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〈対話法〉の誕生と、その後の展開

私は大学で電子工学を学び、技術者として10年間、大手電機メーカーに勤務の後、退職し、学校等で講師をする傍ら、民間団体(全日本カウンセリング協議会)でカウンセリングを学びました。現在は、主として地元の高校にカウンセラーとして勤めながら、〈対話法〉というコミュニケーション技法の普及活動をしています。

カウンセリングの学習と実践を通して私が知ったのは、人が抱える悩みの多くは「不適切なコミュニケーション」に起因するということでした。一方、心理的支援が必要な人の数に比べて専門職が少ないため、ピアサポート等の「共助」の必要性を痛感していました。しかし、共助においても「対話」が主な手段であるため、活動の中で時々トラブルが生じることがあります。それを予防するには、心理学、特にカウンセリングの知見が役立つのですが、その習得には多くの時間と費用を要するため、多くの人にとって、より学びやすい理論と技法が必要だと考えていました。

そして、1994年に、従来から使われていた「傾聴」や「共感(的理解)」という技法を、「相手が言いたいことの要点を相手に言葉で確かめる」(後に「確認型応答」と命名)のように、具体的かつ「操作的」に定義することを考案し、それを軸とするコミュニケーション技法の総称を〈対話法〉と名付けました。

その後、医療・福祉系の大学や施設をはじめ、学校、企業、NPO団体など、多分野の人を対象に、対人関係の改善、心の健康やヒューマンエラーの予防法の一つとして〈対話法〉を伝えてきました。さらに、普及活動だけでなく、活動の質を高めようと、大学に社会人入学して心理学を体系的に学び、公益社団法人・日本心理学会から、認定心理士の資格を取得しました。その後に進んだ大学院(博士課程前期)では、臨床心理学の視点から「確認型応答」の実証的研究を行い、〈対話法〉理論を深め、その成果を国内外の学会で発表しました。

そして近年、個人としだけでなく、組織ぐるみで〈対話法〉を導入する企業や団体が出てきました。また、ピアサポートを目的として地元(群馬県桐生市)を中心に浅野が無償で活動する「対話の会」は、数度の中断を経ながらも、〈対話法〉の考案以来、継続しています(現在はコロナ禍のため休会して、その代わり全国を対象にオンラインで活動中)。「対話の会」では、トラブル予防のために〈対話法〉を学び、かつ実践しながら、人間関係をテーマに語り合い、心の健康の維持と増進を図っています。2011年の東日本大震災の直後には、被災地にも出向いて開催しました。今後は、これらの活動が、さらに全国に広がるよう、あらゆる手段を模索しています。

〈対話法〉についての詳細は、対話法研究所のサイトでご覧ください。

◯写真は、2011年9月23日に、東京の文京シビックセンターで開催した、第2回「東日本大震災・対話の会」の様子です。

■〈対話法〉の要点をコンパクトにまとめた「〈対話法〉のすすめメッセージ」リンク PDFファイルもダウンロードできます。


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