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島根県(東部)ホンネの高校選び【無料記事&有料相談】

島根県(東部)にあるすべての高校の特徴と選び方を、朝森久弥が解説します。偏差値という指標をあえて使わず、進路希望や学習内容に本音で向き合い、高校受験生とその保護者の方が「入って楽しめる高校」を主体的に選べる情報を提供します。

この記事では、以下の通学圏に含まれる高校について解説します。

出雲通学圏出雲市いずもし
松江通学圏:松江市・安来市やすぎし雲南市うんなんし奥出雲町おくいずもちょう

島根県のうちここに挙げていない市町村については、「島根県(西部・隠岐通学圏)ホンネの高校選び」をご覧ください。


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  • 都道府県の個別事情によらない一般的なアドバイスを知りたい人は、noteのマガジン「朝森久弥流・ホンネの高校選び」をご覧ください。

  • この記事はとくに断りがない限り、2024年8月時点の情勢に基づいて執筆しています。将来的に、高校の統廃合やコース名変更などが起こる可能性があります。

  • さまざまな高校受験生のニーズに合わせてオススメの高校を紹介しますが、この記事を書いた朝森久弥に個別に相談したい人は、記事の最後にある「購入手続きへ」のリンクからこの記事をご購入ください。


出雲通学圏

出雲通学圏の全高校Map

中学校卒業者数:1621人(2023年3月)
高校数:9校(公立7校+国立0校+私立2校)

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【 】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科(理数科など特進系専門学科を含む)は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた( )内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。通学圏外の市町村には※を付けた。

JR出雲市駅周辺に高校が集まっているほか、出雲市北部に高校が点在している。一畑電車北松江線伊野灘駅(出雲市)から電鉄出雲市駅(出雲市)までは片道50分弱で、出雲市中部・北部に住んでいれば通学圏内の高校はほぼ全て通えるが、出雲市南部から北部に行くのは手間がかかる。

JR宍道駅(松江市)からJR出雲市駅(出雲市)までは片道約20分、JR大田市駅(大田市)からJR出雲市駅までは片道約50分。雲南市から出雲市にJRで行こうとするとJR宍道駅での接続が悪く、雲南市からは出雲市よりもむしろ松江市に通学する人の方が多い。

大学進学を目指すなら

いわゆる難関大学進学を目指すなら、公立の出雲高校(出雲市)を選ぶのがベストだろう。通学圏内の生徒が学力上位から順に出雲高校を志望すると仮定すると、出雲高校の合格ラインは学力上位17%以内(中学校35人クラスで6位以内)となる。公立高校入試の一般選抜の学力検査で言うと185点(得点率74%)以上が目安だ。

公立志向で出雲高校が学力的に少し厳しい場合が大学に進学したい場合は、大社高校(出雲市)の普通科か平田高校(出雲市)を検討する。合格難易度は大社高校の普通科の方が若干高いが、どちらでも入学後に上位3割以内の成績を保てれば地元国公立大学(島根大学・島根県立大学)への進学が視野に入るだろう。

私立から大学進学を目指す場合は、出雲北陵高校(出雲市)の普通科特別進学コースか、出雲西高校(出雲市)の普通科特別進学コースを選ぶ。

大学進学以外の進路も考えるなら

商業科志望なら出雲商業高校(出雲市)がリーズナブル。出雲西高校(出雲市)の普通科ビジネスコースでも、出雲商業高校に比べると少ないものの商業科の専門科目が1年生から学べる。

工業科志望なら出雲工業高校(出雲市)へ。機械科・電気科・電子機械科・建築科の4学科から選べる。

農業科志望には出雲農林高校(出雲市)が用意されている。

福祉や保育に興味があるなら、出雲西高校(出雲市)の普通科福祉コースという選択肢がある。ただしここでは、介護福祉士国家試験受験資格は取得できない。保育士を目指す場合も大学や短大・専門学校への進学が必要だ。

職業学科にこだわりがないなら、出雲北陵高校(出雲市)の普通科普通コースに進学して進路を模索する手がある。

高校で芸術や体育をとことん学びたいなら

出雲北陵高校(出雲市)の普通科には音楽コースと美術・CGデザインコースがあり、芸術教育に力を入れている。

大社高校(出雲市)の体育科は、高校が指定するいくつかの競技で優れた技能をもつ人向けの特色入学者選抜を実施する。この中には野球だけでなく、サッカーや陸上、剣道なども含まれる。

全日制以外の高校は

出雲市ではないが、宍道(しんじ)高校(松江市)の定時制課程・通信制課程が比較的通いやすいだろう。なお、宍道高校の定時制課程は午前部・午後部・夜間部の3部制となっており、所属以外の部の授業も受けると3年で卒業が可能になる。

松江通学圏

松江通学圏の全高校Map

中学校卒業者数:2618人(2023年3月)
高校数:18校(公立14校+国立0校+私立4校)+高専1校

地図はGISソフト『MANDARA』で作成。
青色は公立、赤色は私立、緑色は国立、下線付きは中高一貫教育を行っている学校。【 】内は課程・学科の種類を表し、全日制普通科(理数科など特進系専門学科を含む)は大学進学率が高い順に1・2・3で分類。進学校Map 三訂版で進学校に選定した学校は丸付き数字①とした。
市町村名の下に付けた( )内の数字は2023年3月中学校卒業者数を表す。通学圏外の市町村には※を付けた。

JR松江駅(松江市)周辺に高校が集中しているが、JR松江駅から徒歩で通学できる高校は少ない。JR宍道駅(松江市)からJR松江駅までは片道20分弱、JR米子駅(鳥取県米子市)からJR松江駅までは片道40分弱、一畑電車北松江線津ノ森駅(松江市)から終点の松江しんじ湖温泉駅(松江市)までは片道20分余り。
JR出雲大東駅(雲南市)からは6時53分発でJR松江駅7時36分着の直通列車が出ているので、雲南市民は早起きすれば松江市内の高校まで登校できなくはない(※下校時は直通列車がないので注意)。一方、奥出雲町民が松江市内の高校に通学するのはハードルが高い。JR出雲横田駅(奥出雲町)から出雲大東駅まで列車で移動するだけでも1時間以上かかるからである。

大学進学を目指すなら

松江市民であれば、まず、松江市内にある松江北高校松江南高校松江東高校の公立3校(以下、松江3校)を考える。松江3校の中で卒業者のいわゆる難関大学合格者数が最も多いのは理数科をもつ松江北高校で、探究科学科をもつ松江南高校がこれに続く。
近年、松江3校は倍率があまり高くないので、公立高校入試の一般選抜の学力検査で160点(得点率64%)くらいでも合格できるかもしれないが、入学後の授業にスムーズについていきたいなら175点(得点率70%)以上は目指したい。

かつては、松江市を3つの通学区に分けて、松江3校のうちそれぞれの通学区内にある高校に優先して入学させる制度があった。このため、出雲市の3つの公立普通科高校(出雲・大社・平田)に比べると、松江3校の入学者がもつ学力の学校間格差が小さかった。もっとも、旧制中学を前身とする松江北高校は戦後に開校したほか2校に比べてブランド力が高く、学力が高い生徒が松江北高校に集まる傾向があった。
2021年度入試からこの制度が撤廃され、松江北高校に人気が集中するかと思いきや、むしろ定員割れが発生している。

松江市民以外の場合は、地域外入学制限を考慮する必要がある。松江3校の普通科は、松江市以外からの入学を定員の10%以内に制限している。松江市外の受検者は受検者全員の合格ラインを超えるだけでなく、松江市外の受検者の中でこの10%枠に入る必要があり、地域外入学制限を上回る受検者が集まった場合、松江市内の受験者よりも合格ラインが上がる。

松江北高校の理数科や松江南高校の探究科学科は地域外入学制限がないので、松江市外の受検者でも合格ラインは変わらない。もっとも、これらの学科は松江3校の普通科よりも合格ラインが高いことが多い。

近年、松江北高校・松江南高校・松江東高校の3校で地域外入学制限を上回る志願者が集まった事例は少ないのだが、上回ったときのことを考えると、公立高校入試の一般選抜の学力検査で180点(得点率72%)以上は取れるようにしておくと安全だ。

安来市民で松江3校の合格ラインを超えるのが厳しい場合は、地元の安来高校(安来市)を検討する。安来高校は定員割れが続いていて生徒の学力の幅が大きいと思われる一方、卒業者の約3割が国公立大学に合格している。

雲南市民で松江3校の合格ラインを超えるのが厳しい場合は、大東高校(雲南市)か三刀屋(みとや)高校(雲南市)のどちらかを選ぶ。大東高校は普通科、三刀屋高校は総合学科だが普通科寄りのカリキュラムとなっており、この2校で大学進学を目指す上では大きな差はない。通いやすさや部活動などが決め手となるだろう。

奥出雲町民の場合、松江3校に行くなら寮生活になる。大東高校や三刀屋高校に通ってもよいが、大学進学率だけを見ると地元の横田高校(奥出雲町)もあまり変わらない。

以上はすべて公立の場合で、私立も視野に入れるならもう少し選択肢は増える。松江市の私立高校の中でいわゆる難関大学受験に最も力を入れているのは、松徳学院高校の普通科アドバンスコースだ。ほかにも、開星高校(松江市)や立正大学湘南高校(松江市)の普通科特進クラスが大学進学を見据えたカリキュラムを敷いている。なお、松徳学院高校と開星高校は併設型中高一貫校(高校からの入学可)でもある。

大学進学以外の進路も考えるなら

商業科志望なら松江商業高校(松江市)または情報科学高校(安来市)を検討する。情報科学高校は2年生から情報システム科・マルチメディア科・情報処理科の3つの科に分かれるが、あくまで商業高校なので簿記の授業も必須となっている。

工業科志望なら松江工業高校(松江市)か松江工業高専(松江市)を検討する。松江工業高校がもつ情報クリエイター学科では、コンピュータの組み立てやドローンの制御などハードウェアについても学ぶ。

農業科志望なら松江農林高校(松江市)が通いやすい。なお、松江農林高校の生物生産学科は植物の生産に特化しているので、動物を育てたい人は出雲農林高校(出雲市)の動物科学科に行こう。

職業学科にこだわりがない場合、松江市内だと以下の選択肢がある。

  • 松江農林高校の総合学科:食品系列・福祉系列・地域系列をもつ

  • 松江市立皆美が丘女子高校:公立の女子校。普通科と国際コミュニケーション科をもつ

  • 松江西高校

  • 松徳学院高校の普通科グローバルコース

  • 立正大学湘南高校の普通科普通クラス:県外出身の運動部員が多い

大東高校(雲南市)では3年生から、横田高校(奥出雲町)では2年生から選べる総合コースが、大学進学以外の進路にも対応している。三刀屋(みとや)高校(雲南市)では2年生から商業科の科目を学ぶこともできる。

三刀屋高校掛合分校(雲南市)は、雲南市立掛合中学校や吉田中学校の卒業者を主に受け入れ、地域密着で進学から就職まで幅広い進路に対応している。

全日制以外の高校は

公立では、松江工業高校(松江市)が定時制課程を、宍道(しんじ)高校(松江市)が定時制課程と通信制課程をもつ。松江工業高校は夜間部のみ。宍道高校の定時制課程は午前部・午後部・夜間部の3部制となっており、所属以外の部の授業も受けると3年で卒業が可能になる。

私立では、松江通学圏に本校を置く定時制課程や通信制課程の高校はない。ただし、私立通信制高校の生徒が通うサテライト施設が松江市内にいくつかある。

島根県の高校入試事情

島根県は全体的に交通の便が良くないので、県内のどこに住んでいても通える高校が1校以上あるように余裕を持って公立高校を配置している。出雲通学圏や松江通学圏は比較的人口が多いものの、公立高校の受検倍率は概して低い(私立高校の倍率も低く、めったに落ちない)。大抵は選んだ高校に入れてしまうので、興味と適正に合った高校を選ぶのが大切である。

全日制の公立高校入試は、大きく特色入学者選抜と一般選抜の2回に分かれる。

特色入学者選抜のうち総合入学者選抜は2025年度入試から導入されるもので、2024年度までは推薦入学者選抜だったものだ。推薦入学者選抜は中学校等の校長の推薦が必要だったが、特色入学者選抜では推薦が不要になる代わりに、各高校が定めた出願要件をクリアした人が出願できる。出願要件で内申点の基準を定めている高校が多い一方、選抜で学力検査を課す高校も多く、"内申点でほぼ決まる"入試にはならなそうだ。
特色入学者選抜にはほかにも、各高校が指定した競技で実績がある人を募るスポーツ推進指定校入学者選抜がある。

一般選抜は学力検査と個人調査報告書(島根県では調査書のことをこう呼ぶ)で評価される。さらに面接がある高校が半分くらいあり、体育科では実技検査を行う。

学力検査は50点×5教科=250点満点。傾斜配点は認められているが、2024年度入試で採用した高校はなかった。
個人調査報告書では、学習の記録に記載された1~3年生の評定(いわゆる内申点)が点数化される。3年生の評定が4倍に換算され、合計180点満点(=45+45+45×2)となる。また、3年生での特別活動の記録(学級活動・生徒会活動・学校行事)の評価が9点満点(3項目×3段階)で点数化される。

さらに、学力検査と個人調査報告書は合計100点満点に圧縮される。100点満点内での比率は高校・学科によって変わり、60:40~20:80まで認められている。いわゆる進学校は60:40と学力検査重視が多く、それ以外の高校では50:50または40:60と個人調査報告書重視が多い。さらに、個人調査報告書に占める学習の記録の点数と特別活動の記録の点数は17:3になるように調整される。まとめると、実際の配点は以下のようになる。全国的には標準的なバランスと言える。

60:40(主に進学校)→学力検査60点、学習の記録34点、特別活動の記録6点
50:50→学力検査50点、学習の記録42.5点、特別活動の記録7.5点
40:60→学力検査40点、学習の記録51点、特別活動の記録9点
※面接がある高校は、さらに面接点10点が加わる

合格判定の手順はかなり複雑なのだが、学力検査と内申点の評価が著しくアンバランスでない限り、上記の配点で合計点が高い順に合格すると考えて差し支えない。

公立高校入試の一般選抜の学力検査は、平均点が130点台後半(得点率55%)前後で推移している。【1】の普通科を目指すなら175点(得点率70%)以上を目標にしたい。

かつて島根県は、それぞれの地元の高校に誘導するために厳しい学区制を敷いていたが、徐々に撤廃されつつある。残っている制限は4校の地域外入学制限のみで、松江北高校・松江南高校・松江東高校の普通科は松江市外からの入学を定員の10%以内、出雲高校の普通科は出雲市外からの入学を定員の5%以内に制限している。なお、2025年度入試から総合入学者選抜では地域外入学制限が撤廃されたので、今後、大田市から出雲高校、安来市から松江北高校といった進学が増えるかもしれない。

しまね留学について

しまね留学」とは、島根県公立高校への県外出身者の入学を後押しする施策のことで、2010年度から始まった。

過疎化が進む島根県では、それぞれの地元の生徒を集めるだけでは高校が立ち行かない問題を抱えている。そこで、島根県の高校がもつ田舎ならではのの特色をアピールし、たとえば都会在住で田舎暮らしに憧れがある生徒を受け入れることで、定員割れの穴を埋めつつ、過疎地の活性化を図っているわけだ。
2024年度入試では島根県の公立高校合格者の5%弱を県外出身者が占め、生徒の3~5割が県外出身者という高校もある。ここまで多くの県外出身者が島根県にやってきているのは、定員割れが深刻な分県外入学者の枠を多めに設定できることや、島根県の高校にはもともと寮があるところが多く、受け入れ態勢が整えやすかったことなどが要因としてあるだろう。

島根県で軌道に乗った「しまね留学」を参考に、現在では全国各地で同様の施策が進められている。

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