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朝森久弥の『進学校Map』とは

※この記事は2022年9月7日に一部加筆修正しました

『進学校Map』は、日本全国の進学校とよばれる高校群と、それらを取り巻く情勢を分析する企画です。このnoteの著者である朝森久弥が、2012年から始めました。

その名の通り、日本全国にある進学校のマッピングに定評があります。Twitterでつぶやいた都道府県別の選定状況(マッピング結果)をTogetterにまとめた結果、累計で100万PV以上を集めました。この情報をまとめた同人誌を作成し、朝森久弥が主宰する同人サークルCURIOSISTで頒布したところ、大勢の方にお買い求めいただきました。

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2017年に刊行した『進学校Map vol.6[首都圏編]』の表紙。現在は完売

CURIOSISTの公式サイトでは、2013年3月末現在の情勢に基づく進学校のリストを公開しています。

しかしこのリストはさすがに古くなってきたので、2020年3月末現在の情勢に基づく進学校のリストを作成すべく、noteで記事を公開し始めました。

noteで公開した記事をまとめた同人誌も随時刊行しており、メロンブックスやBOOTHで通販を行っています。

進学校の定義

世間一般で進学校と言えば、いわゆる難関大学進学を目標としたカリキュラムを敷き、実際に多数の卒業生が難関大学に進学している高校を意味します。ただ、具体的にどの高校を進学校として扱うのかは、人によってさまざまです。便宜的に「合格偏差値○○以上」や「東大合格者何人以上」などといった基準で選ばれているのが現状で、唯一絶対の基準を設けることは不可能です。それでも、語るからには一定の基準を設けておく必要があります。

私の進学校Mapでは、進学校の定義は次の通りです。

同一通学圏に住む同世代の中で、15歳時点で学力上位10%以内の生徒が、順当に通う学校

この定義には、合格偏差値や大学合格実績が直接的には入っていないことがポイントです。もちろん間接的には参考にしますが、それぞれの地域(通学圏)で、どの高校が進学校として認知されているか。これが最も重要なのです。自分が通えない学校と比較したところで、自分の学校選びには何の役にも立ちませんから。

そこで、15歳時点、つまり高校入学時点で学力上位10%以内にいる人は、全員大学進学を希望すると仮定し(例外はもちろん承知しています)、彼らがその希望を果たすために進学先として選ぶ高校(中等教育学校であれば、引き続き在籍する学校)が、進学校とよぶにふさわしい学校と考えます。日本全国のあらゆる地域で、こうした意味での進学校はどこだろうか?と分析するのが、進学校Mapの主目的です。

なぜ進学校を調べるのか?

そもそも、なぜ私が進学校について調べようと思ったのかと言えば、同じ日本でも、地域によって進学校事情に大きな違いがあることに興味を持ったからです。

私が在籍していた都内の国立大学には日本全国から学生が集まっていて、そのほとんどは進学校とよばれる高校の出身でした。学内では、事あるごとに出身高校の話題が上がります。毎年東大に何十人も合格するような中高一貫私立高校がそこら中にある地域もあれば、学力優秀なら公立高校行くのが当然という地域もあります。私に至っては公立中→公立高が当たり前の環境で育ちましたから、同窓生が中学受験だの予備校だので話に花を咲かせていることにカルチャーショックを受けました。そうした、私とは違う教育環境で育った人たちのことを理解したいという気持ちで、彼らの出身校、つまり日本各地の進学校について調べるようになりました。

ある程度調べてみると、確かに都会では私立中高一貫校が幅を利かせている傾向にあることに気づいた一方、田舎では必ずしも「進学校と言えば公立高校」とは限らないことも分かってきました。たとえば、四国にある高知県では、東大合格者の大多数は私立中高一貫校から輩出されています。大学合格実績という点では、公立トップ校と言われる高校でさえ、私立校に明らかに劣後しているのです。高知県でいわゆる難関大学に進学したいと願う人は、中学受験がかなり現実的な選択肢に入ります。実際、高知県の中学生生徒数に占める国立・私立中学生徒数の割合は、東京都に次いで、全国第2位です。

私の出身地は、高知県と同じ程度の田舎だと思います。もし私が、あるいは私と同程度の学力の持ち主が高知県で生まれ育っていたら、中学受験を希望していたでしょう。ただ、私立中学に通うには多くのお金がかかります。私の実家の家計では難しかったかもしれません。もし、私立中学進学をあきらめ、公立中学から公立高校進学をしていたら……果たして私は、今と同じ大学に入れたでしょうか?東京で職を得て、今のような生活をエンジョイしていたでしょうか?……前提条件が違いすぎて、一概に言えないことは承知しています。しかし、偶然生まれ育った場所次第で環境が違い、その環境が人生設計を大きく左右するのは事実です。だとすると、誰かのことを深く知るには、その生まれ育った環境を知ることが不可欠ではないでしょうか?

インターネットでは、2ちゃんねるの学歴板やYahoo!知恵袋をはじめとし、日々あちこちで学歴論議が繰り広げられています。しかし、そうした論議のほとんどは不毛です。それぞれの人の生まれ育ちが異なり、「常識」だと考えている教育環境がバラバラで、議論がかみ合わないからです。成り行きに任せると、たまたまその場で多く発言している人、あるいはユーザーの絶対数が多い都会在住者の意見が優勢になるのが常です。

単なる暇つぶしだったら、それでも構わないでしょう。ですが、実際に教育に関わる政策を決めるときにも、同じ状況だったら困ります。もちろん、そうした政策を決める人の大多数はそこまでバカじゃありません(たとえば、教育委員会の委員など)。ただ、彼らの中でもとりわけ発言権の大きい人、具体的には議員とか首長とか言われる人が、あやふやな現状認識に基づいて政策を決めてしまったらどうなりますか?彼らの発言には、現場の意見を覆すほどの力がありますし、実際に覆した例も多々あります。悪いのは、そんな議員や首長だけではないですよ。彼らを選挙で選び、権力を与えるのは、私たち有権者です。結局、私たち有権者が賢くなるしかないのです。

私は、全国各地の進学校事情を分析し、その成果を世の中に広く伝えることが、日本で生活する人どうしの相互理解につながると確信しています。正直なところ、進学校という話題である必然性はありません。ただ、たまたま私は進学校に詳しく、しかも、異常に詳しい。だったらそれを活かさない手はないだろうと思うわけです。

『進学校Map』はこれまでTwitterを中心に展開してきましたが、今後はnoteでも積極的に展開していきます。乞うご期待ください。

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