『売上が上がるフロントオフィスの設計図』 作者: 本間卓哉
業績不振に喘ぐ会社の問題の根っこは、旧態依然とした営業手法にあり、それを象徴するのが「見込み客」を管理出来ていないことである。今すぐ商品を買ってくれそうな「今すぐ顧客」ばかりを追いがちであるが、今は関心は薄くとも、それでも何らかの形で商品にアクセスしてくれた「見込み客」は、「今すぐ顧客」よりも大量にいる。分母はそちらの方が多い筈だ。
「見込み客」こそ宝の山! スルーしているのが如何に勿体無いことか。
一般的に、企業がデジタル活用をするに当たって、まず目を向けるのは総務・経理などのバックオフィス業務の効率化ではないだろうか。では何故最適化を目指すのか。それは、業績を伸ばしたい、生産性を上げたいからであり、それならば、より直接的に業績を伸ばすお手伝いもすべきであろう。
そう考えた著者は、自身の専門である「ITによる効率化」を活用した「営業部門の仕組み化」を唱える。
本書は、ITによる「営業部門の仕組み化」、即ち、営業やカスタマーサポートなどの顧客との接点となる部門=フロントオフィスの設計の仕方について解説する。
経営者層の中には、過去に営業支援ツールの導入に失敗し、ITに苦手意識を持ってしまった方もいるだろうが、著者は、そんな経営者もが本書を読んで「これなら自分にも出来る」と確信を持ち、改めて「営業部門の仕組み化」に挑戦出来る様になる、そんな分かり易い内容を心がけたと言う。
まずは、「営業部門の仕組み化」に対する心構え。
経営者がしっかりレールを敷かなければ上手くはいかない。
実は、システム導入に最も抵抗する勢力である営業部長、マネージャークラス。
肝心要な営業スタッフのIT業務への未対応、非協力。
これらを防ぐのも、経営者が仕組み化についての意義や、会社だけでなく、皆にもメリット与えることを説くことが出来るかどうかに関わっている。
仕組み化に対する組織づくりを説いた後には、ようやくCRM、SFAと一般に呼ばれるものを中心とした営業支援ツールに関して解説が為される。それらの具体的な実践法とは? 属人的な営業管理との違いとは? その例示がされるのである。
本書の内容は、主にBtoB向けの話ではあるが、BtoCにも通じる部分も多々ある。
個人的には、兼ねてから自らの課題としている、「アップセル・クロスセル」についての記述には大いに関心が向いた。
「商品を売る」という意識から「顧客を支える」という意識になると、今、自分が何をすべきか、従来と異なる視点が見えてくる。いわば「おもてなし」の精神が、アップセル・クロスセルを上手に行なう為には必要と言う。顧客の困りごとは何かと考える。それで、顧客に信頼感や安心感を持ってもらえる様なアプローチになるということなのだ。
また、解約で離れた「過去客」の解説も興味深い。
解約した事実を必ずしも深刻に捉える必要はない。たまたまタイミングが合わなかっただけで、商品、サービスに不満があった訳ではないことも考えられる。「過去客」にも「おもてなし」はするべきだということだ。
そして、これらもまた、「営業部門の仕組み化」によってフォローが可能だ。
IT化は大企業向けの仕組みではないか? そう考えるのは良く分かる。
だが、人的リソースが少ない中小企業こそ、ムダを無くして効率的にしつつ、仕組み化によって「見込み客」を省力的に追うべきかもしれない。
また、少ないコストでIT化を進めることが出来る様な世の中になってきていることも事実だ。
仮にIT化を進めるまでは無くとも、営業手法を見直すきっかけづくりに本書を紐解くことはムダにはならないと思うのである。
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