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エディンバラ暮らし|物欲は希望だ


来た時はミニマルだったのに、数ヶ月の滞在で宝物が増えた話。


英国初日:リュックサックとスーツケースと私

今年の5月、冬が来るまでは英国で過ごそうと、リュックサックと大小のスーツケース2つを持って私はヒースロー空港に降り立った。

スーツケース大小2つ
(これとリュックサックが最初の相棒)


リュックサックにはPCやビザの書類、カメラ、イヤホン、Kindle、サングラスやアクセサリー類、もらったプレゼントなど失くしたくないものを。大きなスーツケースにはこの先数ヶ月間の生活用品(キッチン小物やシャンプー・化粧水ほかトイレタリー、ランドリーグッズなど)と、初夏から晩秋まで対応できる洋服一式、ポシェット、画材。機内に持ち込めるほどの小さなスーツケースには、大きなスーツケースがロストバゲージしたときのリスクヘッジとして、お風呂セットの予備や常備薬、化粧品、下着類、パジャマ、トートバック、ドライヤーが入っていた。

つまり、私が必要最低限生きていくのに必要なものはこのたった3つの入れ物に収まった。

我ながら、完璧なパッキングだったと思う。何一つ無駄なものはなかった。寒くなってから着るつもりで持って来たコートは風の強い6月のある日早速活躍したし、勝手の違うイギリスの家においては使い慣れた日本製品のありがたさを知った。洗濯バサミ、包丁、旭化成のサランラップさま…。


とはいえ、外国で暮らしていればその地に合うものが自然と必要になる。その上、憧れの地で目に映る全てが、最近枯れ気味だった物欲を刺激する。

イギリスで出会ったものたち


1番最初に買ったのはこのふかふかナイトガウン
日本で荷造りしていた時はエディンバラに住むなんて想像もしてなかった。そんな私がスコットランドの洗礼を受けて震えていたところ、フラットメイトが自分の割引クーポンを使って買わせてくれた。

見た目の割に軽く、しっかりした作り。
忘れてたけど「温かくしたい」が満たされるのは幸せなことだ


それから
以前は、イギリスに来るたびに革靴を買うのが楽しかった。日本で2万円前後の革靴が6千円くらいで買えたりするのだ。だけど、今回選んだのはゴアテックスのスニーカーだった。なぜなら今回歩くのはロンドンの街中ではなく、スコットランドの山や海岸だったから。

あれ…靴紐結べてる?



も増えた。

今年のはじめ、ダンボール2箱分の本を売りに出したところだったのに。
本棚のスペースなんて残ってないのに・・・。

でも、住んでる社会のことを知りたいし、ガーデニングという楽しさも知ってしまったし、この国の人が書いた自然エッセイも読んでみたいし。海のボランティアで子供達が言った生き物の名前、理解したいし。自分の世界を広げようと思うとき、やっぱりそこには本がなきゃいけない。

読み切るとは言ってない



フラットメイトにもらった本


これは図書館カード。
図書館にもよくお世話になった



スーパーの紅茶やお菓子、調味料。

甘党のフラットメイトが推してるチョコレートビスケット、ガーデニング仲間のおかげで存在を知ったグースベリーのジャム、ヨークシャーティーのビスケット風味。昔上司がしきりに話題にしていたエシカルチョコレート。自宅用にしてもいいし友人にあげてもいい。

スーパーマーケットが好きだ。そこにはありったけの企業努力と暮らしに寄り添う優しさと、その土地ならではの生活感が詰まっている。

ビスケット風味の紅茶(甘くない)。
簡単に幸せな気持ちになれる


水筒
水筒は、英国に来たら買おうと思っていたものの一つ。意外と気にいるのがなくて、港町の生活用品店でようやく見つけた。インダストリアルな銀色と丸いフォルムがかわいい。保温保冷は全くできない代わりにめちゃくちゃ軽いのもいい。

エディンバラの水道水はおいしく飲める。
「水が合う」ってこういうこと?
(いや、水源が豊かということ)


バーレイのティーカップとお皿

英国のお茶シーンで見かけるような、白地に青の絵付けのティーセットに長らく憧れていた。

イングランドの窯元の一つであるバーレイが、セカンド品(品質には問題ないけど、絵付がずれたりして一級品として出せないもの)をセールで出すという。持ち帰るのに苦労するのは分かりきっていたけど、こんな時の合言葉は「お金はこういうもののためにある」。自宅用と母の分を2客ずつネットで注文した。

リーガルピーコックは、淡めのブルーと東洋のお伽話をモチーフにした柄が日本の家にも馴染みそう。
紅茶だけでなくコーヒーも合うカップの形も気に入った



地名が入ったマグカップ

スタバのご当地マグには登場しえないような、有名観光地というわけでもない小さな街の名が入ったカップ。
モーニングサイドはいい街だけど、こういうニッチなマグを誰が買うんだろうと不思議に思っていたら自分が買っていた。

店員さんが同じマグを3つ取り出してきて、僅かなプリントのずれを神妙な顔で見比べ「これが1番いい」と勧めてくれたのも良かった。

食洗機にかけてたら色落ちしてきた。
手洗い推奨。



版画の先生Ingridさんの作品。マーケットでご本人から買った。エディンバラの強風で折れてしまわないよう気をつけながらウッキウキで家路につき、途中のパブに寄ってたまたまご一緒した地元の人たちに「見てみてマーベラスでしょ」と自慢した。

帰国してから、絵と同じ水色の額縁で額装してもらった


ぬいぐるみやスタイ。
子供が生まれた友人たちに手触りが良いものをいくつか。最近、小さい子向けの商品をなぜか買いたくなるおばあちゃんの気持ちがわかりつつある。このカニは、「きもかわいいのをお願い」というリクエストに応じたつもり。

Jellycatというロンドンのソフトトイメーカー。
とても可愛いのだけど絶妙に狂ったデザインも多い(褒めてる)


**

物欲は希望だ。


明日快適に目覚めたいから、暖かいガウンが欲しい。
今度あの場所を歩き回りたいから、新しい靴が必要だ。
あの子に会って感謝や喜びを届けたいから、お土産を探す。
夫婦で一緒におやつの時間を楽しみたいから、カップ&ソーサーを2客注文する。


物が欲しいという気持ちには大なり小なり、それがある未来が今よりちょっと良くなることへの期待が乗っている。明日死のうと思ってる人が水筒を買うことはないだろう。


どちらかというとミニマルに生きたいし、そもそもいずれ帰国するのに物を増やしてどうするんだとも思う。だけど、『一生懸命に生活してたらいつの間にか両手に抱えきれないくらいのものを持ってしまっていた』というのも愛すべき人間味という感じがする。

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