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鳥取県ホンネの高校選び

鳥取県のすべての高校の特徴と選び方を朝森久弥が解説します。

少子化の中、日本の高校は一部を除いて定員割れが珍しくなく、どこかに合格するだけなら簡単です。ただ、その高校が自分に合っているのか、入学後についていけるのかは別問題。だからこそ、本当の意味で「入って楽しめる」高校を選ぶことが大切なのです。
「ホンネの高校選び」シリーズでは、偏差値という指標をあえて使わず、進路希望や学習内容に本音で向き合い、高校受験生とその保護者の方が主体的に高校選びができる情報を提供します。

都道府県の個別事情によらない一般的なアドバイスを知りたい人は、noteのマガジン「朝森久弥流・ホンネの高校選び」をご覧ください。

この記事はとくに断りがない限り、2024年7月時点の情勢に基づいて執筆しています。将来的に、高校の統廃合やコース名変更などが起こる可能性があります。

以下の「鳥取県の高校の通学圏」から、自分が知りたい市町村がどの通学圏に属するのかを探し、その通学圏について解説した記事にジャンプして読んでみましょう。

鳥取県の高校の通学圏

鳥取県の高校の通学圏は、県東部の「鳥取通学圏」、県中部の「倉吉通学圏」、県西部の「米子通学圏」の3つに分けることができる。

  • 鳥取通学圏:鳥取市、八頭町やずちょう、岩美町、智頭町ちずちょう若桜町わかさちょう

  • 倉吉通学圏:倉吉市、湯梨浜町、琴浦町、北栄町、三朝町みささちょう

  • 米子通学圏:米子市、境港市さかいみなとし大山町だいせんちょう伯耆町ほうきちょう、南部町、日南町、日野町、江府町こうふちょう日吉津村ひえづそん

公立高校の学区制限はないが、多くの生徒は自分の通学圏内の高校に進学している。


鳥取通学圏

中学校卒業者数:2042人(2023年3月)
高校数:12校(公立9校+国立0校+私立3校)

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【 】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科(理数科など特進系専門学科を含む)は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた( )内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。

鳥取市のJR鳥取駅周辺に高校が集中している。鳥取市以外でも鉄道駅が近くにあれば、高校集中エリアにアクセスできなくはない。若桜鉄道若桜駅(若桜町)やJR智頭駅(智頭町)からJR鳥取駅(鳥取市)までは片道約1時間かかる。

大学進学を目指すなら

いわゆる難関大学を目指す場合、公立の鳥取西高校(鳥取市)が第一選択肢に挙がる。通学圏内の生徒が学力上位から順に鳥取西高校を志望すると仮定すると、鳥取西高校の合格ラインは学力上位14%以内(中学校35人クラスで5位以内)となる。
公立志向で鳥取西高校が学力的に少し厳しい場合は鳥取東高校(鳥取市)、鳥取東高校も厳しい場合は八頭高校(八頭町)を検討する。鳥取東高校卒業生の約6割、八頭高校卒業生の3割弱が国公立大学に合格している。ちなみに鳥取東高校は普通科のほか理数科をもつが、学科が分かれるのは2年生進級時で、入学時点では学科を分けずに募集する。
私立志向なら、青翔開智高校(鳥取市)や鳥取城北高校(鳥取市)の普通科志学コース、鳥取敬愛高校(鳥取市)の普通科特別進学コースが候補に上がる。このうち青翔開智高校は中高一貫教育を行っている(高校からの入学可)。

大学進学以外の進路も考えるなら

メジャーな職業学科はひと通り揃っている。
商業科志望なら鳥取商業高校(鳥取市)へ。
工業科志望なら、機械科・電気科・情報工学科・建設工学科をもつ鳥取工業高校(鳥取市)か、電子機械科をもつ鳥取湖陵高校を選ぶ。
農業科志望なら、生産科学科・森林科学科をもつ智頭農林高校(智頭町)か、食品システム科・緑地システム科をもつ鳥取湖陵高校の2択。必ずしも通学圏内全域から通いやすいわけではないが、学習内容を吟味してから選びたい。
鳥取湖陵高校は工業科と農業科に加えて家庭科(人間環境科)と情報科(情報科学科)をもち、全国的にも珍しい4種の専門を擁する総合的な専門高校である。

職業学科にこだわりがなければ、家からの近さが決め手になるだろう。
JR鳥取駅周辺在住なら鳥取城北高校(鳥取市)の研志コースとスポーツ科学コース、鳥取敬愛高校(鳥取市)の進学キャリアコースが通いやすい。鳥取城北高校のスポーツ科学コースは指定された部活動に打ち込むコースだが、その中に文系の大学入試にも対応した特進クラスがある。
鳥取市の旧青谷町・気高町周辺在住なら公立の青谷高校(鳥取市)、岩美町在住なら岩見高校(岩美町)が最寄り。青谷高校は総合学科で、普通科っぽい系列のほかに商業・家庭・芸術の系列をもつ。
八頭町・若桜町・智頭町在住者は鳥取市まで出るか、地元の八頭高校(八頭町)に入って2年生から総合類型(短大・専門学校進学や就職も視野に入れるコース)に進む手がある。ただし八頭高校は"竹"の教科書を使うので、中学で国語・数学・英語の内申に2以下があると、入学後にかなり苦労すると思われる。

全日制以外の高校は

公立では、鳥取緑風高校(鳥取市)が定時制課程と通信制課程をもつ。鳥取緑風高校の定時制課程には夜間部だけでなく午前部・午後部があり、朝から通学することもできる。
私立では、スクーリング先のキャンパスが鳥取市内にある通信制高校がいくつかある。

倉吉通学圏

中学校卒業者数:888人(2023年3月)
高校数:7校(公立5校+国立0校+私立2校)

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【 】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科(理数科など特進系専門学科を含む)は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた( )内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。通学圏外の市町村には※を付けた。

倉吉市に高校が集中している。通学圏の西端にあるJR赤碕駅(琴浦町)からJR倉吉駅(倉吉市)までは片道30分かかる。三朝町には鉄道駅がないが、倉吉市までのバス路線がある。

大学進学を目指すなら

いわゆる難関大学を目指す人は、公立の倉吉東高校(倉吉市)に合格できるようにしたい。通学圏内の生徒が学力上位から順に倉吉東高校を志望したと仮定すると、倉吉東高校の合格ラインは学力上位23%以内(中学校35人クラスで8位以内)となる。私立の中高一貫校(高校からの入学可)の湯梨浜学園高校(倉吉市)の全日制普通科も、いわゆる難関大学受験を視野を入れたカリキュラムを敷いている。
倉吉東高校が学力的に少し厳しい場合、公立なら倉吉西高校(倉吉市)、私立なら倉吉北高校(倉吉市)の普通科特別進学コースを検討する。

大学進学以外の進路も考えるなら

通学圏内に限ると、商業科・工業科志望者は公立の倉吉総合産業高校(倉吉市)1校に集約される。工業科は機械科・電気科のみで、情報系や建設系を望むなら通学圏外に出る必要がある。
農業科志望者は公立の倉吉農業高校(倉吉市)を選ぼう。生物科・食品科・環境科の3学科をもち、鳥取県内で最大規模の農業高校である。
家庭科志望者は、倉吉総合産業高校の生活デザイン科か、私立の倉吉北高校(倉吉市)の調理科のいずれかを選ぶ。

職業学科にこだわりがなければ、倉吉市周辺であれば倉吉北高校の普通科総合コース、北栄町・琴浦町であれば鳥取中央育英高校(北栄町)が通いやすい。湯梨浜町からなら、鳥取通学圏だが総合学科である青谷高校(鳥取市)も比較的通いやすい。

全日制以外の高校は

公立の倉吉東高校は全日制課程と定時制課程を併設している。私立の湯梨浜学園高校は全日制課程と通信制課程を併設している。

米子通学圏

中学校卒業者数:1999人(2023年3月)
高校数:12校(公立9校+国立0校+私立3校)+高専1校

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【 】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科(理数科など特進系専門学科を含む)は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた( )内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。通学圏外の市町村には※を付けた。

米子市に高校が集中している。JR境線(JR境港駅~JR米子駅)沿線在住者は高校の選択肢が多い一方、それ以外の地域では少ない。伯耆町以南から米子市の高校に通う場合、JR上石見駅(日南町)6時19分発の始発列車に乗る必要がある。

大学進学を目指すなら

いわゆる難関大学を目指す場合、公立の米子東高校(米子市)を選ぶ人が多い。通学圏内の生徒が学力上位から順に米子東高校を志望すると仮定すると、米子東高校の合格ラインは学力上位14%以内(中学校35人クラスで5位以内)となる。なお米子東高校は普通科生命科学コースという、1年生から理系科目を中心に学ぶクラスを設けている。生命科学コースに合格するには、米子東高校受検者の中でも上位の学力が要求される。
米子東高校に合格できるような学力の持ち主でも、私立中高一貫校(高校からの入学可)の米子北斗高校(米子市)を選ぶ人がいる。米子北斗高校には島根県の安来市・松江市からも一定数の生徒が集まっている。

米子東高校が学力的に少し厳しい、または受検したが不合格になった場合、公立なら米子西高校(米子市)、私立なら米子松蔭高校(米子市)の普通科特別進学コースや米子北高校(米子市)の普通科特進コースに進学する人が多い。米子西高校も学力的に少し厳しい人のうち、境港市在住であれば境高校(境港市)が通いやすい。
米子松蔭高校の普通科進学コースや米子北高校の普通科進学コースは、総合型選抜や学校推薦型選抜で大学進学を目指す生徒が多い傾向があるようだ。

大学進学以外の進路も考えるなら

米子南高校(米子市)は普通科高校っぽい名前をしているが実は専門高校で、商業科であるITビジネス科と家庭科である生活創造科をもつ。
工業科志望者は米子工業高校(米子市)、境港総合技術高校(境港市)、米子工業高専(米子市)の3校から選べる。米子工業高校は米子工業高校:機械科・電気科・情報電子科・環境エネルギー科・建設科の5学科をもち、境港総合技術高校は機械科・電気電子科の2学科の工業科をもつ。米子工業高専は入学時には学科が分かれず、2年生進級時に機械システムコース、電気電子コース、情報システムコース、化学・バイオコース、建築デザインコースの5コースに分かれる。
農業科は残念ながら米子通学圏にはない。ただし、境港総合技術高校の食品・ビジネス科は水産科に属するが農業科の食品科に近いことが学べる。境港総合技術高校にはほかに、船や海について学ぶ海洋科や、介護福祉士を目指すこともできる福祉科がある。
私立の米子北高校には、鳥取県内の高校で唯一の看護科(5年制)がある。

職業学科以外では、米子北高校の普通科キャリアデザインコースや、米子松蔭高校の総合選択コース、公立である米子高校(米子市)の総合学科が米子市民にとっては通いやすい。
日野高校(日野町)の総合学科は、米子市まで通学困難な江府町・日野町・日南町に幅広い高校教育の機会を提供する役割を果たしているほか、「地域みらい留学」を掲げ、学生寮を整備して県外出身の生徒を積極的に受け入れている。

全日制以外の高校は

公立では、米子東高校が定時制課程をもち、米子白鳳高校(米子市)が定時制課程と通信制課程をもつ。米子白鳳高校の定時制課程は午前部と午後部だけで、夜間部はない。
私立では、スクーリング先のキャンパスが米子市内にある通信制高校がいくつかある。

鳥取県の高校入試事情

全体として公立志向が強いが、公立高校の定員に余裕を持たせているため、進学校を含めて定員割れが珍しくない(ただし定員内不合格あり)。実際、2024年度入試では鳥取西高校が定員280人のところ合格者が270人で10人定員割れした。

公立高校入試は大きく特色入学者選抜と一般入学者選抜の2回に分かれる。特色入学者選抜は面接と調査書重視の選抜で、職業学科の多くは定員の50%をこれに割り当てる。普通科は一般入学者選抜がメイン。一般入学者選抜では基本的に、学力検査(50点×5教科=250点満点)と調査書で評価される。全日制課程の高校では、学力検査と調査書の評定(いわゆる内申点)の比率は以下の通り。全国的には標準的なバランスと言える。

  • 【1】の普通科…学力:内申=250:130(学力検査比率66%)

  • 【1】の普通科以外の多く…学力:内申=250:190(学力検査比率57%)

※学力検査:内申点=250:260の高校も少数ある

調査書で選抜に使われる評定は中3のみ。一般入学者選抜では、学力選抜を課されない実技4教科の評定が2倍に換算される。

モデルケース(鳥取西高校の一般入学者選抜)

Aさん…朝森久弥が想定する典型的な合格者
【中3の内申点】118/130
5教科:23/25(5が3つ、4が2つ) 実技4教科:18/20(5が2つ、4が2つ)
→(23+18×2)×2=118
【学力検査の得点】190/250
合計得点:308/350

Bさん…鳥取西高校受検者の中でほぼ下限と想定される内申点の持ち主
【中3の内申点】98/130
5教科:21/25(5が1つ、4が4つ) 実技4教科:14/20(4が2つ、3が2つ)
→(21+14×2)×2=98
学力検査の得点が220/250であれば、Aさんの合計得点と同等

鳥取県教育委員会の報告によれば、2024年度の学力検査で220点以上を獲得したのは、一般入学者選抜(全日制)受検者2559人中14人だった。ただし、あくまで典型的な合格者に追いつくために必要な得点なので、実際には学力検査の得点がもう少し低くても合格ライン(合格者最低点)には達すると考えられる。

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