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イグアナ

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#連載小説

イグアナ23ーエピローグ

僕は、厨房から注文されたハッシュドビーフと焼きたてパンを、カウンターに出す。

それに気がついた優子が、トレーに載せ、注文された客の元に運んでいく。

「ごゆっくりお召し上がりください!」明るい声が店内にそよ風のように通り抜ける。

出会って20年。

彼女との間に、二人の息子が産まれた。
宙と陸、ふたつ違いの兄弟だ。

カフェの修行は、結局育児に追われ、いつの間にか自然消滅した。

二人の息子達

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イグアナ22

教会の鐘が鳴り響く。

純白の花嫁と花婿は腕を組んで、教会の外に出てくる。

街の小高い丘の上の教会。
小さな町なので、みんな顔見知り。ライスシャワーを浴びながら、笑顔で通り抜ける。

実は、母と吉田は、ここに居ない。

吉田の車がエンストを起こし来る途中に止まってしまったのだ。

すぐ、真一郎に連絡する。
「結婚式延期にしよう。」という提案を私は断った。
「私は母の結婚式でバージンロード一緒に歩

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イグアナ21

年明けから、ドタバタと忙しくなった。
とりあえず、アパートで断捨離。ほとんどリサイクル業者に引き取ってもらった。
何も無くなった部屋で、こんなに広かったんだと、改めて思う。ひと月半、真一郎達が突然住むことになるまで、家具も必要最低限のものしかなかった。ひと月半の間にかなり物が増えていた。窓の下にケージの後が残っている。「うちに来る?」という提案は、間違いではなかった。最後に小さなボストンバッグひと

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イグアナ20

海岸線沿いを電車が走り抜ける。冬の海が波飛沫を上げ岩にぶつかる。
房総半島は、都心に比べれば暖かいというのは私の勘違いだったのか。

「今日は、荒れてるなぁ。僕達を歓迎してるのかなぁ。いつもは穏やかな海なんだ。」車窓を流れる景色を眺めながら、真一郎は呟く。
「真一郎さんの生まれ故郷、千葉県だったのね。都心から意外と近いのに、今まで帰省とかしなかったのね。」
「だって、親父がお前の気が済むまで帰って

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イグアナ19

夕方、母と吉田が大きなケーキの箱を提げてやってきた。

私は、肉屋ですき焼き用の牛肉を買ってきて、すき焼きの準備していた。
すき焼き用の鍋がないので普通の両手鍋をカセットコンロに乗せる。

私が肉を入れようとすると、母が私の持っていた菜箸を横取りする。昔から母は、鍋奉行なのだ。
「とても、ええ肉やからね。私に任せとき!あんたはコップやら皿やら準備して!」
「また、そうやって仕切る!言うとくけど、こ

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イグアナ18

病院からはタクシーで、家までかえる。病み上がり、電車と歩きは大変だろうと、判断したから。

「タクシー代分でお肉買えるよ。病院食は味気ない!」真一郎は、そういったけれど、荷物もあるし、うちの前まで送って貰った。

「お大事に!」タクシー代のお釣りを渡しながら運転手が微笑んだ。
「運転手さんも、インフルエンザ流行ってるから気をつけて!」
ビニールのカバー越しにそう行って、車から降りた。

ビューンと

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イグアナ17

玄関のドアを開けるなり、母の顔がにゅっと出てきて、思わず仰け反った。
「優子、真一郎さんインフルエンザでよかったなぁ。まぁインフルエンザも大変やけど、コロナにかかるよりマシや。ところであのトカゲ、私を睨みつけてはる!」

母はリンゴを切ってあげてくれたらしい。みどりさんは円な瞳で見つめる。
「睨みつけてはるんちゃうよ。みつめてるだけやで。それからトカゲやなくて、イグアナやから。」
母は、ケージか

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イグアナ16

助手席に私を乗せ、吉田は、制限速度ギリギリまでスピードをだし、アクセルを踏む。
「ごめんね。折角来てくれたのに、大変な事にまきこんで。」
「身内の非常時だよ。そんなふうに他人みたいなこと言いっこなしだよ。優子さんこそ、大丈夫か?顔色悪いぞ!」確かに気が動転していた。立ちくらみになったのを隠していたが吉田には、見破られていたようだ。
「大丈夫だよ。ちょっと動悸が早くなっただけ。やっぱり仕事無理してた

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イグアナ15

その日から、真一郎は、朝早く出て夜遅く帰るようになった。年末の大掃除を業者に委託する会社や、一般家庭が増えたためだ。

下手すると土日も仕事に駆り出されて、夜ぐったりなり、泥のように眠る。これはブラック業者では無いだろうか?と、私は何度も言うが、年末で少し忙しいだけだ。と、答えるだけだった。私は、とても心配になった。過労のため、倒れはしないかと、内心はくはくしていた。このひと月で辞めると、社長には

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イグアナ14

翌朝は、やっぱりスマホのアラームとともに目覚めた。毎朝の習慣、そう簡単に変わらない。
「優子さん、おはよう。」真一郎もスッキリした顔で目覚めたようだ。
「僕さ、折角採用されたから、年内は清掃員として、働くことにするよ。それで、年末に、実家に帰る。厚かましいお願いなんだけど笑年末までここにいていいかなぁ。」
上目遣いで私を見つめる。
「年末帰ってお父さんと、しっかり話してね。ちゃんと自分の思いを伝え

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イグアナ13

私は立ち上がりキッチンでコーヒーを入れる。ザッハトルテに合いそうなコーヒー。考えた挙句、モカブレンドにした。モカだけだと酸味がキツすぎるようなきがしたから。少し柔らかい優しい香りを加えたのだ。

マグカップにコーヒーを注ぎ、テーブルに運び、皿ザッハトルテを一つ一つ乗せる。

「甘い物は別腹!」
私は座って、ひと口頬張った。チョコのほろ苦さと甘さが絶妙なバランスで大人の味が広がった。

幸福の笑みが

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イグアナ12

優しいコンソメの匂いの正体は、野菜たっぷりのポトフだった。それにもう1品…フライパンで、豆腐を軽く焼き、その上に刻んだ大葉と大根おろを乗せ、その上に溶かしバターと醤油をサッとかけ蓋をして数分、これはまたバターと醤油の焦げた香りが空腹状態の私の鼻を刺激する。

みどりさんがケージからじっと見つめる。「みどりさんもお腹空いたよね。」みどりさん用に野菜を1口大の切り、ケージに持っていく。がぶがぶ飲みこむ

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イグアナ11

屈託の無真一郎の笑顔を見た瞬間、抑えていた感情が、滝のようにドーッと流れ出して、その場に崩れ落ちそうになった。
おっといけない!気持ちを立て直し、
「はあ〜良かった!腕がちぎれるかと思ってドキドキしてたんだ。」少し涙声になっている。しかし、私は笑顔をその上に作ってみせた。
「もし僕がいなかったら、優子さんたおれてたよ。しかし、この尋常ではない荷物…どうしたの?」
「私、会社辞めてきちゃった!」

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イグアナ10

会社の外は、予想してた以上に寒かった。吐く息がドライアイスの煙のようになっていた。しかし、今の冷気も私には感じない。激しく動悸を覚える。

足速に駅へと向かった。何故か額から汗が流れた。車内は、まだ帰宅する人が少ないらしく、座席は疎らに空いていて、私は、降り口に近い席に座る。

会社を辞めたことは後悔も微塵もない。ただあんなふうに自分が他の社員から見られてたのかと思うと胸が痛い。自分でも、感ずいて

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