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美味しく飲んで、意識せずいつの間にか健康に。カテゴリー・クリエイターへの挑戦 Vol.40

その当時の私は実に惨めな存在であった。
散々と痛ぶられながら、事業をなんとか継続させたいと踏ん張り続け、それまでには心が折れそうになることも何度もあった。

私は、いつの頃からか、目の前のことから逃げずにいたらこうなってましたと言う様な生き方をしてきた積りだった。
その結果、気づいてみれば、いつの間にやら上場企業のグループ会社の社長なんてものになっていて、まぁびっくらぽんといった訳だが、今度ばかりはその気概だけでは凌げないぞというほどのプレッシャーに晒され続けてきたのだった。

自らの精神的な耐性を鍛えなければ耐えきれないと思った私の力となってくれたのは、或る先輩経営者に薦められて手にした、哲学者 中村天風の書籍であった。
「前向きに生きる」
よく耳にするこの言葉。なんとなくは理解出来る言葉ではあるものの、なぜそうしなくてはならないのか。後ろ向きになると具体的に何が悪いというのかと、その辺りが釈然とせず、胡乱に感じていたのだけれども、天風氏の本を読んでそのロジックが理解出来た。

「常に積極的な心で、信念を煥発せよ」
中村天風の強い言葉の数々によって、到来してもいない将来に対して不安を覚えることは無駄な行為と思える様になったし、前向きな精神を持つことが有用なことも理解した私は、なんとかかんとか精一杯に奮迅することに取り組めてきたのであった。
だが、そんな日々も過去のこととなった。

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自らに非が無かったと言う気はさらさらない。
2,000台ものウォーターサーバーが紛失したのは事実だったし、黒字化を目指した行動とは言え、例えば広告費の一部を自腹で捻出したりしたこともあって、これだって真っ当なやり方ではないし、その結果、事業撤退のタイミングを遅らせ、損失を拡大したと言われてしまえば、反論の余地もない。

勝って官軍となることを目指して、出来得る限りのことをした積りであったが、どうもちょっとばかり極端に振り切ってしまう性質がある私は、ブレーキをかけ損ねた。やり過ぎが有ったことは否めない。

諦めのタイミングも今となっては引っ張り過ぎてしまったかもしれない。私財を投じ切ってしまった私は、既に多くの借金を抱えていた。その上で多額の損害賠償をさせられたのだからすっからかんの状態になっていた。

だが、負け戦とは往々にしてそんなものではないのか。引くタイミングを誤ってしまい、ズタボロになるまで身を滅ぼすのが敗軍の将の常なのだ。
そして、負けて賊軍となった今となっては、流れに身を任せるのみであった。

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水事業の売却先が決まった。相手は競合するウォーターサーバーの会社だった。
しかし、その売却先には、サプリメント in ウォーター MCMのめぐみの製造販売には興味が無かった。自社が販売している天然水シリーズへ切り替えする顧客だけが欲しいとのことであった。

MCMのめぐみを飲んでいる顧客が、すんなり天然水に移行してくれるのだろうか。事業売却に当たっていたチームが幾らMCMのめぐみの事業に疎いとはいっても、さすがに困惑していた。
「う〜ん」と唸って考えるしかない彼らの様子を見た私は、彼らに提案した。
それは、天然水の部分を除いた、MCMのめぐみに関する事業のみを私が買い取ろう、というものであった。
2015年7月のリニューアル以降、新旧商品の入れ替えの影響で減少してしまっていたとはいっても、MCMのめぐみを愛飲しているお客様はまだ多くいらっしゃったし、製造委託先や代理店などのステークホルダーも大勢いる。その皆さんに与える影響を思い浮かべた時に、ついぞ考えてもいなかった言葉が口を衝いて出てしまった。

そしてなによりもだ。こんな変わったお水はこの世の中に他には無い。オンリーワンのこの商品を潰したくない。その一心が私にそんな提案を思い起こさせたのだっだ。


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