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15cm水槽でアクアテラリウムを制作
概要
独り暮らし大学生ということもあり、小型水槽でのレイアウトという制限下のなかで、予てから自宅で飼育しているバンパイアクラブをメイン生体として導入することを見据えつつ制作した。
従来のボトル式アクアテラリウムでは、水中部分はバンパイアクラブの脱皮用という機能的要素でしかなく、アクアテラリウムならではの表現をしきれなかった事を省みて、陸上部分での表現をふんだんに盛り込みつつも、水中部分にも十分なスペースを設け、生体の導入も出来るようにした。
レイアウトは高尾山で見た岩肌に佇む植物たちから着想。激しい水流から岩陰へと逃れた者たちが密かに暮らしている所を想像している。
構図は典型的な三角構図だが、石の根元や奥には前景草を混栽し、また、陸上部分では多種多様な植物を用いてパルダリウム的な表現を行う事で、狭い水槽ながらも多様性に富み観ていて楽しい水景になるように工夫した。
本作は、今後就職活動や研究室配属などによりアクアリウムに割ける労力が減少する事が予想されているため、農学系の大学で自分なりに自然と向き合い、また生態系について本気で考えたある種の卒業制作的な意味合いを込めている。
そのため、ライト以外は人工的な器具を一切付けず、硝化サイクルを中心に水景を維持している。
設備概要
水槽:GEX グラステリア フィット 150 plus W150×D150×H200(mm)
照明:GEX CLEAR LED FLATTY ホワイト(ミスト管理の際はLEDデスクライトも併用)
1日12時間→11時間
ヒーター:なし(空調管理)
ろ過:なし(生物濾過のみ)
エアレーション:なし
CO₂添加:テトラ CO₂プラス 1週間に0.1mL
固形肥料:なし
液肥:Aqua Forest 水草ふさふさリキッドマルチ 1週間に0.1mL
水質安定剤:テトラ コントラコロライン、GEX バクテリアウォーター
換水:注水後10日は毎日 1/2 それ以降は週1回 1/2~1/3程度
レイアウト素材:ベルストーンブレイブ
低床:GEX メダカ育成ソイル、川砂利
生体
植物
ポトス パーフェクトグリーン
フィットニア ホワイトタイガー
ダバリア フィジーエンシス
マメヅタ
ムシトリスミレ(P. agnata × jaumavensis)
ウィローモス
アラハシラガゴケ
オオカサゴケ
ホソバオキナゴケ
ムチゴケ
ニューラージパールグラス
ポゴステモン・ヘルフェリー
コブラグラス
フィランサス・フルイタンス
生物
バンパイアクラブオカダンゴムシ
アフリカンランプアイ
スカーレットジェム
極火エビ
カラーサザエ石巻貝
ゾウリムシ
立ち上げ備忘録
高さを活かしつつ、奥行きも心なしか感じられるように常に意識しながらレイアウトを決めていく。
石組段階では三角構図の意識に加え、注水後の棲み分けも考えなければならないため、ソイル、基準水面、三角構図の斜辺それぞれを見失いように水槽に線を引いた。
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高さを出すレイアウトのため、後景部分のソイルの層が厚くなり、嫌気化する恐れを考慮し、川砂利でれき層を作った。写真は途中段階のものだが、実際にはさらに右奥に向かって傾斜が付くように盛り方を変更している。
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土台となるソイルを入れる。
筆を使って、奥行きを出すために右奥に向かって傾斜をつけた。
今回は余っていたGEXのソイルを使ったが、もう少し栄養系のソイルの方が調子は良いのかもしれない(コケまみれになる可能性もその分高まるが)。
固形肥料はフィルターなしだと確実に富栄養化するので使わない。
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石組をした後、さらにソイルを注ぎ足した。
大きい石から手前に置き、さらに後景に影を作ることで距離感を演出。
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水中不可の蘚苔類の位置に注意しつつ、植物を植栽。
手前は一面ニューラージパールグラスだが、石の根元や後景部分はニューラージパールグラスに加え、コブラグラス、ポゴステモン・ヘルフェリーを混栽している。
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管理方法
植物が十分に繁茂するまではミスト式で管理する。
照明を12時間点灯しつつ、毎日の霧吹き(カルキは抜かない)、スポイトで溜まった水の排水を行う。
カビ対策のため、水槽上部の蓋を5mmほど浮かせ空気の流動性を持たせる(元々水槽とセットになっているシリコンをフタに貼り付けた)。
害虫の侵入を防ぐため、ハッカ結晶と水を入れたペットボトルキャップを水槽上部に配置しておく。結果、ミスト式期間中に害虫に悩まされることはなかった。
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経過観察
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バンパイアクラブ、ミナミヌマエビ導入
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照明時間を1日11時間に下げた
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ミナミヌマエビは極火エビと交雑するため撤去
振り返り
良かった点
・一気に完成させようとせず、慎重に維持管理を重ねたことで、徐々に理想の水景に近づけることが出来た。
・小型水槽ながら多くの種類の動植物を用いたことで、景観が単調にならず見ていて楽しい水槽に仕上げることが出来た。
・石の根元のポゴステモン・ヘルフェリーは、自然感を高めるために極めて効果的だった。
・ミスト管理の際に、隙間を開けることやハッカ結晶を用いたことは、カビや害虫の予防に明確に効果があったと感じている。
・液肥、CO₂、照明が絶妙なバランスで、崩壊することなく水景が維持された。
反省点
・オレゴンリバーモスは、ミスト式管理に適していない(撤去を余儀なくされた)。
・水中部分の後景は、高さが出るコブラグラスによってポゴステモン・ヘルフェリーが埋められてしまった。コブラグラスだけで統一したほうがよりコントラストを強められたと思う。
・ムシトリスミレの大部分が溶けてしまった。食虫植物をパルダリウムに使用する際は貧栄養箇所を明確に作るべきだった。
・陸上部分のタンクメイトとしてオカダンゴムシを試験的に導入したが、見事にバンパイアクラブに完食されてしまった。
おわりに
小型水槽を立ち上げるにあたって、切っても切り離せない関係にあるものが水量の少なさから来る不安定さで、まして今回は器具を使わず、さらに水量の少ないアクアテラリウム方式ということもあり、極めて慎重な管理を求められた。
この50日間は私がアクアリウムに耽った全時間を省みても最も本気で水槽に向き合った期間となった。
勿論反省点で述べたように至らない事も多かったと思うが、こうして執筆している横目で机に置かれた水槽を覗くと生き物たちが活き活きと生活している所をみるに、自然からの及第点を貰うことは無事出来たのだろう。
この水槽は非常に繊細なバランスのもと成立しているものであるため、管理を怠った場合、一晩で生体が全滅する可能性も看過できない。しかし、こうしてミリ単位の調節を繰り返しながら日々水景に向き合うことで、私の中の自然観も成熟していくのではないだろうか。
日々大学に通っていると、時に「こうして難解な講義を必死に受けることに果たして意味はあるのだろうか」というある種の虚無主義に陥ってしまう事もあるのだが、このように自分なりに学んだことを作品として形に残したことで、確かにそこに何らかの意義があったとして過去の自分を納得させられたのなら、この上ない甲斐を感じる次第である。
おわり
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