[Short Story] 父と電車に乗って海へ
父と電車に乗って海へ向かっている。
海につくと父はどこかに行ってしまうが、帰りの電車は同じ車両に乗っている。
父はいつも無言だった。
そんな夢をみるようになったのは、父が亡くなってからだ。
あるとき、父は私に言った。
「彼なら大丈夫だ。信頼できる男だ」
そのころ付き合い始めた彼のことを、言っているのだと思った。
そのあと、しばらく父の夢は見なかったが、次に夢に出てきたとき、父はベッドに横になっていた。
「もう寝ちゃうの?」
そう聞くと、
「疲れたからもう寝るよ」
父は少し顔を上げたが、そのまま目を閉じた。
なんとなく、もう父の夢を見れない気がして寂しくなった。
おやすみなさい、お父さん。
ゆっくり休んでね。
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