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ノンフィクション連続小説第⑧話 『妖怪の棲む家』

春の暖かい日だった。私はいつも通り小学校から帰って着替えを済ませ母と旧家に着いた。母は玄関を掃いた後、台所で調理に取りかかる。

私は一階の、今はもう使われていない囲炉裏のある和室を通りぬけ奥の和室をさらに抜け、フスマの前に立った。

『開かずの間』だ。ここはいつもぴたりとフスマが閉められていて、その奥がどうなっているのかと気になっていた。

こんな春の日差しが暖かい日には、新たな挑戦ができそうだった。

「フスマの奥は、外かな?よし見てみよう!」

「.............!」

元は大きな和室だが、どんより重たい雰囲気を纏い荒廃した物置き場になっている。要らなくなったものを何でも放り込んだ無秩序な空間。

まず目に飛び込んできたのは、朽ちて今にも崩れそうな仏壇。

しかも、3基もある...。神や先祖を祀っている雰囲気とは程遠い。

無造作にあちらこちらを向いている。観音開きの黒い扉は全て閉まっている。”ゴオオオォォォォン....”。除夜の鐘を間近で聞いた時のような、地響きのような耳に残る嫌な音がしている。見ると細かく仏壇が揺れている。私は頭が痛くなる。

他には、見たことのない古い扇風機、汚いポット、衣類、紙類、山積みの段ボール箱...何でも詰め込まれていた。

この家は、物を捨てない。

そして、ゾンビの爺さんも、いじわるな婆さんも、その子どもである父もその妹も、買い物欲に取り憑かれていて、異常な買い物の仕方をする。

きっとその前も、その前も、そうだったのね。

どろりとした空気の籠もった、とても嫌な空間だった。

この場所が、後に建て替えてはいるが自分の部屋になるとは、思いもよらなかった。

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第8話はここまで。第9話でも旧家の探検はまだ続きます。ご期待ください。


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