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Rambling Noise Vol.87 「LOST CHILD その10」

その晩はまぁ一旦解散。
流石に意気消沈したアサノさんは、確か翌日辺りにのんちゃんへ、誰か他の人を探した方がよかろう、とメッセージをした筈だ。
アサノさんにしても、惰弱な己を想って慙愧の念に囚われもしたが、これは如何ともし難いではないか。

クリント・イーストウッドは、父親から「前進しない者は枯れる。人生から常に学び続けなければならない。自分を磨き続けることが必要だ。それをやめたら後退するばかりだ」と言われたそうだが、幾らなんでもこらちょっとね。


というワケで、うん、これはしょーがないのだと自分に言い聞かせたアサノさんだったが、その後のバンドの行く末には気を引かれた。
しかし、動きが無い。LINEグループにもギタリストが見つかったという報せは無い。

「どうしても他に見つからないんじゃ、入ったるよ」


『ポンコツ音楽祭』と言うくらいだから、ホントにポンコツでも良いんだろー的な開き直りをフル発揮してしまった。
あーた、ムッチャクチャやん。

とにかく、日が無い、時間が無い。
YouTubeで『気まぐれロマンティック』と『じょいふる』を検索。アコースティックでもエレキでもなんでも構わんと、幾つか演奏動画をめっけてお勉強だ。そして実践だ。
『気まぐれロマンティック』は元々ギター曲じゃないけども、このキーボードをギターでカバーするのか。『じょいふる』はパワーコードでいけるじゃん。

そーだ。いつかのマイルス・デイヴィスだって言っていたではないか。

「人生は変化であり、挑戦だ」

あはは。
・・・ムズ。

これは、基本的なことにも触れておかねばヤベエ。
そう思ったアサノさんは、残り時間も少ないってーのに、ついでにギター講座的な動画にも目を向けるのであった。
そう、就業時間中にもかかわらず。仕事そっちのけで。

だが、結局のところは、「ポンコツ音楽祭vol.4」はコロナ禍によって延期され、ことなきを得た、というのがとどのつまり。
やれやれ。

とは言えだ。
いつかは演奏をすることになるかもしれない。
折角観始めたギター教室動画だと、やや暫くの間はアサノさんのギター練習は続くのであった。但し、明確な目標があるワケでもなし。うっすらではあるのだけれども。
やがて、その成果は一応日の目を見ることにはなるのだが、それはまだ先の話。
この時点でアサノさんの肩書きに、バンドマン(ギタリスト)が加わることはなかったのだった。

(続く)

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