小学生の私がキレちらかす同級生を泣かせた話
小学生の私がキレちらかす同級生を泣かせた話
私は相手を「周りの評価」で評価しない。
生まれ持ったこだわりのようなものかもしれない。
何となく思うのは、4歳児の「なぁぜなぁぜ」を、周りの大人が誰も相手にしなかった結果、そのまま自分で解決する方向に成長したんだと思う。
子どものころ、お調子者でどちらかというと人の真ん中にいる方だった。
自然と囲まれる、というよりは「大きな声を出して来てもらう」だったように思う。今もかもしれない。
他の「人の真ん中」に居る人にあこがれて嫉妬していたから、そうなりたかったんだと思う。
会社、趣味の集まり、だいたいどこのコミューンにも「周りから嫌われている人」というのは必ず居た。
そういう人を私は「周りの評価」で評価しない。
小4の時、クラスに早熟で粗暴でキレやすい女の子がいた。
いつもきれいな服をきてかわいいカチューシャをしていたが、キレない日はなく、クラスメイトも先生も「またミホがキレてるよ」とあきれて、日ごろから距離をとっていた。
ミホが「なにしてるの?」と寄っていけば大抵の子は2、3答えて離れる。
私は「何故ミホはキレるんだろう」と、かかわる事にした。
私が小学生のころ、おもちゃのような「食べ物消しゴム」がひそかなブームになっており、私も何種類かの消しゴムを、パーツが外れてなくならないように接着剤で止めて大切にしていた。
ペンケースに入っていたそれを、私が席を立っている間にミホは勝手に出して、パーツが外れない事にキレて歯で無理やり外そうとしていた。そこに私が帰って来た。
私「ミホ!?なんで私の消しゴム勝手に触ってる!?」
ミホ「どうなってるか気になったからだけど?」
パーツには、くっきりと歯型がついていた。
私「大切にしてて、パーツが取れないようにくっつけてるんだ」
ミホ「あ~だから取れなかったんだ!?つっくいてるなんてしらないもん!」
ミホは悪びれもしない。だからミホは周りに嫌われていた。
大抵の子はやらかしてしまってもここで「ごめん!」と謝り、相手が許す流れだからだ。
私は親にあまりこういうものを買ってもらえない方だったので、この消しゴムが壊れても新しい物はもう手に入らないだろうと思って、ポロポロ泣きながら
「私は大切なものが私の知らないうちに傷つけられたことで悲しんでるんだよ。ミホはいつもそうやって自分の都合が悪くなるとキレて終わりにする。だから周りがミホのこと怖がって一緒に遊ばないんだ」
と言った。
普段なら、「しらないもん!」とミホが言ったところで相手が怯えて終わりだ。
言い返したところでミホは体が大きく、すぐ本気の手が出る。
ミホは私が何故悲しんでいるか、何故いつも周りが一歩引いているのか、私のその言葉で理解できたらしい。
キレずに、普段はパリピな私が静かに泣いているのを見て狼狽えていた。
「謝ってほしい。謝っても直るわけじゃないけど、謝ってくれないと許すことができない」
「ごめんね、これでいいでしょ」
ミホは逆切れの構えだった。そのまま私の返答を待たずにどこかへ言ってしまった。
後日ミホは私に新しい食べ物消しゴムをくれた。
「壊したから」
壊れたものとは違うものだったし、今まで食べ物消しゴムをもっていなかったミホの親が買ってくれたであろうそれを貰うのは気が引けた。
怒りの喉元がすぎた私は「もういいよ、形あるものはいつか壊れるんだ、それはミホのだよ」
というと、本当はあげたくなかったらしいミホが
「あげるっていってるじゃん!」とキレた。
ミホにキレられるとかえって冷静になる。
「これが(歯形のついた)カボチャが気に入ってんだよね、まだ使えるし大丈夫」
ミホは満面の笑みになった「ほんとに!?ほんとにいいの!?」
それからミホは私の言う事には素直に耳を傾けるようになった。
ある体育の時間の前に「あさやー!ミホが暴れてる!」とすっかりミホたしなめ要員として周知された私が、先に教室からでたクラスメイトに呼ばれた。
私は「やれやれまたか」と歩いて校庭に向かうと、キングコングのように猛り怒り狂うミホが、野球用のフェンスの上まで登って文字通り吠えていた。
「なんで?」
クラスメイトは成すすべなく遠巻きにながめて「あぶないよー」等と言っている。先生も「おりなさい!」と叫んでいるが、ミホは野獣のように「ウオー!!ウオー!!」と吠えながらマジ切れしている。
私がフェンスの足元まで歩いて行くと、ミホは
「来るな!!来たらなぐる!!」と声をかけてきた。
「ちょっとまってよ、私はミホがなんで怒ってるか全くわからないから話を聞きに来たんだけど、なんで怒ってるかミホから教えてくれない?」
ミホはその位置で「あのね…」と喋り始めたが「聞こえないから近くにきてよ」と伝える。
するとミホは憑き物が落ちたかのように素直にゆっくりとフェンスから下りてきた。
なんでミホが怒ってたのかは覚えてない。
私「ミホ、怒ってる理由を体で表現しても「怒ってる事」しか伝わらないし、ミホはいつもその後どうしていいかわからなくなるでしょ?」
ミホ「どうしていつも皆、私の話を聞いてくれないんだって、ずっと思ってた。そういうことかぁ」
と、しょんぼり泣いて、今までブチ切れてたキングコングどこいったの?というくらいケロっと素直にその後の授業を受けていた。
皆への謝罪はなかった。
今思えばミホは体が早熟で、周りより早く大人になる体、幼い心がついて行ってなかったのだろうと思う。
私はこの事件を忘れないと思う。
ミホは他にも嫌いな給食を頂きますの前に一口たべて「やっぱいらない」と配ぜん中の食缶に戻したり、
教室で血の付いたナプキンを見せて「私は大人だ!!!」と叫んだり、数々の伝説を残した。
(これについてミホは○○○○だろうね、と適当な推測を述べる場所ではない。私も、多分読んでるあなたも専門家ではないだろうし、口に出したところで答え合わせはできないから、心にとどめておきな)
これがあったから私は「周りに嫌われている人」と「周りと同じだけの距離」を置かないことにしてる。
○○さんはお局で若い子に厳しいから、とか
○○部長はパワハラで何度も訴えられてる、とか
お局さんに仕事を聞きに行くときは尊敬を意をもって熱心にメモして必ず笑顔でありがとうを言えば、なぜか私にだけお土産をくれるやさしいお姉さまになってくれるし、「私怖がられてるからさ」としょげる。大抵のお局様と言われる人は、仕事がやたらできるだけの可愛い人なのだ。
パワハラ部長に馴れ馴れしく絡んでいけば酒をおごってくれるし、「お前はパワハラだセクハラだって直接言ってくれるから接しやすい」と重要な仕事にも同行させてくれる。
あるいは上司が
○○さんは仕事が遅くてミスばっかりで使えない、とか
○○さんはコミュニケーションとれないから仕事が間に合わないギリギリになって言ってくる、とか
仕事が遅くてミスばっかりなのは仕事の仕方を理解してないからなのだ。
大抵そういうと「引継ぎもしたしマニュアルもある」という。人間は人それぞれ理解度が違いますよ。と、1からその人の仕事を確認すればかならず「あいまい」なまま進めてる箇所が見えてくるし、そこをもう何度か一緒に確認するだけで毎回上司がキレてたミスは無くなる。
コミュニケーションがとれない人は「人とのかかわり方が下手だ」と自覚して悩んでいたから、毎時「進捗どうすか!?10段階で!」と声をかけ、進んでなければこちらから見るし、最初は緊張していた相手も慣れてくればこちらが声をかけたタイミングで「ちょ・・・っとやばいです」「いまって時間ありますか」と少ないながら自らアクションを起こすようになる。
そうやって私が最大効率にあげ、前年比の利益率を残業の大幅削減という実績をもってあげた私には、前社長はウナギをおごってくれたし、新社長はワインをおごってくれた。イェーイ!!
と同時に私は若い社員から距離をとられていた。
距離をとられてしまっては、こちらから距離を詰めようと話をふっても磁石の同極同士のように手応えなく離れてしまう。悲しい。
私は怖いらしい。わかる。しょんぼり。
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