程度の軌道修正が必要か)、どのタイミングでΔvを出すかという観点で考えています。

また、尾崎先生の研究のポイントとして、stochastic(不確実性)を持つ軌道というのがあります。
実際の軌道は打ち上げの誤差を含みますよね。なのでその誤差の広がりがどのくらいで、誤差の中で会合するとしたらΔvはどのくらい必要かというのを研究しています。

[3] パーサビアランス:NASAのMars2020ミッションで火星に着陸した探査機


ー研究室ではどんな生活をしていますか?


今は春休みなので結構頻繁に行ってるんですけど、学校があるときは全休の日に行くようにしていました。
淵野辺(宇宙科学研究所の所在地)は遠いため、学校帰りに行くことが難しいのでそこが大変です。

周囲には受託制度で来てる人はいますが、技術習得方式で来ている方はあまりいないです。なので年上しかいないですね笑

尾崎研が今年度から立ち上がってまだ正式な学生が2人しかいないから、今は津田研の研究室に席を借りて研究してます。飲み会に行ったり研究室旅行に一緒に行ったりしています。

研究で大変だなと思うのは、研究というものがそもそも何もわからないというところから始まっていることです。
最初の方は、わからないことだらけすぎて研究が進まなくてすごく自信をなくしていました。
研究発表や論文の書き方など何もわからない状態から、手取り足取り教えてもらってなんとかやってます。尾崎先生さまさまです笑

今後尾崎研はもっと人数が増えるらしいので楽しみです。

来年は大学の研究室と尾崎研に所属する予定です。
大学の研究室では、尾崎研でこれまでやっていた軌道最適化と関連があるようなロボティクス分野の研究をしようと思っています。


ー制度を利用して良かったこと


宇宙開発がめっちゃ身近になりました!

津田研で、はやぶさ2の運用してる人や探査機作っていたりする人がいたり、隣の研究室がMMX開発チームだったりと、有名な開発が身近にあります。
いい意味で手が届く位置にいる、いい意味で壁がなくて目指せる場所にあるなと感じます。

こういうところから、人生はちゃんとつながってるなと感じますね。
よくわからないけどがむしゃらに頑張っていたら、全部繋がっていた感じです。

あとは大人への相談って大事だなと思いました。

ー伊東さんの目指す研究者像とは……


理系の分野ってとにかく男の人が多くて女の人が少ないですよね。身近な教授とかみてても、男性ばっかで、女性の教授は独身か子供がいないひとばかり。
特に男性教授で子供がいる人を見てると、もしその教授が女性だったら今と同じキャリア・ライフパスを通れてるか?と考えると難しそうに感じてしまいます。

私は将来研究者になりたいって思ってるけど、結婚もしたいし子供も欲しいって思った時に、身近にロールモデルがいないから、女性には無理なんじゃないかと思ってしまう……

でも、理系も女性が増えて欲しいし(というか増えないといけないと思う)、教授や研究職にも女性が増えて欲しいと思っています。

だから自分がその道を切り開けるようになりたいです。

尾崎先生の女性バージョンを目指したいなとすごく思っていて。
研究はもちろんやるし、学生の教育、アウトリーチ活動、ビジネスなど本当に視野が広い先生です。そしてそれを女性ができたら、女性研究者界の道ができると思うので、その前例になりたいです。

それもあって、ASE-Lab.でも女性研究者を目指す人たちのコミュニティとか作ってみたいなと思っています。


ー最後に将来の目標を教えてください


一番大きいのは女性研究者のロールモデルになることです。
直近の目標としては、海外大学の大学院に行きたいと思っているのでそれを目標に今年は動いていきたいと思います。
日本で研究するか、海外で研究するかは行ってみてから考えたいです笑


また、研究やインターンなどに興味がある人はぜひ声をかけてください!


これからも伊東さんのご活躍を応援しています!
今回はインタビューへのご協力ありがとうございました!


この記事を読んで私達の活動に興味を持ってくださった学生さん!
是非弊団体のウェブを覗いてみてください↓ こちらから参加登録も出来ます。

団体ホームページ


取材・文・編集:岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 応用物理コース4年 濵田莉来(広報部メンバー)

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