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生雲隧道1 山口県山口市(旧阿東町)

この隧道を知ったのはいつだったか、県内のめぼしい廃隧道はないかとネットサーフィンをしていたときだ。こちらこちらのサイト様で紹介されており、いずれは訪ねてみようと思っていた。

隧道の名を生雲隧道(いくもずいどう)と言う。

場所は山口県の旧阿東町、県道11号の旧道にある。現道は生雲トンネル。生雲トンネルは1994年開通なので、旧県道および生雲隧道は旧道化後30年近く経過しているわけである。
地図ではここ。

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拡大するとこう。

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地図には載っていないけど、多分この赤線みたいな感じで旧道があって、あの辺を隧道が抜いてるんだろうなーと予測していた。

特に下調べもせず適当な予測のもとに行動する程度には、私は舐めていたと言わざるを得ない。上記サイト様も坑口まで行っているわけで、少なくとも坑口に辿り着くくらいなら訳ないだろうと思っていた。思っていたのだが。

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最初はGoogleストリートビュー先生の画像にお出ましいただいた。これは現在の県道11号線上から現道の生雲トンネルの東側坑口方向を撮影した画像である。奥に小さく見えてるね、生雲トンネルの坑口。
そしてこの道から右に分岐してゆるやかに登っていく、あからさまに旧道と思われる道。はいはい、あそこね。ちょろいな。

私の生雲隧道探索は、この旧道から隧道東側坑口へ到達すべく始まった。

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この日は雨がぽつぽつ降り続く悪天候で、早く隧道で雨宿りしたいなーなどと思いながら旧道の上り坂へ。このスタート地点を①地点としておこう。

①地点から侵攻。路面が多少荒れてはいるがこのくらいなら車で進める。右にカーブした道を100mばかり進むと…

ちょっとした広場と分岐が出現!
ダンジョン前のセーブポイントのようだ。
この広場は車を転回させる十分なスペースがあり、駐車場として最適だった。ここを②地点とし、右奥への分岐を③、左手の細い上り坂を④と分類しておこう。
さて、④ルートは道幅、勾配から判断して明らかに車道ではない。必然的に③ルートの先に隧道があるはずだ。しかし道が続いているはずの場所が緑色だぞ。これは…道は大丈夫か?

もちろん大丈夫じゃないね!
これは③ルートの入り口から奥を撮影した写真だが、藪に覆われて先を一切見通せない。手前に辛うじて舗装の痕跡を見出せるが、奥は完全に自然に還ってないか、これ。
まあ、藪なら蛇にでもやられない限り命の危険はあるまいて。
進軍!

身長に近い高さまで繁茂した藪をかきわけ進む。一本一本はたいした強度でなくても、まとまって襲いかかってくるとかなりの抵抗がある。毛利元就イズム。
そして蜘蛛の巣。更に棘やくっつく種に全身を犯されつつ、踏み分けかき分け進んだ。

抜けた!10m弱進んで最初の激藪地帯を抜けると、緑の絨毯に覆われた路盤が姿を現した。切り通しの道だ。激藪との対比でより一層心地よく感じられる、この路盤の穏やかさよ。
ありがたい。ここはスイスイ進める。まだ見えないが、この先に隧道があるはず!
この程度の廃道なら隧道到達はすでに成ったようなものだ。←フラグ

ぐへえ…
草原の先には更に強化された藪が待ち受けていた。背丈より高いだけでなく、密度も硬さもさっきの比じゃない。枝のバリケードだこれ。地図から抹消された道路という時点で廃道化しているのは当然だろうが、ここまでとは。事前リサーチのイメージとだいぶ違うぞ。
実はこの藪のわずかな隙間から、隧道の坑口が見えているのだ。写真では伝わらないだろうが、ほんの20〜30mばかり先に、確かに坑口が見えた!
が、しかし!
この藪を突破するのは嫌でござる。
死力を尽くせば目の前の藪は抜けられるだろうが、抜けた先の様子が分からない。場合によってはこの道を戻らなければならないことになる。それはさすがに、ねえ。
しかも雨で草木が濡れていて不快なことこの上ない。
私はほんの一瞬の逡巡で侵攻を諦めた。まだ反対側の坑口に可能性があるし!

と、その前に、藪の左上、高い所に電柱が見える。あの辺から坑口の様子を見ることができないか試してみる価値はありそうだぞ。

というわけで、再び藪をかき分け、車がある②のセーブポイントに戻ってきた。今度は④左の細道を登っていく。

道は緩やかに右にカーブしながら急傾斜で登っていく。ある程度刈り払いされていて人の出入りはあるようだと思ったら。

罠!

50mばかり坂道を登ってやや平坦になった辺りに、箱罠を発見した。罠に詳しくはないが、サイズからして猪用だろうか。いるのか、猪。急に怖くなってきたぞ。
そしてこの罠のために道が整備されてきたのだとしたら、この先は…。

お約束の藪。
はあ〜。

ええい、まだ行ける!と藪に突撃して、右側の谷底を覗き込んでみる。この谷の底がさっきまでいた③の道のはずだが、正直何も見えん。この写真の手前の藪は崖に斜めに生えているもので、踏み込むとそこに地面はない。危険だ。
もう少し進めば何か見えるだろうか?せめて下から見えた電柱くらいには辿り着きたいが…。

これは来た道を振り返って撮影した写真。もはや人間が通る道ではない。罠の先は完全廃道でした、と。

何歩か進んで再び谷底を見る。方向から判断すると、この写真の中央あたりに坑口があるんだろうな。全然見えねえや。何のために登ってきたのか分からん。そしてこの道の進路は。

はい、無理。電柱は見えてるけど、もう進みたくないよ。この写真の右半分は崖だ。電柱まで行っても私の背丈では絶対下見えないでしょ。完全なる作戦失敗。無駄に消耗しただけだった。

だが、何も悲観することはない。
少しばかり心身にダメージは受けたが、まだ西側坑口に可能性があるのだから。
一旦戻ってやりなおし。
これは撤退ではなく転進に過ぎないのだ。

最後に、前半戦の経過をまとめた地図を置いておく。

次回は西口目指してチャレンジ。

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