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なんとなく放っておいて、いい

(※前回の記事とは違う視点で書き直しました)

今朝、多肉植物の葉から、根が出た。 葉挿ししてからもう1ヶ月以上たっていた。
私は、あっちにもこっちにも根がついているのを確認して、思わずヒエっと声をあげてしまった。 

葉挿しとは、ちぎった親株の葉から子株を増やすこと。
本によると、多肉植物は葉に養分や水分をたっぷり持っているので、それを使って根を生やし、新しい芽を出せるそうだ。

切断された一部から新しい個体が出てくるなんて……まるでSF映画みたいだ。

私は早速、土とトレーを用意して葉挿しに挑戦した。

本やネットでは、ふつう葉挿しは2〜3週間で根がでると書かれている。
だけど、何回確認しても、どの葉にも根が出なかった。
葉はどんどん弱っているようで、根がでる気配すらなかった。

私はもう既に3回もカピカピに枯れてしまった葉を捨てていた。原因はよくわからない。
よくわからないけど「葉を土に置くだけで根が出ます!」という本の言葉があやしかった。
ネットで検索すると、同じような人は他にもいた。それで「葉の根元を土に埋めたら根がつきやすい」というやり方を真似した。

そんな試行錯誤があったため、簡単にダメだと判断したくなかった。

根がつかなかったたくさんの葉っぱのことを思い出し、やりきれない気持ちが込み上げてくる。
もう葉っぱをみたくない!
葉を見ていることがだんだんストレスになってきた。

それで私は、葉挿しのトレーをなんとなく放っておいた。
植物棚に、なんとなく置いた。
毎朝の水やりのときも全く意識を向けなかった。
”忘れた”までは言い過ぎだけど、ほとんど、その存在を忘れていた。

結果、葉挿しは成功した。

今思えば、理由はさておき、この”なんとなく放っておいた”のがよかったのだと考える

北海道でイングリッシュガーデンを開いている紫竹おばあちゃんが植物の育て方について、こう書いていた。

「あなた、怠けてないで自分でお水をお探しなさい」といってやると、「待っていても水はもらえないのか。仕方がない、自分で探すか」といって、花は水を求めて根を地中に深く下ろすようになります。」(『87歳。紫竹おばあちゃん幸せの花園』p,84)

紫竹おばあちゃんは、植物への”手のかけ過ぎ”を警告しているが、そういうことで言えば、私は普段から”手をかけ過ぎ”である。
「口を出したい、手を出したい、助けたい、なんとかしたい、なんとかせねば」と息巻いてしまう。

たとえば過去に、一緒にプロジェクトを進めている後輩に世話を焼き過ぎた結果、後輩が逃げ出してしまった。
恋人の直して欲しいところを「なんとかしないと」とまくし立てた結果、冷静な話し合いにならなかった。
…etc

もしあのとき、後輩に指示を出し過ぎず、なんとなく放っていたなら、新しいアイディアが生まれたかもしれない。恋人に声をかけ過ぎず、なんとなく放っておいたなら、自分で考えたり、こちらへの要望を伝えてくれたりしたかもしれない。

自分自身についてもどうだろうか。
風邪にかかった時、誰もいなくてなんとなく放っておかれると、治りが早い。
仕事で、上司になんとなく放っておかれると、自分でなんとかしなくちゃという気持ちが生まれて、責任感がぐんとあがる。

だから、”手をかけ過ぎ”な人ほど”なんとなく放っておくこと”をオススメしたい。私のように”なんとなく放っておく”のが苦手な人は、植物を育ててみてはどうか。

こちらが過剰にお世話しなくても植物はびっくりするくらい、スクスク育つ。その様子を見て「なんとなく放っておいても大丈夫なんだ」と実感して欲しい。

なんとなく放っておいて、いいのだ。

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