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サイエンス×アートでつくりだす、ミニチュア世界〜模型クリエイター(おしごと算数#3)〜

小学生向け、アウトプット型・探究学習プログラム「なりきりラボ」「おしごと算数」(2019年度グッドデザイン賞受賞)。子どもたちの探究心や創造性を刺激する、数十の職業が詰め込まれています。マガジン「なりきりラボ・おしごと算数の世界」では、その一つひとつのタイトルの魅力をご紹介します。今回は、「模型クリエイター」(おしごと算数#3)です。

<プログラム開発者、いわたく&すぎちゃんに聞きました!>

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いわたく(岩田拓真):
株式会社a.school(エイスクール)代表取締役校長。京都大学総合人間学部卒、東京大学大学院工学系研究科修了(専門分野は、脳科学とイノベーション)。大学院在学中に、ひとり親家庭に対して動機づけ教育を行うNPO法人Motivation Makerを仲間とともに創業し、理事に就任。Boston Consulting Groupにて経営コンサルタントとして勤務した後、a.schoolを創業。探究学習の塾「a.school」を運営するとともに、様々な創造的な教育コンテンツの開発に携わる。自分自身も新しいことを学ぶのが大好き。一児の父。

すぎちゃん(杉野 亮介):
慶応義塾大学経済学部卒業。学生時代に学習指導やテニスコーチの仕事を通じて「人に何かを教えること」に没頭。一方、日頃から思考ゲームや数学パズルなどに高じる、根っからのロジカルシンカー。大人の教育を手掛ける企業に7年勤務し、子どもの教育分野へ転身し、算数・数学の魅力を伝えるべく活動中。a.schoolではラーニングデザイナーとして、「おしごと算数」の企画開発に携わるほか、2017年3月〜2019年7月は柏の葉T-site校の同名クラス講師も務めた。

ー 「模型クリエイター」とは、あんまり聞き慣れない職業ですね。

いわたく:実物大のものを適切な比率で縮小・拡大(場合によっては等倍)することで模型をつくる仕事なんですが、身の回りを見渡すと意外とたくさんあるんですよ、彼らの作品が。「東武ワールドスクエア」や新しくできた「スモールワールズ」のようなミニチュアテーマパークはわかりやすい例ですが、ほかにも建築模型、レストランのショーケースに並ぶ食品サンプル、人体模型、ミニカーなど。多くは「縮小」の技術を使っているので、「ミニチュア模型クリエイター」と言ってもいいかもしれませんね。

関連する算数領域はもちろん、「ものの大きさと計測」「縮尺」。前半3回で計測方法や三次元の物体を縦・横・奥行き同比率で縮小・拡大する技術を徹底的に磨きます!

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第4回目以降は「見立て力」を養いオリジナル作品づくりにいかしていくのですが、ただ本物をミニチュア化するだけではなく、あるものを別のものに見立てることでよりクリエイティブな作品を作り上げるというところがこのプログラムの醍醐味ですね。

ー 「見立てる」とは、どういうことですか?

すぎちゃん:例えば小人になりきって世界を見渡すと、鉛筆が電柱に見えるんじゃない?とか、ペットボトルのキャップが湯おけにそっくり!とか。ガリバーのように小人(や巨人)になったつもりであるものを他のものになぞらえるのが「見立て」です。計測・縮尺という正確性が問われる技術(サイエンス)に、現実世界とミニチュア世界を行ったり来たりする想像力(アート)をかけ合わせるんです。

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(「ミニチュア写真家」田中達也さんがライバル?!プロの作品から「見立ての目」を学びます/出展:Miniature Calendar

想像の世界を表現するためには、技術への橋渡しが必要ですよね。「コップは何に見えるだろう?それは見る人にとって何倍/何分の一の世界?」と縮尺の概念をセットで考えることで、模型づくりへとつなげます。

ー なるほど。今回、プログラム後半で制作する模型を実物ではなく写真で展示・発表するとのことですが、なぜなんでしょう?

すぎちゃん:写真のほうが模型そのものよりも「なりきり」の世界観を表現しやすいからですね。見る角度や切り取り方次第で、模型の「(本物っ)ぽさ」がぐぐっと伝わりやすくなるんです。ドアップで対象そのものへの焦点をあてるとリアリティが増す、いやいや引きで撮ったほうが雰囲気がでる、など。実用的な建築模型と違って今回は見立て(想像)の情景を楽しむアート作品づくりなんで、その世界観に没入してほしいですね。

冒頭で岩田さんが身の回りにいろんな模型があるよ、と話していましたが、その目的もさまざま。仕組みを説明するため、ホンモノを所有できないから、イメージを伝えるため、など。例えば建築模型は頭の中のイメージを具現化する手段として模型を使いますよね。

今回の模型づくりは逆というか、まずは目の前の実物・ホンモノありき。対象物の三次元イメージをしっかり掴み縦横奥行きの比率を適切に保つことで、「見立て」というアート表現がいきてくるんです。

※建築模型づくりに挑戦するプログラム、「おしごと算数:建築家」はこちら

いわたく:そのためにも、プログラム前半で学ぶ算数的要素や模型製作の技術指導部分を大幅に改善しました(注釈:本プログラムは3年前にも開講)。現在通塾している子どもたちは夏前に開講した「おしごと算数:建築家」というプログラムで模型作りの経験があるので、学びの積み重ねもいきてくると思います。

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「おしごと算数」シリーズをとおして意識しているのが、算数という道具を使いこなすことで自分たちが生活しやすくなったり表現しやすくなったりするということを子どもたちに実感してもらうこと。算数は世界をより良く理解するメガネでもあるし、なにかを創り出すための支えとなる道具・工具でもあるんです。道具としての算数を使いこなせる力があるから、自分なりのアート表現に挑戦できるんですね。

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ー アート表現に算数力がいきるなんてあまり考えたことがなかったですけれど、「黄金比」なんていうものありますしね。比率もこうして学ぶと、子どもたちの「やってみたい!(から学ぼう)」につながりますよね。それでは最後に、「模型クリエイター」プロの技について教えて下さい。

すぎちゃん:大きさを正確に測ること、縮尺・比を使いこなすこと、細部にこだわってつくりきることの3つ。前者2つは算数の技ですが、特に3つ目にこだわって自分なりの作品づくりに打ち込んでほしいですね!

いわたく:プロの作品をじっくり研究することをおすすめします。冒頭でもご紹介したミニチュアテーマパークの老舗「東武ワールドスクエア」や有明の「スモールワールズ」は首都圏にお住まいの方は比較的アクセスしやすいですし、ほかにもテラダモケイさんの紙製模型たち、ジオラマ・コマ撮りアニメクリエーターのMozuさん、そしてもちろん、田中達也さんの作品は全ておすすめです!

\子どもたちの作品はa.school公式Instagramで/
2020年11-12月に開講した「模型クリエイター」の様子を、Instagramでお伝えしています!今後は季節講習などで開講予定です。


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