さちさんと、好きなこと
国道159号、山側環状線。
トンネルと山と空がつづく道。
ここを運転するたび、
いまでも目に浮かぶ姿があります。
全方向に神経を張り巡らせながら、
流れるように走る、バイクのうしろ姿。
そう、
さちとピースさんです。
今年の6月。
バイクで関東から（！）金沢まで、
膨大なエネルギーと時間をつかって
「ひと色展」にきてくれたさちさん。
作品展のあとで
私たちは夕食をご一緒するために
車とバイクで連なって走っていました。
最初は私が先導していましたが、
ブレーキのタイミングで
さちさんが横に来て問いかけます。
「アサミさん、私の走ってるとこ見たい？」
えっ？！そりゃ「見たいです！！」
すると、ふっと笑って、颯爽と前へ…
このかっこよさ！！！
皆さんにも見せたい。
脳内の映像をお見せしたい。
惚れちゃうでしょ、というかっこよさ。
（作品展の看板ボーイ、ふてきくん）
風が冷たくて寒い日でした。
さちさんと話したときに開けた車の窓。
閉めたくなくて、そのままにしていました。
刺すような風、冷えていく体。
窓を空けているだけで、こんなに寒いのに。
バイクはこれを全身で感じてるんだ…。
寒さや風圧や路面の濡れや道路の凸凹や、
いろんなことを処理しながら走ってる。
無意識にあちこちを気にしてる。
それがわかりました。
こんなに暗くなかったけど、
さちさんの走りはこんなふうにまっすぐで
道を切り開くように見えました。
出発前に地図をみて、
道順を考えている姿も思い出されました。
そうか、ナビじゃないんだ…
こんな初めての土地で。
地図を頭に入れて、自分で考えているんだ。
バイクに乗るさちさんは、
頭脳と体感をフル活用してるんだな、
すごく「生きてる」な。
凄いな。
私はひっそりと感動していました。
その横で私はカッコイイバイクの写真を
撮らせてもらっていました。
＊
ふりかえれば、最初の出会いから
私はさちさんに刺激を受けていました。
「あんこはるかの寄せ書きRADIO」で
初のゲスト出演で緊張されていたのに、
バイクの話になったらイキイキして！！
バイクの知識がゼロの私も引き込まれて、
つい、2回聴きました（笑）
「いいんだ、
好きなことを好きって言って。
そしたら周りも嬉しくなるんだ！」
自分の好きなことを語るのは苦手…
そんな自分にはすごく刺激で、
憧れの気持ちを抱いたのでした。
＊
金沢での思い出で、
心に深く残っている光景が、もうひとつ。
ストリートピアノで演奏してくれた姿です。
さちさんにリクエストした曲たちを
ストリートピアノで演奏してもらうことは、
私や子どもにとって夢みたいなことでした。
私たちのために覚えてくれた曲を、
私たちのために今ここで弾いてくれる…
私と主人、子どもたちが静かに待ちます。
周りは程よい雑踏のざわめきたち。
最初の音が届くと、
心が跳ねました。
『おおぞらをとぶ』
暗譜までマスターしてくれた雄大な音色。
もはや、さちさんと一体化しています。
初めてのリクエスト曲。思い出の曲。
『今日もどこかで雨が降る』
息子からのリクエスト曲（私も好き）。
こちらもさちさんの体温が感じられました。
雑踏の混じった音色は原曲とそっくりだと
後に録音も聴いた息子が感動していました。
『悪魔の子』
リクエストして間もなかったので、
まさかここで弾いてくれるなんて…！
サプライズに感動が込みあげます。
隣で聴いていた娘の全身から
歓喜があふれるのがわかりました。
いいな。
指先から音楽を出せるの。
素敵だな。
好きなことで、周りを喜ばせること。
そう思いました。
忘れられない、ひとときでした。
私たちのほかに、耳を傾ける人もいて。
ストリートピアノの良さも体感しました。
＊
本当は、お会いしてすぐに
この記事を書きたかったんだけど、
好きなこと、考えることについて
芯のところで刺激を受けたので、
なかなか言葉にできませんでした。
みる猫感想文以来の、熟成下書きです。
＊
さちさんは、好きを生きてる人。
過去のバイク事故や
大変な手術を乗り越えて、
こんなにも遠いところへ
バイクで会いに来てくれたさちさん。
カッコいい背中を見せてくれて
ありがとう。
私も好きなことを好きって言って、
考えることを楽しんでいきたいな。
そして、いま、さちさんは
来てくださった作品展「ひと色展」の
関東開催を妄想してくれています。
私の好きなことが集まった作品展が
さちさんの「好き」になれて光栄です。
本当にありがとう…
そして、きっとまたいつか、
さちさんのピアノを同じ空間で聴けることも
心から楽しみにしています。
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